2024年11月22日(金)

特別対談 「生産財の物流・システム最前線」①

中山 哲也社長(トラスコ中山✖️奥山 淑英社長(サンコーインダストリー

 機械工具業界でも物流やITシステムを活かした様々なサービスの提供が重要になっている。ねじのサンコーインダストリーと機械工具全般を扱うトラスコ中山は、取扱商品は異なるものの業界でも屈指の「物流・IT巧者」だ。サンコーインダストリーの奥山淑英社長とトラスコ中山の中山哲也社長に、現在の取り組みや、物流・ITシステムの進化により提供できるサービスについて語ってもらった。

利便性向上に終わりなし

AI活用・需要予測・データ分析

物流強化のきっかけ 

トラスコ中山  1959年、「業界最後発」(中山哲也社長)の機械工具商社として創業。PB展開や物流を武器に業容を拡大してきた。現在もユーザー直送体制の整備や在庫50万アイテムなどを目標に、物流やシステム投資を強化している。売上高2206億円(19年12月期)、従業員数は2787人。

 司会 両社は物流やITシステムを経営戦略の中核に位置付けています。そこに注力した理由は。

 中山 社長に就いた1994年に「物流を制するものが商流を制する」と掲げました。モノづくりに貢献するには業界のインフラになることが重要ではないかと思ったんですね。「水道・電気・ガス・トラスコ」と呼ばれるようになるには物流は不可欠だと確信したんです。また、ビジネスでは、本質を見極めることが何より大事だと思うんです。卸商社のビジネスの本質はライバルに勝つことでなく、いかにユーザー様が必要なものを、必要な時に正確に速く届けるかです。それには物流やシステムは欠かせない。

サンコーインダストリー  1946年に、木ねじ専門商社として創業。現在は「ないねじはない」を掲げ、約50億本の在庫を持ち、1日の出荷本数は約5100万本にも上る。東大阪市に大型物流センターを持つ。売上高は320億円(20年2月期)、従業員数は414人。

 奥山 当社は70年代にコンピュータ化に取り組み始めたのが最初でしょうか。先代がコンピュータに明るい方と知り合いになって勉強したようです。ただ、ねじは機械工具と異なり、特殊なんですね。そこで物流とコンピュータを使って、効率化できないかという視点を持っていたようです。

 中山 当社も70年代にコンピュータは導入しましたが「伝票発行機」程度でした。売掛管理するくらいで経営に活かすレベルになかった。その遅れがなければ、もっと成長が早かったのではないかと後悔があります。

ぼう大なデータ活用術

 中山 最近これだけの販売実績がありながら、1品ごとのデータが全く活かされていないと気づいたんです。来年から1品ごとの販売実績を開示しようと思っています。

 奥山 どうしてそう感じたのですか。

 中山 昨年の売上高は約2200億円でしたが、その結果だけ見ても何も打つ手がない。エリアでも商品別でも実態は見えづらい。AIを使って商品1品ごと分析すれば、細かな動きが把握できるし、伸びている商品の在庫を増やすことなどもできると思っています。

 奥山 データはぼう大でしょうから、色んな事が見えてきそうですね。ところで、売れ筋商品のデータ分析をする時はA、B、Cとランク付けしますよね。私はそれが嫌いで、意味がないと思っているんです。

 中山 なぜですか。

 奥山 ランク付けには、販売数量を使いますよね。ねじはこれが管理上は役に立たないのです。サイズが1㎜のものから数十㎝のものまであるので、多く売れたからと言って、在庫スペースが広く必要とは限らない。販売数量だけだと、物流の管理がおかしくなるんですね。

 中山 なるほど。我々だと、例えば発電機の購入を検討しているお客様がいた時に、売れ筋はやはり検討材料で、Aが最も売れているのなら人気も高そうだし、「Aを買おう」となるわけです。ねじの場合は他社が買った情報など必要ないし、関係ないですよね。

 奥山 でも役立つ部分もあるんです。数量でABC分類をしても、意味がないですが、出荷頻度は役に立つし、物流にも関係しています。

 中山 どういうことですか。

 奥山 お客様は1個だけねじを買うのではなく、色んなものを複数購入されます。つまり、購入頻度の高いAと頻度の低いBは関連性があるかもしれない。ハンバーガーを食べる人はコーラを頼みやすいという考え方ですね。それが分かれば、最適な在庫ロケーションがあるのではと思い、配置を変更したんです。

 中山 効果は。

 奥山 「当たり」ましたね。だから物流業界はフリーロケーションが主流ですが、固定ロケーションに戻そうと思っています。商品を複数取りに行く必要があるからフリーロケーションになったと思うのですが、AとBの関連性が高いことが分かればその通りに在庫を置けばいい。物流のセオリーで「似た商品は並べるな」というのがありますが、逆で似た商品を並べています。入庫管理もしやすいからですからね。

 中山 Aを買うお客様がBを買うというようなケースは多いのですか。

 奥山 多いですね。

 中山 ねじの特性でしょうか。

 奥山 ボルトとナットをセットで買うイメージがあるかもしれませんが、実はそうでもないんです。でも大量のデータがあれば探せる要素はあります。

 中山 我々の商品の相関関係はあるのかな。溶接機を買った人はキャブタイヤケーブルを買うのは分かるけれど、それ以外はどうだろう。

 奥山 あるかもしれないですね。1社のお客様だけでは分析は難しいですが、全顧客の中のデータからであれば傾向を見つけられると思います。

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