2024年4月21日(日)

【Innovation!】ロボット向け要素部品

高度化するニーズに応える

あらゆる現場、産業で自動化ニーズが高まるにつれて、ロボットに求められる性能もさらに高度化している。スピード、精度、耐久性など、その要求は現場や用途によって様々。こうしたロボットの進化を支えるのが、ロボットを構成する歯車やベアリング、減速機などの要素部品だ。高精度、高速対応の製品に加え、より手軽にロボットシステムを構築できるユニット製品なども登場している。今回のInnovation!では、最新のロボット向け要素部品を紹介する。

PART1:NTN「滑らかな動き、高速に位置決め」
PART2:エバオン「スリムで軽量、設計自由に」
PART3:加茂精工「精度・摩耗・騒音を解消」
PART4:小原歯車工業「高強度、高精度、耐久性」
PART5:住友重機械工業「高い位置決め精度を実現」
PART6:THK「自由にロボットを設計、構築」
PART7:日本精工「ロボ稼働時の省エネに貢献」
PART8:日本トムソン「直交配列で高精度・高剛性軸受」
PART9:ハイウィン「高速・高分解能で自動化に最適」
PART10:記者の目

PART1

NTN「滑らかな動き、高速に位置決め」

手首関節モジュール「i-WRIST」

独自のリンク機構により人のように滑らかな動きができる手首関節モジュール。小型でありながら稼動できる角度が広く、多関節ロボットなどが苦手な細かな角度変更を人の手首のような動きで高速にできる。最大可搬質量3㎏。

エンドエフェクタとの組み合わせで、外観検査やグリース塗布、製品洗浄、溶接、バリ取りなど、これまで人の手で作業をしていた工程を自動化し、省人化できる。それにより生産効率の向上や製品の品質安定にも役立てることができる。

ロボット言語を使わず、専用コンソールやパソコン用ティーチングツールでティーチングができる。また小型のため直動アクチュエータや回転アクチュエータと組み合わせることで、多関節ロボットと比べて大幅に省スペース化できる。

労働人口の減少や生産現場の高齢化が進む中、外観検査をはじめ人の手による作業を自動化することをコンセプトに開発。その人の手首のような滑らかな動きは、世界2位のシェアを持つ自動車用ドライブシャフトで培った技術が活かされている。

PART2

エバオン「スリムで軽量、設計自由に」

ワイヤレースベアリング

伝導機器商社・エバオンが販売するFranke社(ドイツ)の「ワイヤレースベアリング」は、特殊なワイヤ状の軌道輪で鋼球を保持する。そのため内輪・外輪のある従来の薄肉ベアリングと比べてスリムで軽量なのが特長だ。

ロボットの要素部品として、その特長を最も活かせるのが旋回部や回転基部。採用することによりその部位を省スペース化、軽量化することが可能。そのためその部位の設計の自由度を大幅に高めることができる。

一般的なベアリングと異なり、構成部品の選択ができる。ワイヤ軌道輪の断面形状や、転動体の種類、保持器の形状に加えて、各構成部品の材質も選択できる。そのため旋回部や回転基部を設計する自由度はさらに広がる。

ラインアップは、ワイヤレースを軌道輪とするベアリング単体、そのベアリングをリングやギヤに組み込んだベアリングアセンブリ、ダイレクトドライブを搭載した回転テーブルシステムの3つの要素を展開。ベアリング単体では既製サイズもある。

PART3

加茂精工「精度・摩耗・騒音を解消」

カムラック/カムリング&ローラピニオン(TCGシリーズ)

歯車を使用した製品はバックラッシ(噛合い部の隙間)が必ず発生するため、それをなくし、精度や摩耗、騒音などの諸問題を解消する目的で開発した製品。従来のラック&ピニオン機構や歯車機構に代わる直線・曲線の高精度動力伝達要素部品で、ロボットの走行軸や回転駆動部などに最適。

特長はローラピニオンとカムラックまたはカムリングを組み合わせ、完全転がりによる回転や直線運動機構を実現。予圧を加えても円滑に動作することができ、ノンバックラッシで高精度な位置決めと軽快な運動性能を可能にした。

