イノフィス(東京都新宿区)は今年8月、腰補助用装着型アシストスーツ「マッスルスーツ」の新しいモデル「GS-BACK」を発売した。既存モデルの「Every」に比べ、軽量で動きやすく、これまで以上に幅広い現場での活用が期待さ […]
【特集】メーカーインタビュー
「中小企業だからコンピュータはいらないという時代は終わった」とあるメーカートップは話す。昨年からコロナウイルス対策としてデジタル化を推進する企業は増えたが、今年に入り、一気に投資のアクセルを踏んでいる感じを受ける。それは一時的な対応といったものではない。ある工具メーカーのトップは「ユーザーの中で若手技術者の情報収集や購買動向がネットに移行している。彼らがいずれキーマンになり、慣習が変われば、大きな課題となる」と話すように、10年後を見据えた本格的な投資が始まった。
「今年取り組む3つのこと」
PART01: ブラザー工業 産業機器事業担当 星 真常務
PART02:イマオコーポレーション 吉田 浩明専務
PART03:カワタテック 川田 昌宏社長
PART04:ハイウィン 中田 修由専務
PART05:二村機器 二村 忠宏社長
PART06:イーグル・クランプ 津山信治社長
PART07:キトー 国内営業本部 大熊 謙司本部長
PART08:アクアシステム 木村 泰始社長
PART09:ブラザー・スイスルーブ・ジャパン 西 博昭社長
PART10:日本レヂボン 村居 浩之社長
PART11:明治機械製作所 佐伯 直泰社長
PART12:レッキス工業 宮川 一彦社長
PART01
ブラザー工業 産業機器事業担当 星 真常務
シェア拡大に向け弾み
コロナ禍から一早く低迷を脱した中国が牽引となり、自動車のEV関連など設備投資が好調で、今期の産業機器(工作機械事業)の売上高は前年比44・9%増の561億円を見込む。中国4拠点目となるテクノロジーセンターを寧波市に新設し、今年4月には西安工場を増築するなど、中国での生産、販売の強化を図る。半導体不足など不安要素はあるが、国内も補助金などをきっかけに投資が動き始め、回復してきた。
その中、新たに大型タッチパネル採用の新制御装置「CNC‐D00」を開発した。全操作の起点となるホーム画面を設置し、情報の一元化やATC工具や生産実績など各種アプリを用意。操作性や視認性も格段に向上し、機能や洗練されたUIなどが評価され、「iFデザインアワード2021」の受賞に至った。これを30番クラス最大級の加工領域を持つ新製品「W1000Xd1」に搭載、今後発売する新モデルに順次搭載する予定だ。これを機に、シェア拡大へ弾みをつけたい。重要な課題は新規開拓。現状、顧客のリピート率は高く、自動車依存も比較的高い状態。今後はEV化など市場の変化を見据え、半導体や医療、空調機器など幅広い産業を視野に、豊富なラインアップと付加価値の提供でシェア拡大を目指す。
テクノロジーセンターを新設
昨年、最大20台の機械展示や大人数のセミナーが可能な工作機械のショールーム「ブラザーテクノロジーセンター」を刈谷工場に新設した。機械能力を実感してもらうにはリアルが1番。ここでは工作機械「SPEEDIO」に、ローディングシステムを組み合わせた自動化システムなど様々なニーズに応えた提案も可能。今後も自動化ニーズは強まる。販売パートナーである機械工具商社とも連携し、ショールームを最大限に活用し、ビジネスチャンスを広げる。
さらに、Webコミュニケーション強化も図る。技術相談もWeb上で行うケースが増えてきた。直近のウェビナーでは切削工具メーカーともコラボし、多くのお客様に視聴してもらっている。これを活用しながら、一層、当社製品の良さの認知を広げていきたい。
脱炭素社会に貢献
小型マシニングセンタの特色は使用電力やエア消費量が少ないことだ。この強みを活かし、従来40番加工機で加工していたワークを、30番でも可能にする加工を提案し、カーボンニュートラルやSDGsなど脱炭素社会の実現に向けユーザーに貢献する。当社は常に新価値を創り、提供するメーカーでありたい。
