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【特集】ユーザーインタビュー
機械工具商へのメッセージ
自動車のEV化や人手不足など国内の製造業を取り巻く環境は厳しさを増している。それに伴い、機械工具業界もネット通販の台頭など、商習慣が変化してきた。上記特集では、改めて、機械工具販売店の強み、弱みを把握し、ユーザーが何を求めているかを取材した。ネット通販での購買が増えている一方で、利便性の良さ、様々な情報ネットワーク、豊富な商材、技術提案など機械工具販売店ならではの強みは必ずある。それを時代の要請に合わせ、どのように伸ばすかが問われている。
目次
PART1:公精プラント「求める設備カタチにする力」
PART2:多摩川精機「迅速な対応が価値につながる」
PART3:野田プラスチック精工「提案力・利便性が全て」
PART4:福伸電機「購入は対話できる販売店から」
PART5:ヤマナカゴーキン「ニーズをより伝えやすく」
PART6:和田機械製作所「利益創出のための提案を」
PART1
公精プラント「求める設備カタチにする力」
最新情報は工具商から
工具商から購入する工具や資材は。
工具や資材の月の購入費は約100万円。このうち手袋などの資材(約30万円)はインターネットで、それ以外の切削工具(約70万円)は工具商から購入している。当社が手掛けるのはアルミやステンレスの半導体製造装置など精密部品。切削工具はその加工品質のカギを握る需要な生産財。必ず工具商から購入している。
必ず工具商から購入する理由は。
それは常に切削工具の最新情報を提供してくれるから。当社は3社の工具商と取引をしている。工具メーカーの新製品が発売されると、キャンペーンでPRしてくれる。工具商が最も売り込みたい新製品=最も性能の高い工具。3社が競うように、それぞれ得意な工具をPRしてくれるおかげで、常に高性能の工具の情報を把握できる。
インターネットで探したり購入したりは。
ネットはもちろん利用する。けれど、限られた時間の中で、情報の海で、新しい工具を見つけるのは難しい。それに、新製品の発売とネットでの販売にはタイムラグがあり、「超最先端の工具」の多くはネットでは買えない。
当社が事業方針とし、目指し続けているのは、加工の高精度化と生産性向上。最も新しい高性能の工具と新たな加工技術により品質と生産性を高め続ける。ネットには、それを満たしてくれる利便性と情報が乏しい。だから切削工具をネットではなく工具商から購入している。
設備は。
少子化による人不足などを背景に、生産の自動化に力を入れている。昨年、CNC旋盤+ロボット+3次元測定機のシステムを導入。精密部品の月産1万個のうち約2~3千個をフル自動で生産、品質検査をしている。今年7月には同じ機能のシステムを1セット追加、自動生産をさらに進めていく。
こうした設備でメーカーや商社に求めるのは、当社の要望に応じた提案。いくつかの自動化のテンプレートの中から提案するのではなく、「当社が目指す加工や自動化を実現する設備」を提案して欲しい。コーディネートして提案してくれることを望んでいる。
公精プラント
- 本社 :長崎県島原市有明町大三東戊2757
- 電話 :0957-68-2435
- 代表者 :坂本充宣社長
- 創業 :1980年
- 従業員 :23人
- 事業内容:アルミやステンレスの半導体製造装置の部品などの高精密加工。
PART2
多摩川精機「迅速な対応が価値につながる」
3Dプリンタは新たな商機
貴社の購買状況は。
当社は航空機部品や車載部品、FA部品など製品ごとに購買活動を行っている。例えば、FA部品だと製品売上の6~7割が購入品だ。部品や材料を調達する際は内容や調達先などを指示して、あとは製造子会社(7社)に任せている。
工作機械や工具は。
地元の専門商社から購入している。40年以上の長い付き合いで、メンテナンスまで含めて面倒をみてもらっている。ただ、最近はネット通販から購入するケースも増えた。付き合いのある商社も全ての商品を在庫しているわけではないので、納期が間に合わないものはすぐに届くネット通販を活用している。ただ、その比率は1割もない。
機械工具商社の良さは。
在庫を持ってくれること、少量購入ができること、複数のメーカーを取り扱いしていること、そして技術サポートを行ってくれることだろう。特に機械の故障など不測の事態の時にどれだけ早く対応してくれるかが価値につながっていると思う。
望むことは。
今、自動車や航空機では電動化などによって求められる部品が変化している。部品の製造方法も大きく変わっており、こうした新しい製造技術やそこで使われる機械や工具などの情報をどんどん紹介してほしい。
当社でも来年、金属3Dプリンタを導入する。工具が何種類もあるように、3Dプリンタで使われる金属粉や周辺機器にも色んな種類がある。今後、機械工具商社の方々もこうした3Dプリンタ関連の商材を扱うことができれば、新しい仕事につながるのではないだろうか。
その他には。
ネット通販との連携だ。ネット通販の良さはスピード。在庫がないものはどうしても納期が長くなってしまうので、上手く連携すれば、さらに機械工具商社の価値を高めることができると思う。
