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答えを全て教えない【現場考】
技術的な課題からつまずいているプロジェクトの解決策について部下から相談を受けた。これまでの経験や豊富な知識からおおよその解決策を提案することはできる…。しかしそうした場合、ある工具メーカーの商品開発部長は自らの答えを全て教えない。『もっと考えてみて』と求めるという。
理由の1つは部下のアイデアを聞きたいから。新商品はより多くのアイデアから選んだり組み合わせたりすることで良いものが生まれる。ましてやニーズが多様化し変化も早い時代で、世代もカルチャーも異なる部下の多種多様なアイデアは商品開発の重要なリソースとなり得る。
しかし先行して答えを教えると、少なからず思考に影響を与える。類似する答えに行きつきかねないし、もともとその方向性で考えていた部下の思考の過程を奪ってしまう。部下にとっては上司が提示してくれた答えなのだからそれに従うべきという力も働く。
2つ目の理由は新商品開発の面白さを奪いかねないから。ニーズを見つけ、それに応える性能やコストを追求する。試行錯誤を重ね、行き詰って頭をひねる。日常生活で見たものもヒントにならないかと発想してみる。商品開発の面白さのひとつはそうした考えることにあると考える。
初めから答えを教えて欲しくない。自らの力で考え抜きたい。上司や後輩と意見をすり合わせてより良い方法を導き出したい。自分たちで考案した新商品はユーザーに喜ばれるだろうか。そう考えるとワクワクする。そういう新商品開発の面白さを奪いかねないことはしたくない。
答えは1つではない。無数にある。それぞれが導き出した答えを紡ぎ合わせることで魅力のある商品を生み出す。答えを考える環境をつくることでやりがいが増す。わかっていても答えは伏せて、『もっと考えて』と求める。それが部下を育て、組織を強くする。
日本産機新聞2026年9月5日号
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