PART02
イマオコーポレーション 吉田 浩明専務
生産体制を再構築
当社は、開発型企業として、営業主導と、技術主導の両輪で、継続して独自製品を開発してきた。おかげさまで、機械要素部品の「ボルトに替わる締結部品 ワンタッチ着脱」シリーズは主力製品の一つに成長しており、今年9月にも新製品を投入する予定だ。ユーザーに提案しやすく評判もいい製品であり、提案の中で要望や不満が出てきたら、それを解決する新製品を開発するという好循環になっている。2012年に発売して以来、すでに約90品目まで増え、生産増強を迫られている。これらを背景に、ワンタッチ着脱の生産体制を3割増強する。今年中には複合旋盤を4台追加する予定だ。
治具の「工程集約シリーズ」も国内外とも好調であり、美濃工場への5軸加工機の導入をはじめとする設備の入れ替えや生産品目の見直しなど、協力工場も含めた全体の生産体制を再構築する。リードタイムの短縮も図る。
欠品ゼロ体制の構築
当社と代理店様の両方で在庫を持つ体制をとっているが、昨年の景況悪化により在庫を絞った。ところが景況が好転すると在庫が元に戻るまでには1年を要するため欠品が発生する。欠品すると、ユーザーにご迷惑をおかけするだけでなく、代理店も当社も協力工場も皆が問い合わせや納期の調整確認等々、余計な手間を取られることになる。そこで、欠品(在庫切れ)ゼロの体制を構築する。景況が悪化しても在庫量を落とさず、一定量を確保する。代理店様にもご協力を頂き、売れ筋製品の在庫を5割増やす。さらに、回転が遅い製品の在庫も独自に3割増やす。
機械要素部品も含め18900品番位ある製品の内3~5%は欠品しても良しとして運用していたが、今後は欠品ゼロを目指す。
海外販売を強化
2年前に5%だった海外売上高を、今13%まで増やすことができた。特に、先に述べたワンタッチ着脱などが好調で、需要は大きいとみている。今年は、15%まで伸ばしたい。
デジタルマーケティングを中心に展開しており、今年は海外代理店への支援も含めて、海外のプロモーションに5000万円の投資をしている。特に、米国・中国の強化だ。例えばグーグル広告や、ポータルサイトへの広告・製品掲載。そこから集まった情報を基にメーリング展開している。実際に、メールでの問い合わせから受注に繋がるケースが増えている。引き続き海外代理店への支援を積極的に継続していく。
PART03
カワタテック 川田 昌宏社長
社内のデジタル化を推進
今年の大きな目標は社内のデジタル化を進める。特に製造現場は作業指示書など紙ベースの仕組みで、ここ数年投資を行い、少しずつペーパーレス化を図っており、それをさらに加速させる。最終的にはデジタル化による技能の平準化や生産性向上を図りたい。当社もベテラン技能者に支えられ、事業を拡大してきたが、機械加工や工程管理など職人の腕や勘に頼る属人化した部分も多い。人口が減少する将来を見据え、デジタル化で特定の人しか出来なかったことを平準化し、誰でも可能にする仕組みを
整えておくことが重要だ。
また、大型チャック市場は外部環境の変化で受注状況の波が激しく、一定期間に製造現場が逼迫するケースがある。それをいかにシステム活用で最適な生産体制を構築し、安定した納期を実現できるかが大きなポイントだ。直近は工程管理システムの充実や現場の見える化など改善に取り組んでいる。現場の意識を高め、様々な受注状況に対応できる体制を構築したい。
次世代に向けた環境整備
製造業もコロナ禍でネットを活用する頻度が増している。ユーザーがネットで情報収集し、直接メーカーへ問い合わせるケースも多くなってきた。こうしたユーザー動向を注視していると、未来のビジネス方法は大きく異なる可能性がある。当社もそうした環境変化に対応できる社内環境を整えなければならない。すでに社内の一部でチャットツールの試験運用を始め、情報発信としてYouTubeでの製品動画など、情報の共有化、情報発信の強化を推進している。