そのため、ノンバックラッシ・高精度位置決めで装置の高精度化のほか、転がり接触の低摩擦によりグリース劣化が小さく、メンテナンス頻度の減少でランニングコスト低減、長尺ボールねじの置換えによる導入コストの削減が期待できる。同製品は低摩耗で発塵量が少なく、クリーンルームでも多数採用。転がり接触の特性を活かした潤滑供給システムTLSとの組み合わせで、完全メンテナンスフリーを省スペースで実現している。

PART4

小原歯車工業「高強度、高精度、耐久性」

歯研スパイラルマイタ「MMSGQ」

「MMSGQ」は、歯部に浸炭焼き入れを施し、高強度、高精度、耐久性と同社の技術を極めた最高クラスの歯研スパイラルマイタ。最新鋭の研削盤「280HG」、歯車測定機「350
GMS」の導入により、3次元測定機と歯面研削盤を組み合わせた短時間で高精度歯研スパイラルマイタの加工が可能となり、標準規格歯車としてJIS0級の歯研スパイラルマイタを標準化した。

高強度、静粛性に優れ、歯部以外は浸炭防止を行い、加工基準面は全て研磨仕上げが施されており、簡単芯出し、精度維持ができる。工作機械の高速回転部や、精密送り機構、ロボット関節部の機構部品などとして幅広く利用することができる。

歯形はグリーソン、圧力角は20度、ねじれ角は35度、材料はSCM415を採用している。歯面硬度は55~60HRC。

m2~4を在庫製品として即納体制を整えている。製品としては20型番をラインナップ。モジュールサイズはm2、m2.5、m3、m3.5、m4、歯数は20、30の2種類を揃える。

PART5

住友重機械工業「高い位置決め精度を実現」

精密制御用サイクロ減速機(DA、C、UAシリーズ)

「減速機」はモータなどの動力の回転速度を歯車などによって減速し、減速比に比例したトルクを出力する装置。その中でも「精密制御用サイクロ減速機」は、ロボットや工作機械などに要求される高い位置決め精度を実現できる。

「サイクロ減速機」は、堅牢でタフさが特長の減速機。「精密制御用サイクロ減速機」はその特長を踏襲し、さらにコンパクト・高トルク・高剛性、高精度な位置決めに不可欠なゼロバックラッシを実現。ロボットの小型・軽量化、高速化、可搬質量の向上、大径中空軸減速機による内部配線・配管、取り回しの省スペース化、組立工数の削減などを可能にする。

トルク密度が高く、コンパクトでありながら大きなトルクを生み出すことができる。特にDA、Cシリーズは独自の1段型減速機構造で、コンパクト性に加えて、組立性にも優れている。

同社では様々なロボットの各関節に適用可能な幅広いシリーズを展開。小型ロボットに最適なコンパクト・高トルク・高剛性な精密制御用Eサイクロ減速機「ECYシリーズ」も揃える。

PART6

THK「自由にロボットを設計、構築」

回転モジュール「RMR」

「RMR」はTHK製のクロスローラーリングを回転機構の主軸受に採用し、減速機、モータ、エンコーダ、ブレーキを一体化したモジュール型アクチュエータ。ロボットの関節機構に適し、アーム部品や直動部品などを組み合わせることで、用途に応じたロボットシステムを構築することができる。

回転部の軸構成、可搬重量、アームのリーチ長などを様々な仕様に合わせて自由に設計、構成することが可能。既存のロボット製品だけでは対応できなかったシステムの最適化を図ることができる。

本体は中空構造を採用。ケーブルやチューブなどを通すことができ、構造の簡略化や省配線化を図ることができる。また、ドライバをモジュールとは別置きとすることで、モジュール全長を小型化。モジュールおよびドライバの配置の自由度が向上する。

ラインナップは#10、#30、#50、#70の4種類。FA自動化工程の他、物流業界や三品業界(食品、医薬品、化粧品)など様々な産業分野の自動化ニーズに貢献する。

PART7

日本精工「ロボ稼働時の省エネに貢献」

波動歯車減速機用薄肉玉軸受

増加する小型ロボットで要求される、軽量・コンパクト・高減速比を可能にした波動歯車減速機用の薄肉玉軸受。

波動歯車減速機は真円の内歯車に楕円にたわませた外歯車をかみ合わせる。その楕円の位相を回転させ、この両歯車の歯数差分で減速させる特殊な機構を採用している。このため、波動歯車減速機用の軸受には歯車を正しくかみ合わせ、内外輪を適正に楕円変形させる必要がある。