今後取り組むことは。
売買契約をしっかりしたい。これまで当社の製品を売る方ではしっかりと契約を結んでいたが、買う方ではあまりできていなかった。これからはきちんと対応していく。すでに受発注ではウェブを活用しているが、こうした売買契約でもクラウドを活用し、業務の効率化を図っていきたい。
多摩川精機
- 本社 :長野県飯田市大休1879
- 電話 :0265-21-1800
- 代表者 :関重夫社長
- 創業 :938年
- 従業員 :669人
- 事業内容:サーボコンポーネント、監視カメラシステム、慣性計測装置などの製造・販売。
PART3
野田プラスチック精工「提案力・利便性が全て」
ネットにはない強み
販売店との関係性は。
日用品などMRO商材を除き、工作機械や切削工具などは1社から購買している。その理由は、1日2回(朝・夕)来訪し、細かな注文(ネジなど)から対応してくれるからだ。明日必要、明後日必要といった時もしっかり対応してくれる利便性でも助かっている。
販売店に求めることは。
ネットや展示会など情報チャンネルが多様化した昨今、販売店に求めることは、当社の事業内容などを理解し、当社にとって最適な提案をしてくれること。購買予定の商品に対し、ネットにはないプラスアルファ—の情報提供や、もっと当社に合う商品の提案といった付加価値が重要だ。
例えば、設備投資の際、当社は長年、A社製機械を継続購入してきたが、今回は競合のB社製機械を購入しようと思った。だが、長く当社を担当してくれた販売店担当者が当社の事業内容から「絶対にA社」だと説得された。その販売店にとってB社の方が利益率も高いみたいだが、当社事業や将来性を理解し、機械の特性を説明してもらった結果、A社を購入することに決めた。そう説得されると、その販売店から買うのは当然。当社のことに詳しいからこそ提案ができ、しっかりとした情報を届けてくれたのはありがたいと思う。
今後、販売店に必要なことは。
まずは細やかな対応ができる利便性向上。さらに求めるなら、販売店の社内チームワーク。特急を依頼しても忙しくて納品できない、あるいはコロナ禍で配達できないでは困る。後輩に行かせるなど社内段取りやリスク管理ができる企業を望む。
提案力を強化するには。
トップの考え方次第。日頃から「勉強してこい、展示会を見に行ってこい」と言える会社もあれば、日々の業務に追われ、展示会に行ったことがない営業担当も多い。勉強に行かせるべきと考えるトップの会社は成長する。展示会では1日を自分で自由に、別日は顧客と一緒に回る。そうすると顧客のイロハも学べる。面白い商品のブースに案内し購買につながれば永続的な関係性も築ける。宿泊費や交通費を懸念するより長い目で成長路線を描けるか。全てはトップのビジョン次第だと思う。
野田プラスチック精工
- 本社 :愛知県丹羽郡大口町伝右2-88
- 電話 :0587-50-0780
- 代表者 :野田浩輝社長
- 設立 :2003年
- 従業員 :37人
- 事業内容:機械切削加工、プレート加工、特殊加工、造形加工・成形品、その他の加工。
PART4
福伸電機「購入は対話できる販売店から」
トータルコスト低減の提案期待
現在の購買システムは。
全社で共用する消耗品(5S用品や梱包資材、手袋など)・消耗工具(切削工具など)は資材購買課が集中購買し各事業部からの要望に応じ必要量を払い出す。消耗工具については各事業部の技術部門が購入製品と価格を決定し資材購買課でマスター登録を行い管理する。工作機械他の設備は、生産技術部が機種選定、価格決定し、直接購入する。
事業部とは。
自動車のスターター部品などを受託生産する電装品事業部、エアバッグ部品などを受託生産する機器事業部、給湯器部品などを受託生産するリビング機器事業部、電動カートや養殖用給餌システムを生産する商品事業部、そして、プレス部品及び金型や専用機を製作し、各事業部に供給する技術本部がある。
年間の購入規模は。
消耗品・消耗工具の購入額は年間約4億円、設備投資は10~15億円を毎年行っている。売上高は約280億円。
購入先は。
色々な相談ができる機械工具販売店から。Eコマースは活用していない。販売店であれば用途と目標の耐久性を伝えて適切な製品を提案してもらえる。緊急時も製品や代替品を探してくれるなど臨機応変に対応してくれる。
新製品や新技術の情報はどこから。
生産技術部から販売店やメーカーに聞くこともあるが、販売店やメーカーからも時々製品提案がある。サンプルをもらってテストをし、良ければ販売店経由で購入する。新しい製品・設備、新しい工法など、貪欲に新しい提案を持って来て欲しい。「こんなものも扱えますよ」という話も歓迎だ。
今後の取り組みは。
一層のコストダウンと在庫縮小を目指す。購入ロットを小さくし、リードタイムを短縮したい。
現在4200品目をマスター登録しており、仕入れ先は100社以上。
コストダウン目標を毎年設定し達成に向け良い製品を探し回っている。相見積もりを取るなど毎年、価格交渉もする。これにより同じ商品でも仕入れ先が毎年変わることもある。新規仕入先も大歓迎だ。イニシャルコストが少し高くなっても寿命が伸びるなどランニングコストが下がればOK。どんどん提案してほしい。
福伸電機
- 本社 :兵庫県神崎郡福崎町福田447-1