こうした試みは初めてのことで手探りな面が多い。試行錯誤していると、若手人材の必要性を感じている。特に、Webエンジニアのような異なる考えを持つ若手人材を採用し、新しいアイデアを社内に取り入れることでインターネットを上手く活用した次世代のスタイルに変化させたい。まだ、構想段階だが、ユーザーである機械設計者もネットで部品選定することが増えている。こうしたニーズを見極め、次年度以降に構想を固めたい。
薄型シリーズを強化
今年はメカトロテックジャパンに出展する。直近、半導体製造装置など5軸加工機の旋削加工で引き合いが増えている軽量・薄型のTMシリーズやTIシリーズをメインに、自動化や省人化に対応する外段取り性の良いチャック交換システムも参考出品する予定だ。当社の目指す方向はグローバルニッチトップ企業。まずは社内のデジタル化を進め、いずれは海外への情報発信も強化したい。
PART04
ハイウィン 中田 修由専務
ロボットなど自動化システム提案を強化
当社の特長はボールねじやリニアガイドを軸に、ベアリング、ACサーボモータ、DDモータ、ドライバ・コントローラ、電動グリッパなど1社で機械要素関連製品が全て揃う稀有なメーカーなこと。それらを活かし、自社ロボット(単軸・スカラ・多関節・ウエハ搬送)と周辺機器を組み合わせた自動化システム提案を強化する。他社とは異なり、自動化に必要な全バリエーションを持っており、顧客ニーズに応じて改造・特注も可能だ。来年には新工場(神戸市)も完成し、国内の生産拠点として1品1様や短納期のニーズに応える体制が整う。
また、新工場は6軸多関節ロボットやスカラロボットを展示し、技術センターとして顧客ニーズに対するテストラボ(検証)の役割も担う。技術センターは東京に続いて国内2拠点目で、利便性も向上し、全国の顧客に対応できるほか、技術のサポート体制など人材面の強化も図っている。
ロータリーテーブルで市場を開拓
日本の工作機械、特に5軸加工機や複合加工機に注目していると、ロータリーテーブルはDDモータが主流の欧州と異なり、日本はギアやカムが主流のようだ。だが、5軸加工機で旋削加工ができるなど複合化が進むと、DDモータを活用したロータリーテーブルのニーズが確実に増えてくる。当社は自社でDDモータ(トルクモータ)を生産しており、高出力、制御性、省スペース設計など工作機械のトレンドに合うロータリーテーブルをラインアップしており、日本メーカーとの差別化を図ることで、ビジネスチャンスを見出したい。
スマートマニュファクチャリングへの挑戦
今年、ボールねじにセンシング機能を付加し、状態を可視化できる「i4・0BS」を販売した。以前からテストを繰り返し、振動や温度などデータを収集(ビッグデータ)、独自アルゴリズムを活用することで高精度な予知保全を可能にした。ユーザーはPCやタブレットでボールねじの状態をリアルタイムで把握できるほか、正常時は緑、危険性が出てきたら、黄色、赤色など信号で報せる。予知保全はユーザーが独自の判断で行うケースが多いが、当社アルゴリズムを使えば、高い精度で未来診断し、工作機械や半導体関連設備など故障の予兆を捉え、自動化の促進につなげられる。これらを全国のユーザーに提案するには情報を持つ機械工具商社や販売店との連携が欠かせない。当社にはバリエーションの豊かな製品群や特注対応など1社で完結できる力がある。それらを知ってもらう活動も大切だ。
PART05
二村機器 二村 忠宏社長
営業・製造でDX化推進
