2024年7月27日(土)

どうなるコロナ後の世界  –オンライン販売店座談会Part.3–

ITで新たな価値づくり

 新型コロナウイルスの影響で機械工具業界も変わるのだろうか。そんな憶測が出てくる頃だが、機械工具販売店が強みとする「対面営業」に変わりはない。ただ、従来通りの対面営業かといえば、そうではない。今後、日本は人手不足で国内需要の低下や将来の担い手である人材確保が難しくなる。それは営業の担い手も少なるということ。そうしたことも踏まえ、座談会で有力販売店4社のトップに対面営業の強化で必要なこと、すべきことについて聞いた。

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野田社長は今年何に注力しますか。

野田 今年は商社として根本的な見直しを図り、顧客に対する情報収集や情報提供に関するプラットフォームを構築していきます。従来顧客は電話でコミュニケーションを継続できますが、新規や訪問できていない顧客にはメルマガやSNSでの情報発信を強化します。情報発信のためには話題作りも重要で、テレビや雑誌、新聞などメディア露出も高めていますね。HPも6月に改定しました。また、地元の製菓メーカーとコラボして熱中症対策用の現場の相棒塩ビタミンゼリーという商品を開発し展開しています。

どんな商品ですか。

野田 ゼリータイプの駄菓子のようなスティックで簡単に塩分やビタミンが補給できます。どのユーザーにも提案できますので、あまり出入りできていないユーザーへの提案や業界外からも問い合わせを頂いています。

新商品開発やマーケティング強化ですね。新部署などは。

野田 1つは営業推進部を立ち上げました。これは新商品情報の調査や新規開拓のためにSNS更新などを行っています。そのほか、40歳以下の社員で構成する委員会活動も始めました。それが人間力向上委員会、次世代教育確立委員会、社内報企画委員会、SDGs推進委員会で、社内ベンチャーのような感覚で社内の風土改革の一環として取り組んでいます。

最後の質問ですが、中長期的に機械工具販売店の課題や未来に必要なことは何でしょうか。

河邊 機械工具販売店の競合は隣の販売店でもなく、新型コロナウイルスでもなく、ネット通販企業だと捉えています。販売店が負けてしまうと、ユーザーも疲弊し将来的な成長につながりません。それを回避するにはメーカー、商社、販売店が手を取り、協力してユーザーが喜ぶシステムを提供しなければいけない。業界ではメーカーから販売店までのEDIやウェブ受発注システムはありますが、販売店からユーザーへのシステムがありません。そこがしっかりしないとネット通販企業に対抗できない。今、紙カタログから電子カタログにどんどん代わっています。業界内すべての商品の電子カタログをユーザーに提供できれば、ユーザーの利便性も高まります。そうしたシステムを販売店同士で共有できる仕組みが必要です。

そのためには。

河邊 USAGIはかなり整っていますが、まだカタログ面が不十分でウェブカタログの充実が必要です。良いシステムを販売店が協力して構築できれば、簡単な見積もりや受発注はネットで行うことができます。

杉本 ネット通販企業はライバルだと思います。そこで機械工具販売店はどうすべきか。我々は対面営業にこだわりたい。ただし、商品群は変わると思います。10年前は右から左への商品が多かったですが、今は、打ち合わせが必要な商品の比率を意識的に高めています。世の中、早い・安いだけの商売ばかりではありません。全部がネット販売になるわけではなく、本屋で買う人もいれば、町中の電気屋さんのように細やかなサービスで残っている企業もあります。ネット通販企業には出来ない対面営業による細やかなサービスや提案力が我々の生き残る道であると確信しています。

商材はどんなものに変わっていますか。

杉本 設備工事関係や加工品、特殊対応品が増えています。ユーザーも生産技術者が減っているため、当社でポンプ交換を行うなど生産設備のメンテナンス代行にも力を入れています。

食品関係の顧客も多いとのことですが、HACCP義務化で対応する商品は増えていますか。

杉本 増えていますね。営業所内で勉強会を開いてユーザーに対応しています。その辺りも需要は高まると思います。

野田 お二人の言う通りで、販売店の役割とは何かを考え、今年のスローガンを「共創する風土へ」にしました。ユーザーの困り事を解決するのが販売店の役割であり、ユーザーの方向性に寄り添い、アイデア出しや提案力が我々の立ち位置だと思います。そのためには訪問営業に加え、IT強化が必要です。これからは販売店同士も手を組む時期で、競合同士、ライバル関係といった印象も強いですが、ユーザーのことを第1に考えれば、手を組むこともありです。本日のように地域を跨いだ横のつながりを深めれば、自然に縦のつながりも出てきます。そこにITを駆使すれば、我々しかできないことがいっぱいあると思います。皆様と協力すれば、真にものづくりを支えることが可能です。

河邊 そうです。地域の販売店に元気がないと地方の製造業はどんどん疲弊していきます。我々が強くならないと。それには協力関係が重要になります。

原社長はどうですか。

 今回の新型コロナウイルスと不況はセットで付いてくる問題です。長期化する可能性も高く、対面営業の限界を感じる部分もあり、ウェブ注文が増えているところを見ても、ネット通販企業は怖い存在です。ただ、設備関係や特殊品はアフターフォローが求められるものです。そこは対面営業だと思いますし、販売店はユーザーのコアな部分を任せてもらえる存在にならないといけません。ユーザーから重要品目をどの程度担えるかが、我々の評価につながるでしょう。重要度が低ければ、ネット通販企業に取られてしまう。まずユーザーをより深く知り、本当に何が必要で、それをどうやって維持していくのか日々考えることです。

ユーザーから頼りにされるには。

 ユーザーがどんな仕事をしているのか理解しないと提案商材も浮かばないし、どんな商品を選択すれば良いのか分かりません。それには勉強が大事です。販売店が年間に販売している商品は多種多様であり、その中から重要品目を決めて、最適な商材をユーザーに提案することが求められます。また、社員の能力を底上げするためにも、許認可や資格取得といったことも課題となり、会社としてバックアップする体制が必要です。今の人材でどういった体制が出来るのか。1人の担当ではなく、チーム制にして攻める形もあります。

機械工具販売店の基本である対面営業の強化が今後も必要というのが結論だったと思います。そこに、ITを活用して、いかに新しいサービスや価値を作っていけるのかも課題でもあると感じました。当社もオンラインを活用した初めての座談会でしたが、今後もこうした機会を設けていきたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

日本産機新聞 2020年7月20日

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