波動歯車減速機用薄肉玉軸受は、内外輪とも非常に薄肉なリングが適正に楕円変形することで、減速機は高い歯車のかみ合いや高い位置決め精度が実現できる。これにより、ロボット稼働時のエネルギーロスにも貢献する。薄肉リングには最適熱処理し、余分な加工エネルギーも削減した。

また、変形による割れや、軌道面のはく離の可能性に対して、解析による応力・弾性力を適正化し、最適な熱処理で変形しても壊れにくい構造とした。

現在は中型から大型サイズをランアップしているが、今後は小型サイズへの展開を予定している。

PART8

日本トムソン「直交配列で高精度・高剛性軸受」

IKOクロスローラベアリング

内輪と外輪の間にローラを直交させて配列したコンパクトな構造の軸受。直交配列によって、接触角45度の単列ローラベアリングやボールベアリングの背面取付け2個分を 個分の断面積に抑えたため、ロボットや機械の省スペース化につながる。

ロボットの旋回部では、高速回転や複雑な動きによる過酷な負荷がかかる一方、繊細な動きにも対応できるように高精度さも求められる。こうした要求に応えるため、あらゆる方向からの複雑な荷重を1個の軸受で受けることができるようにしたほか、厳しい環境下でも精密でなめらかな動きが可能になる。

多様な用途に対応するため、内外輪ともに一体構造の高剛性タイプの「CRBH形」、断面高さの小さな薄形「CRBS形」、超薄形の「CRBT形」、相手ハウジング構造の簡略化する高剛性取付穴付き「CRBF形」などをラインアップした。

豊富なバリエーションにとどまらず、同社では「お客様用途に合わせて個別仕様の対応を得意とする」とし、柔軟な多品種生産にも応じる。

PART9

ハイウィン「高速・高分解能で自動化に最適」

ACサーボモーター「E1シリーズ」

ロボットやFPD(フラットパネルディスプレイ)、半導体、レーザー加工機のほか、工作機械、自動車、検査/測定機器など様々な業界の自動化に最適な高速、高分解能のACサーボモーター。小型かつ安定性にも優れており、ユーザーの生産性向上に貢献する。

ACサーボモーター「E1シリーズ」の主な特長は、①エンコーダー分解能23ビット②高いサーボ制御帯域幅により高精度な位置決めが可能③簡単で操作性の良いインターフェースを採用④コンパクト設計で高速(最高回転数6000min-1)⑤ブレーキ付き、IP65仕様、キー溝付きなどのオプションも用意。定格出力は50W〜2KWで、日本市場の需要に応える性能やラインアップを豊富に揃えており、市場で求められている短納期対応も可能だ。

また、同社は自社製ドライバーのほか、各種ロボット向け要素部品をワンストップで提供することができ、ボールスプライン、波動歯車減速機など幅広い製品群をラインアップしていることも大きな強みとしている。

PART10

記者の目

日本ロボット工業会によると、2022年の産業用ロボットの受注予想は前年比3.6%増の1兆1170億円になるという。初めて1兆円を越えた21年に続き、2年連続で過去最高を達成すると見通しており、ロボット需要の高さをうかがい知ることができる。

ロボットニーズはかつてないほどに高まっており、人手不足の解消や生産性の向上などを図るためにあらゆる現場、産業でロボットの導入が進んでいる。特にこれまでロボットを活用できていなかった中小企業の現場や、食品、医療などといった産業などでの導入が加速しているようだ。

その一方で、まだまだロボットを導入したくてもスペースや予算、性能面など様々な問題で活用できない現場も少なくない。こうした現場の課題を解決できる一つが、ロボットを構成するベアリングや歯車などの要素部品にあると思う。

要素部品が高精度化すれば、これまで人にしかできなかった高度な作業をロボットに置き換えることができるし、メンテナンスフリーの部品を採用すれば、保守にかかるコストや人員を削減することもできる。また、部品を省スペース化することで、システム全体の設置面積を縮小することも可能だからだ。

最近では、従来の形にとらわれない新しいロボットシステムを構築できるユニット部品の開発も進んでいる。今後、こうした新しい要素部品の登場によって、さらにロボット需要も拡大するだろう。

日本産機新聞 2022年8月5日

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