在宅勤務や営業の直行直帰など一部の大手企業の戦略と捉えていたが、コロナ禍で営業できない状況が続いており、本格的にDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む時期が来た。本社の愛知県や各営業所の営業担当は近隣の県外や遠方に行くことができず、営業拠点間の情報共有もできていなかったため、フォローできない状況は深刻な問題だと捉え、「中小企業だからコンピュータはいらない時代は終わった」と認識した。早速、若手中心のプロジェクトチームを立ち上げ、従来方法をただIT化するのではなく、若い人が持つITスキルやツールを活かし、仕事方法そのものを変える形で進める。
そこで考えているのが製造から営業までシームレスに情報共有し、工程管理できる構想を掲げた。第1段階では受注環境をデジタル化させる。従来の商談は代理店経由の情報から始まっていたが、Webを活用し、HP上の商品閲覧やQ&Aなど顧客動向を解析し、最適な商品を最短時間で提案する仕組みを作り、購入までのリードタイム短縮を図る。コロナ収束後の世界は大きく変化する。商品の使い方、使われる場面などユーザーニーズも多様化してきた。それをDXで情報収集や技術開発につなげていくことがメーカーの役割だ。
次世代に向け技術開発
回転センターのリーディングカンパニーとして、新技術の開発に着手する。若手採用も強化し、アイデアを取り入れ、様々な情報を一元化する技術開発室を設計部内に設けた。開発テーマは回転センターの素材、機構、形状、コーティングで、産学連携も視野に入れ、次世代が求めるシーズの蓄積を図る。当社の主要市場である自動車産業はEV化が進んでおり、被削材も鉄から樹脂に代わる可能性もある。鉄しかできなかったことも現代の技術を駆使すれば、樹脂でも可能になるかもしれない。従来の思い込みや先入観を排し、壁を越えることで技術は進歩する。
今年中にショールームを
今年、第2工場である津島工場が稼働。標準品の加工をメインに、本社は特殊品を手掛ける体制が整った。空いた本社スペースには新たにロジスティクスと商談スペース&ショールームを設ける予定で、動画撮影など制作の場としても活用する。非対面式が進む中、商談や技術相談など行かなくてもよい状況を作る時代になった。まずは、MECTでも披露する新製品の傘型回転センター「BRF」の使用方法や女性営業の視点から分かりやすい商品の解説など動画制作を充実させていく。
PART06
イーグル・クランプ 津山信治社長
データベースを再構築
今年の取り組みの1つ目はデータベースの再構築。中期経営計画の事業の一つで、社内に点在、内在する情報を数値化、言語化し、全社で共有できるように情報をまとめるものだ。
例えば、営業は顧客それぞれのニーズや地域特性に合わせて、安全に効率良く使える商品を的確に提案したりメンテナンスしたりする知識を持つ。一方、生産は高い品質の商品を効率良く作る技術や、溶接、熱処理など高度な専門技術を持つ。
しかしそれらの知識やノウハウ、技術はそれぞれの部門に点在していたり、社員の能力として内在していることが殆どだ。データベースはそれらの情報を共有し、社員全員がオンデマンドで検索し、知り、学び、生かせるようにするもの。そうすることで営業、生産技術、開発などの力の底上げや、次代への技能やノウハウの継承に役立てたい。
組織・拠点横断で学び、情報交換
2つ目は教育制度の充実。商品の提案方法やメンテナンス、加工技術、財務の知識などを学ぶ会を年間50回以上予定。社員が集まり、それぞれのテーマについて学ぶ。
ただ、「参加希望者を募り講師が座学のみで講義をする」というやり方はしない。テーマ毎に参加者を選出し、拠点に集結あるいはオンライン会議を用い、知識を学ぶと共にそれぞれが持つ情報を出し合い共有する。
その目的は社員全員の知識やノウハウのレベルの底上げ。例えば、商品、メンテナンス、加工技術、財務。それらの知識は各部門、そして社員それぞれでレベルが異なる。それを全社員である一定のレベルに引き上げたい。職責別等だけでなく、時には部門も社歴も拠点も全て異なる混成メンバーで開く事もある。
学ぶテーマも多種多様。例えば、全営業所の内勤者のみを集め、実務の効率化やレベルアップについて情報交換するブレインストーミングなども計画している。