- 電話 :0790-23-0811
- 代表者 :宮内康伴社長
- 創業 :1957年
- 従業員 :822人
- 事業内容: 自動車部品・住宅機器部品などの受託生産。養殖用自動給餌機・電動カートの製造・販売。
PART5
ヤマナカゴーキン「ニーズをより伝えやすく」
現場に入ってもらえる信頼性
現在の購買状況は。
例えばボルトや規格が決まっている製品は、料金が安く済むためネット通販を活用している。切削工具や大型の機械、新しく購入する製品などについては、信頼できる機会工具商社から製品について詳細な説明を聞いた上で購入したいので、長年お付き合いのある機会工具商社から購入している。コストが安く済むに越したことはないが、それよりも求めている機能が得られないリスクを考えると、やはり専門の商社からの購入が一番安心できる。
販売店に求めるものは。
大きく分けて二つある。まず一つ目に、当社が求めている機能を、迅速かつ的確に探し出してくれる対応力。これは、必ずしも当社のニーズにピッタリな製品をすぐ見つける、ということではない。例えば、こんな機能を持った製品を探しています、と問いかけた時に、「もっと詳細を教えてください」とすぐに駆けつけてくれるスピーディーさなど。当社からの問いに対して、すぐに何らかの回答を示してくれる商社であれば、製品購入後の対応も含めて、安心して購入することができる。
もう一つは。
加工現場に入ってもらっても大丈夫だ、という信頼感。製品を購入する際は、購入した製品で「こういった加工がしたい」という意図が必ずある。そしてその意図を伝える際は、実際に現場をみてもらうのが一番伝わりやすいはず。しかし、当然ながら誰にでも加工の現場を見せるわけにはいかない。この会社の、この人になら加工現場を見せても良い、と信頼できることが重要だ。
そのために、販売店がやるべきことは。
社内での情報共有。仮に特定の商社の特定の人物だけが信頼できたとしても、その人が退職または異動してしまったら、その時点でその企業との付き合いが減少するケースがある。そうならないためには、ユーザーの事業内容や過去の取り組みの内容などをデータベース化するなどして社内で共有し、担当者だけが頑張るのではなく「企業として」ユーザーに寄り添う事が重要になる。そうなれば、個人ではなく企業全体として信頼することができ、よりニーズを伝えやすくなる。
ヤマナカゴーキン
- 本社 :大阪府東大阪市加納4-4-24
- 電話 :072-962-0676
- 代表者 :山中雅仁社長
- 創業 :1961年
- 従業員 :231人
- 事業内容: 精密冷間鍛造金型、CAEソフト、ダイセット・プレス周辺機器、センサーなどの製造・販売。
PART6
和田機械製作所「利益創出のための提案を」
5軸、自動化の知見必要
工具などの購買状況は。
当社は医療機器を中心に精密部品加工を手掛ける。多様なチップやエンドミルなど切削工具、周辺機器は地元の機械工具商社2社から購入している。切削工具は月100万程度の購入額になると思う。ネット通販も一部で使っている。
購買に関する課題は。
近年、課題の一つだった工具購入の仕組みを改めた。現場が工具をため込む傾向があったので、集中管理できるようにタンガロイの工具管理ツール「MATRIX」を導入した。今は工場長、グループリーダーが管理、購入する仕組みにした。工具を探す手間が減り、無駄な買い物なくなった。
機械工具商社に期待したいことは。
工具管理ツールの利点同様に探す手間を減らしてくれることは一つだと思う。ネット通販を使う理由の一つは、工場長など発注権限者は常に忙しく、(ネットは)いつでも購入できるから。しかし、ネットでは、初めて使うものや、必要なものを探すには時間がかかる。
技術的な提案は必要か。
我々が最も期待するのは利益につながるような提案だ。そのためにはやはり技術的な知見は重要だと思う。特に、5軸加工や自動化の流れは加速していく中、それらに関する情報や提案は欲しい。
簡単ではない。
機械やCAMの知識も必要なので難しいと思う。けれど、今後必要な領域だし、機械工具商社にとっても、特殊バイスや工具など提案できる周辺部分も大きいのではないか。機械メーカーと一緒にスクールを開催したり、特殊なバイスをそろえたりするなど提案のやり方はあると思う。
他には。
M&Aに関連するような情報だ。国内の工場が高齢化などで減っていく中、今後も成長を続けるにはM&Aは不可欠な手段になる。地域の工場に出入りしている機械工具商社は銀行などでは得られない情報を持っていると思う。
今後の取り組みは。
工具管理はスムーズにできたので、次はゲージなどの測定機器の効率的な管理を進めたい。多くの工場では、独自の管理をしていると思う。他社の管理方法や、効率的よく整理できる製品などあればぜひ提案してほしい。
和田機械製作所
- 本社 :静岡県沼津市足高294—26
- 電話 :055-921-8128
- 代表者 :和田修平社長
- 設立 :1957年
- 従業員 :20人
- 事業内容:医療用機器部品及び工作機械の精密部品加工。
日本産機新聞 2021年8月5日
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