2026年9月26日(土)

【特集】労働安全の最前線 ー現場を訪ねてー

明電舎 デジタル(VRやメタバース)活用の安全教育

重電メーカーの明電舎は「安全体感車」による実例を再現度高く模した危険体感に加え、VR(仮想現実)を活用した独自の労働安全教育を進めている。5月には仮想空間「メタバース」を活用した安全教育のシステムを開発するなど、新たなデジタルツールを活かし、労働災害ゼロを目指している。

安全体感車で危険を体感

①安全体感車

同社では、重電のインフラ構築を手掛けるため、100以上の工事現場を抱えている。こうした現場では、技能伝承に加え、安全教育が大きな課題だという。「日本は安全対策が進み、危険を実際に経験する機会が減っている」(生産統括本部安全環境管理部の三浦崇副部長)からだ。

こうした課題に対応するには「危険の感受性に訴える教育が必要」とし、2008年から、実際に作業現場での危険を経験できる装置や教育を開始。17年には「安全体感車」(写真①)を開発した。そこでは感電や巻き込まれ、有機溶剤による爆発など、数十種類の危険を実際に体感できる。

②3軸VRシミュレータを活用したVR体感

車両にしたのは、全国の現場を回る必要があったことに加え、「責任者への教育だけでなく、最前線の現場で働く作業者の方にこそ、経験してもらいたかった」(三浦副部長)からだ。現在は、工事現場と生産現場向けの2台を所有。16年からは社外への展開し、延べ2万7000人以上が受講した。

こうした教育に加え、近年注力するのがVRを活用した体感教育だ。その狙いは、体感車では経験できないことに対応するため。確かに、リアルの世界では、高所から転落したり、クレーンから荷を落としたりといった事故の体感は難しいが、VRならそれも可能だ。

単純に経験して楽しむだけで終わらないように、臨場感を持たせる工夫を凝らしている。採用した3軸VRシミュレータ(写真②)では、モーションプレートが上下左右に動き、振動や衝撃を体感者に伝えるようにした。はしごを上る作業では、プレートが上下し、実際に上っているような感覚が得られる。コンテンツは墜落、火災、衝突などに加え、没入感を追求するため、シネマ型など全部で29種類をそろえた。

③腰痛対策にモーションキャプチャを活用

デジタル技術では、モーションキャプチャも活用する。カメラで荷物を持ち上げる姿勢を撮影し、運搬動作のモニターをチェック。改善点を指示するなど腰痛対策をサポートする(写真③)。

最近では、こうした安全教育を社外にも開放している。加えて、VRのコンテンツや機器の貸し出しも行う。サブスクリプション(定額課金制)やレンタルで1か月5万5000円(税抜)から活用できるという。(1コンテンツに対しパソコン、ヘッドマウントディスプレーのレンタルが必要)。

今後もデジタルを活用した安全教育を強化する考えだ。5月にはメタバースを活用した教育システムを開発。受講者がアバターとなって、メタバース上で危険を実体験できる。また、VR空間に実写を差し込むことで手に持ったコントローラで操作ができるような「実機訓練AR」などの採用も考えているという。「今後もキャプチャーやVRなどデジタル技術を活かし、労災ゼロを目指したい」(三浦副部長)。

関連特集記事は、以下のリンクから

製造現場での労災の現状

労働災害で最も多い5つのケース

「Safety2.0」とは

作業者の安全守る注目製品

日本産機新聞 2022年9月20日

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