未来を拓く商品開発
鋼製の構造物や船舶。当社の吊り具は、それらを作る現場で使われる。建設や造船業界は今なお堅調。しかしこれが10年、20年先も同じように続くとは限らない。
そこで新たな市場を切り拓ける新商品開発に力を入れる。それは従来品を改良したり機能を付加したりするのではなく全く新たなアイデアや特長で市場のニーズに応える商品を創り出したい。
これら3つの取り組みは当社のブランド力向上のため。「作業者の安全を守る」というブランド力を高めるため、今年、そしてこれからも取り組み続けていく。
PART07
キトー 国内営業本部 大熊 謙司本部長
ECサイトの定着
今春にECサイト「OWL(アウル)」を立ち上げた。このサイトは特約代理店、認定販売代理店の順に段階を経てオープンしており、最終的にはエンドユーザーへの展開も計画している。利用者がいつでもアクセス可能で、標準小売価格、納期、在庫情報を即座に入手することができる。今期中には製品だけでなく、補給部品の見積機能の追加なども予定している。
今年はこの「OWL」の定着に注力したい。便利なものも使ってもらわなければ意味がない。使ってもらうためには、まずは知ってもらうことが重要だと考える。ウェビナーによる講習会の他、営業担当者を中心に地道な周知活動を行っている。また、操作方法などを気軽に相談できるように、東京・大阪のカスタマーセンターに相談窓口を設け、様々な問い合わせに対応できる体制を整えている。なるべく早く全ての代理店に「OWL」を使いこなしてもらい、エンドユーザーが利用できる環境を整えたい。
デジタルマーケティングの推進
デジタル技術を活用したマーケティング活動を推進していく。今年4月には「デジタルマーケティンググループ」を新設した。動画を始めとしたコンテンツの企画や制作、DM配信、PR企画の立案などを行うグループで、ウェブサイトやSNSなどのチャンネルを活用した情報発信に取り組んでいく。また、単なる情報発信だけでなく、営業担当者と上手く連携し、クロージングまで行うことを目指している。
すでに顧客データベースを活用し、商品カテゴリに合うユーザーに対してピンポイントで新商品のDMを配信しており、手応えも感じている。機械工具商社の方々にとってもユーザーがどんな商品に関心を持っているのかを知ることができ、より効率的な営業につなげることができると思う。
再生可能エネルギー産業への営業強化
再生可能エネルギー産業との関わりを強めていく。今後、カーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギー利用の必要性はさらに高まっていくことが予測される。こうした産業への関わりを強めることで、社会全体への貢献につながると考えている。
すでに風力発電では当社の電気チェーンブロックが使用されている設備もある。最近では洋上風力発電の開発が進んでおり、これからターゲットにしたい分野の一つとして捉えている。一昨年に設立した「セールスエンジニアリンググループ」(営業とエンジニアリングの両方の機能を併せ持つグループ)を中心に営業活動を行っていく。
PART08
アクアシステム 木村 泰始社長
新組織体制の構築図る
そろそろ若手を中心とする新組織体制の構築を進めなくてはならない。来年3月をメドに、社内の基盤作りを行っていく。コロナ禍もあり、組織の改善点など見直すには良い時期で、体制を構築するチャンスと捉えており、現状の課題を見つけ、人材強化を図るつもりだ。
若手中心となった場合、危惧しているのが営業や技術などプロフェッショナル人材が不足していること。そこで、海外営業や技術職で活躍した人材をヘッドハンティングし、若手と共に活躍できる組織作りを進める。コロナ後の世界を予測するのは難しいが、プロフェショナルな人材の知識や経験と若手の行動力を融合し、次の時代へ歩み出したい。
エア技術で新市場開拓
