2024年11月21日(木)

【特集】自動車産業 〜次世代自動車にどう対応する?〜

自動車の電動化で、部品点数の減少や機械加工の変化を危惧する声は多い。部品によっては大型化が求められたり、超精密加工が必要になったり、ニーズが変化してきている。こうした動きによって、設備投資や工具需要にも影響をもたらし始めている。では、機械や工具メーカーは、この状況をどう捉えているのか。タンガロイの川口達也最高技術責任者と、ブラザー工業の渡邊正輝グループマネージャーに、次世代自動車で変化する工具や機械の動向について聞いた。

PART1

タンガロイ・川口 達也最高技術責任者に聞く

工具へのニーズや需要変化

川口  達也最高技術責任者

小さな変化見落とさず
多様なアイデアや工具を提供

次世代自動車による工具の変化をどうみるか。

電動化やCASEなどによって①被削材②使用者③燃料の3つの因子で大きな変化や影響が出てくると思う。工具にもそうした変化への対応が求められる。

具体的に教えて欲しい。

被削材は軽量化や部品の変化などから、アルミ合金や銅合金、高硬度材が増える。CFRPなどの難削材も増えるので、そうした被削材に対応した工具が必要になる。

使用者の変化は、今まで自動車車産業に関わりのなかったメーカーの新規参入が増えると思う。彼らは従来の自動車メーカーとは異なる作り方を志向する可能性がある。また、機械加工の経験者が少ない方や、女性、外国人の労働者が増え、多様性が加速すると思う。このため、軽量工具やプリセットが不要な工具、工具交換が簡単にできる製品などが求められるだろう。

電動車が増えると、燃料の多様化も進む。太陽光発電、風力発電などが増えるので、そうした業界で求められる工具が必要になると思う。

工具需要をどうみるか。

車単体で見れば、電動化で部品点数は減るだろう。ニアネットシェイプ化が進み、切り粉を多く出す荒加工が減るかもしれない。一方で、電気ステーションなど関連分野で増える部品がある。重要なのは、その需要を掴むために、小さな変化を見落とさないことだ。

どう対応するか。

未知のマーケットを不安視するより、変化する市場にどう対応していくかをお客様と共に考えるアイデアや工具を提供し続けたい。昨年60を超える製品を発表した「アドフォースキャンペーン」はその一つだ。

具体的な製品は。

アドフォースでは、先に述べた変化に対応するため大きく5つを強化する。工具交換時間やダウンタイムを低減する「ドリル・マイスター」や「モジュ・ミニ・ターン」などのヘッド交換式工具シリーズ、一本で多方向の旋削が可能な「アド・マルチ・ターン」などだ。加えて、φ4・0㎜のヘッド交換式ドリル「アド・マイスター・ドリル」などの小径工具のインデクサブル化、そして、これまで同様に高信頼性の製品開発を強化する。

他には。

ハードだけでなく、ソフトを通じ、生産性向上のサポートをする「スマートテックインダストリー4・0」を進める。工具管理をデジタル化する「マトリックス」のほか、動力計算やユーチューブなど動画を通じ、デジタルを活用したソリューションを提供していく。

SPEEDIOシリーズ「W1000Xd1」は大物ワークに対応した広い加工エリアを持ち、高い機械剛性と高出力主軸モータで加工能力を向上し、7Mpa高圧クーラントにも対応。また、高い省エネ性能で環境負荷低減にも最適な機種。

PART2

ブラザー工業・渡邊 正輝グループマネージャーに聞く

積極的な工程集約提案

加工エリアを拡大
顧客の生産形態に対応

想定する部品は。

インバータやコンバータケース、モータケース、バッテリーケースなどのアルミ部品だ。EVやHV車は軽量化のニーズが強く、フレームやシャシーなどボディ部もアルミ部品に変わってきている。アルミ部品加工に強みを持つ当社の30番マシニングセンタ(以下、MC)「SPEEDIO」シリーズ需要は高まるだろう。

顧客のニーズは。

従来、コンプレッサやブレーキ部品など小物部品中心だったが、ケースものなど大物ワークが増えると、より広い加工エリアが求められる。最新機種「W1000Xd1」は移動量X1000・Y500と30番MCで最大クラスの加工エリアを持っており、顧客ニーズに応えた。

大物ワーク以外に求められることは。

EVやHV車の生産方式は従来の大量生産ではなく、変種変量生産を求められ、1台で工程集約できる機械が必要になる。ワークをワンチャッキングで多面加工(複合加工)できるM200/300X3や当社ラインアップに搭載し多面加工できるロータリテーブルなど、工程集約を積極的に提案している。

自動化・省人化では。

そこは30番クラスで他社製の機械と差別化するポイントだ。当社は外段取り作業が可能なパレットチェンジャー搭載のR450/650X2や当社ラインアップに搭載できるワーク脱着に特化したローディングシステム(4軸多関節型アーム)など、自動化・省人化向けの製品を用意している。また、Slerとの連携も強化し、顧客の生産形態に応じた提案をパートナーと共に図っている。

開発の方向性は。

工程集約や自動化ニーズが強まるにつれ、工具マガジン21/22本では足らず、さらに本数を増やしたいという声は多い。強みである「高生産性」「コンパクト」を失わず、ニーズに応えていきたい。さらに、カーボンニュートラルの意識も高まっており、30番MCにおいてダントツの省エネ性能を持つ当社ラインアップに磨きをかけるため、新技術の開発に着手している。

現状の課題は。

30番MCの大きな課題は剛性と精度。特に生産において安定した加工精度を実現したいというニーズに、現ラインアップでは応えるのが難しい場合もある。30番加工機で従来以上に精度を高めることができれば、顧客にとって大きなメリット。最終的なテーマとして引き続き挑戦したい。

今後について。

「W1000Xd1」に搭載した新NC制御装置を順次ラインアップに展開していく。今年はJIMTOF開催もあり、新製品を多数発表するので期待してほしい。

SPEEDIOシリーズ「W1000Xd1」は大物ワークに対応した広い加工エリアを持ち、高い機械剛性と高出力主軸モータで加工能力を向上し、7Mpa高圧クーラントにも対応。また、高い省エネ性能で環境負荷低減にも最適な機種。

日本産機新聞 2022年3月20日

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