ドラムポンプや工場扇、切削液など切粉をろ過するタンク清掃ろ過クリーナーといったエア技術で問題解決する製品を主に機械加工現場に販売してきた。今後はその技術を応用し、他の市場へも投入できる製品の開発を進めていく。例えば、病院や介護現場などは電気よりエアが求められる可能性もある。さらには、自動化ニーズで市場の成長が見込めるロボットのハンドリング(モノを掴む)といったエアが活躍できる市場はまだまだある。
そうした新市場を開拓するにはマーケティングで現状の課題やニーズを把握し、我々の技術を活かせるのかどうか見極めることが重要だ。コロナ禍でユーザーの生の情報を得る機会が減っているが、行動制限が解除されれば、代理店や販売店との同行営業を通じ、現場のマーケティングに力
を入れ、情報を収集する。
同時に営業活動にも重点を置き、代理店に在庫してもらうだけでなく、ユーザーまでしっかりと売るという気持ちで販売活動を展開したい。
海外市場の販売強化も
当社には海外の関連会社が3つあり、中国は生産をメインに、タイ、ベトナムは販売を担っているが、売上高の海外比率は決して大きくない。国内を盤石な体制に整えながら、いかに海外販売を伸ばせるかが今後のカギ。
1つはベトナムでの生産も視野に入れ、タイをASEAN市場のヘッドクォータ的な役割として活用することを考えている。他社と差別化を図るには海外市場を伸ばすこと。今年9月に経験のある海外営業担当を採用し人材面を強化する。日本やローカルの代理店とも連携し、中国、ASEAN、ヨーロッパへの販
路開拓ができればと思う。
当社の商品はニッチな市場向けだが、海外でもオンリーワン企業となり、売上高10億円から目標の15億円を目指していく。
PART09
ブラザー・スイスルーブ・ジャパン 西 博昭社長
国内の認知度向上へ
当社の日本法人は1996年設立と日も浅く、まだ国内の認知度は高くない。この認知度をどう高めていくかが課題だ。そこで重要施策の1つが工作機械メーカーとの協力関係。ユーザーは新規設備導入前に機械メーカーでテスト加工を行うのが一般的であり、工作機械メーカーとパートナーシップによる関係強化を図り、テスト機での使用や機械メーカーからの紹介を通じて、ユーザーへの認知度を高めたい。そのために機械メーカーのマーケティング施策とも協調しながら進める。
ハイエンド市場の開拓
自動車のEV化やパソコン、スマートフォン需要の急増で、半導体及び半導体製造装置の市場が伸びており、当社も新たな領域として開拓に取り組んでいる。
半導体市場でクーラントを使用する加工には、半導体チップ加工に直接関連するものと、半導体製造装置の加工に関連する間接的なものがある。直接的な半導体チップの加工では、ウエハー加工工程におけるシリコンインゴットの切断(スライシング)で、当社の「シナジーDWSシリーズ」が従来方法より生産効率を高める効果が認められ、開拓につながっている。
また、半導体製造装置の基幹部品の加工は使用クーラントに様々な条件があり、航空機と同様に認証が必要。当社はある露光装置メーカーの認証を得ることができ、今後の販売に期待している。こうした付加価値を求めるユーザーを重要マーケットとして開拓を進める。
アプリケーションの拡充
切削や研削以外の分野にも視野を向けている。その1つが放電加工向けの加工油だ。新しいチャレンジ領域としてラインアップ拡充に取り組み、直近では「ブラソスパークGT250」の販売を始めた。天然ガスを原料としたGTL(Gas To Liquid)オイルをベースに採用し、低揮発性や高い酸化安定性などの特性を持っている。
また、クーラント管理の重要パラメータとなる濃度をモニタリングするIoT関連の開発も進めており、ユーザーに新たな価値を提供したい。
当社は金属加工油分野に進出した1970年代から厳選した安全性の高い原料の使用や殺菌剤を使用せず、バイオロジー技術で長寿命を実現する独自の「バイオコンセプト」で、人と環境に優しいクーラントを開発してきた。昨今、SDGsやカーボンニュートラルなど環境に対するユーザーの意識も高まっている。今後も製造現場の環境改善や生産性向上につながる製品を提供し、ユーザーの課題解決に努める。
PART10
日本レヂボン 村居 浩之社長
潜在するニーズを探る
ユーザーニーズは常に変化する。その変化をとらえ、ニーズに応える新たな製品を生み出す。それがメーカーの使命であり、魅力であり、事業を成長させる原動力だと思う。
これまでにない独創的なアイデアや着眼点、特長でユーザーに喜んでもらい、社会を豊かにする。そうしたメーカーとしての原点に立ち返り、魅力のある独創的な製品開発に、愚直に取り組んでいく。
その第一歩として今年4月、「市場開拓部」という組織を新設した。グループ各社の多彩な経歴をもつ営業を結集させ、技術・品質管理からも精鋭を選抜、総勢約20人のチームで、製品開発のヒントとなる市場の動きやユーザーニーズを探る。
当社が主力とする砥石の市場は常に変化している。そして砥石による「切る」、「削る」、「磨く」ニーズで顕在化しているものはごく一部で、殆どは潜在している。市場開拓部は専門のチームとしてそれらのことを調査する。
ニーズに応える製品をつくる
ニーズを知ったら、次はそれをカタチにする。例えば今年3月に発売した「レヂボンスーパーカットRSC PC鋼用」。
これはプレストレストコンクリートに用いる金属の緊張材(PC鋼材)を切断するための砥石で、従来品の2倍のスピードで切断できる。
研究を重ねた一品とはいえ、現場で認められなければ不合格。試作品をもって訪問したユーザーも最初は懐疑的だったが、実際に試してもらうとその性能をとても喜んでもらえた。これぞメーカー冥利に尽きるというものであろう。
製品開発のテーマは「PC鋼用」のように砥石が中心となるが、「切る」、「削る」、「磨く」分野であれば砥石以外にも広げたい。当社には子会社の菱和や親会社のノリタケカンパニーリミテド、そのグループ会社などとのつながりがあり、この企業間のネットワークを生かしていきたい。
生み出した製品を届ける
ただ、そうした独創的な製品は、その存在理由や特長をすぐに理解してもらえない。そのため手間を惜しまず、時間をかけ、丁寧にユーザーに説明し、理解してもらうよう活動を重ねないといけない。
また一方で、日本のユーザーに認められた製品は海外にもニーズが潜在する可能性がある。当社が持つ、東南アジアや欧州、米国などの市場とのネットワークを生かし、新製品が活躍する舞台を世界に広げていきたい。
PART11
明治機械製作所 佐伯 直泰社長
ニッチトップ企業目指す
コンプレッサやスプレーガンの市場は競合他社と性能の遜色がなく、汎用品はレッドオーシャンで、いかに差別化を図り、他社ができないことに目を向けるかが重要だ。
そこで、ニッチな市場開拓を進めるための製品開発に力を入れている。例えば、コンプレッサはメーカーが推奨する使用環境下でユーザーに使ってもらいたいが、それに該当しない過酷な環境下で使用するユーザーも多く存在する。空調が効いた環境下にある工作機械とは違い、高温化したコンプレッサ室や粉塵の多い環境下での使用は、コンプレッサの寿命や性能に大きな影響を与える。ユーザーも仕方なく標準品を使用しているが、そうしたユーザーの使用環境に耐えられる製品開発を進め、販売を目指す。
スプレーガンも同じく自分に合った商品を求めるユーザーは少なくない。こうしたニーズは1丁や5丁など小ロットが多く、当社は小ロットの特殊品に対応するセル方式の生産現場を構築し、特殊比率を高める準備を整えた。
技術の専任チームを設置
こうした特殊対応をブランド化したいと考え、「特殊対応の明治」として販売の強化やイメージ戦略を図る。スプレーガンの特殊品は品質や条件など細かな打ち合わせが必要で、営業担当のスキルや経験値が問われる。中には苦手意識のある営業もいるだろう。そこで営業のバックアップをする技術の専任チームを設け、営業から得た情報をもとに、技術的な相談は専任チームが行っていく。役割を分担すれば顧客ニーズを集めることができ、技術強化にもつながる。
また、デジタル強化も必須だ。HPの製品情報や技術情報などの掲載、SNSや製品動画などデジタル活用も進めている。コロナ禍で海外出張が難しい中、米国の現地代理店がYouTubeで情報を発信し、インフルエンサーが当社製品の良さを紹介してくれるなど、ネットからの反響も増えた。ネットの影響力は今後も拡大の一途であり、当社も塗装機器の講習に使える分解洗浄の動画や次世代を見据えた多チャンネル化に取り組む。
まもなく創業100周年
2024年に創業100周年を迎え、次の110年120年を視野に、次の柱を考える時だと考え、30代の若手中心に、第3の柱を考える委員会を立ち上げ、若手の声を経営に反映させていく。時代の変化も早まっており、スピード感を持った対応が求められている。当社も乗り遅れることなく、営業や製品開発など社内の情報共有化や計画的な行動を促し、100周年の先へ進む。
PART12
レッキス工業 宮川 一彦社長
ニューノーマルへの対応
様々な情報を読み解くと、コロナ後の世界はコロナ前とは別の形になると思っており、当社もニューノーマル時代に向けた対応が必須だ。現在の社内業務は時差出勤や在宅勤務を交えたシフト制導入など少人数制を進め、クラスタ—が起こらない環境を作っている。製造現場も同じく、2m以上の作業間隔を取るなどの三密回避を行っているが、さらに効率性を高める仕組みが求められる。いずれは基幹システムのクラウド化など検討しながら業務改革を進めたい。
デジタルとリアルの融合
もっとも踏み込む必要があるのは営業活動のニューノーマル化だ。HPを活用したバーチャル展示会やレッキスクラブを通じて、ユーザー会員へのメルマガによる新製品やキャンペーン情報、CSR活動を提供し、当社をより知ってもらう活動を行っている。インスタグラムなどSNS発信も強化しており、SNS施策から誕生したキャラクター(レッキー)が随所で活躍し、ユーザー同士がSNS上で出会い
交流する効果も得ている。
次は製品の動画コンテンツの拡充を目指す。製品の使い方やユーザーの課題といったコンテンツをYouTubeで配信する。さらに、営業の成功事例や製品検索、納期回答など情報の共有化を図り、レスポンスの早さを高めたい。システムの構築は出来ており、どこでも情報が取れるようにネットワーク化を進める。
一方で、ネットでは伝わりにくい製品の使い心地や重量感などリアルでしか体感できない良さがあることも事実。当社も購入前に感触を確かめてもらい、購入につながるケースは多い。それらは展示会など従来の方法を通じて体感の場を作る。9月には大阪で管工機材・設備総合展も開催されるため、新製品の小型バンドソーやモデルチェンジした管内カメラなどを披露する予定でぜひ体感してもらいたい。
製品もデジタル化へ
ニューノーマルな時代では施工現場も非対面、非接触化が進み、IoTなどデジタル化が必要だ。当社も4年後の創業100周年に向けて市場環境の変化に対応していく。すでに水圧・空圧・満水試験記録器「みるみるくん」などデジタル対応した製品をラインアップしているが、今後は他分野にも展開したい。例えば、養殖向けの水処理システムでは水質管理でIoT化を図り、職人のノウハウを数値化することで省人化につながっている。こういったニーズが配管市場でも増えることは間違いなく、耐震向けの接合技術や転造技術も含め技術強化したい。
日本産機新聞 2021年9月5日
TONEは、本社を同社最大拠点である河内長野工場に統合、移転した。9月26日から業務を開始した。 今回の統合により、開発、製造、営業企画、品質保証、管理の各部門と経営を一体化。部門間のコミュニケーション向上を図り、一層綿 […]
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