2021年11月28日(日)

特集 2021年をリードする最新技術

 少子高齢化による人手不足、「脱ガソリン車」による自動車産業の大変革など、日本の製造業を取り巻く環境は大きく変化し、新型コロナウイルスの感染拡大によって、そのスピードはさらに加速している。その一方で、日本のものづくりを支える生産設備も進化を遂げており、様々な新しい技術や製品が登場している。環境変化への対応に迫られる2021年をリードするのは、果たしてどんな技術なのか。日本産機新聞編集部が選定した5つのテーマの技術動向や最新製品を紹介する。

自動化

ロボット導入、より容易に −導入支援の取り組みも−

山善のロボットショールーム
各社の協働ロボット

 従来からの課題であった人不足や熟練者の減少に加え、新型コロナウイルスの感染拡大によって、自動化や省人化への関心は急速に高まっている。自動化、省人化へのアプローチは様々だが、その一つにロボット活用がある。最近ではティーチングが容易な機種や導入が簡単な製品、様々な導入支援の取組みが登場しており、ロボット導入のハードルは下がりつつある。

 不二越の協働ロボット「CZ10」は、アームを手で動かすことで直感的にティーチングが可能。オークマの次世代ロボットシステム「ARMROID」は、機械と同じCNCでロボットが操作できる。最適な自動化実現にはシステムインテグレータとの連携が必要であることに変わりはないが、他社も含め、ロボット操作の専門知識が不要の提案は増え始めている。 

 導入時に煩雑な作業が不要な製品も多い。ファナックのロボットシステム「QSSR」は、工作機械とロボットをイーサネットケーブル1本で接続でき、ガイダンス機能によってセットアップも簡単に行える。オムロンの次世代スカラロボット「i4シリーズ」は、統合コントローラー1つで周辺機器までまとめて制御ができ、導入する際に複雑な作業が不要。

 導入を支援する取組みも広がっている。ロボット運用のための特別教育や導入前の検証、導入後の講習などを行うジーネットのロボットテクニカルセンターやダイドーのロボット館などに加えて、このほど山善も本社の1階に、協働ロボット専用ショールームをオープン。各種ロボットや周辺機器を展示し、ロボットの具体的な活用方法を提案する商社が増えてきている。

多機能化

次世代技術との融合 −工具や測定機器でも−

切削・AM・FSWまでを1台で
三菱マテリアルの「WJX」

 複数の工程を一つでこなすことができる多機能な機械や工具。省スペース化や工程集約による生産性の向上、段取り削減による品質の安定化などが期待でき、その導入メリットは大きい。近年では、付加製造(AM)や摩擦撹拌接合(FSW)などの次世代技術と融合した機械や、切削工具、測定機器でも多機能化が進んでいる。

 ヤマザキマザックが開発した「ハイブリット複合加工機シリーズ」は、従来の切削型加工機にAMやFSW、ギア加工といった次世代加工技術の機能を搭載する。段取り無しで、切削からAMやFSWまで完結でき、工程集約によるリードタイムの大幅な短縮と加工品質の向上が可能となる。また、ギア加工では、加工機能に加え、計測機能も搭載。同時5軸やスカイビング、バリ取りなど複数の機械加工だけでなく、検査工程までも1台に集約する。

 大型ワークにも対応しようとしているのが三菱重工工作機械。同社は、高さ1mの造形に対応するパウダDED方式3次元金属積層造形機「LAMDA2000」を開発。今後、門型マシニングセンタと組み合わせたハイブリッド金属AM装置の開発も進めている。複数の工程を1本で加工できる切削工具の開発も進む。三菱マテリアルが注力するインサート式ラジアスカッタ「WJX」は、正面削りや肩削り、ランピング加工など多様な加工形態に対応する。

 測定機器でも、ミツトヨがこのほど発表した「ROUNDTRACER EXTREME」は、真円度、表面粗さ、輪郭形状の測定を1台で完結できる。測定工程でも効率化を実現する。

機上計測

3次元並みの精度 −工具の計測技術が進化−

MCR︲Sでの計測の様子

 無人化、高精度、段取りレス—。こうした次世代のものづくりに欠かせないのが機上計測技術だ。正確に機上で測れる技術がなければ無人化も段取りレスも実現できない。三次元測定機並みに高精度で測れたり、自動補正できたり、工具形状が測れたりするなど、機上計測の技術が進化している。

 機上計測の課題とされてきた精度だが、大型加工機でも高精度の計測ができるようになっている。オークマの大型門形加工機「MCR‐S」は3Dキャリブレーション効果で、1200㎜クラスのワークで穴ピッチ誤差5μmの計測を実現した。

 精密加工では、ワークを機械から降ろすと位置決めなどの再段取りに時間がかかる。碌々産業は加工、洗浄、測定、追い込み補正加工が一貫してできる「COSMOS」を開発。加工機から降ろすことなく、高精度加工を可能にした。

 機上計測したデータを基に補正したり、自動でプログラムを組んだりする動きも広がっている。岡本工作機械製作所の「MAP研削」は、機上でワークの位置や寸法などの情報を取得。取り代の多い部分から加工するプログラムを自動で作成し、加工まで行う。

 機上での工具形状の計測も進化している。大昭和精機の「ダイナライン」は光学技術を活かし、機内で工具を測定。画像センサと比べ処理速度が速く、回転中の工具測定に最適という。芝浦機械の撮像式工具形状測定装置「FormEye」は、回転中の工具輪郭を高速・高精度で測定し、補正パスを自動作成する。DMG森精機も高性能カメラを搭載し、工具の状態を把握する機上工具形状測定システムを開発するなど、機上計測の技術は進化し続けている。

デジタルツール

切削加工をサポート −時間とコストを削減−

サンビックのアプリ表示画面

 切削工具メーカー各社はデジタル技術を使い、現場をサポートするアプリケーションの開発を進め、最適な切削工具を活用したいユーザーの時間とコストの削減を目指す。

 サンドビックは推奨工具を選定する「CoroPlusツールガイド」をはじめ、旋削、フライス、穴あけなど各種加工の希望する加工結果を達成するための加工計算を行う「加工計算アプリ」、他社のチップと同等のチップを検索する「適合チップチェック」など様々なアプリケーションを開発。また、それらを1つにまとめた「Ifind」をダウンロードすると、どこでも使用が可能だ。イスカルジャパンは製造現場の時間とコストを削減する情報集約アプリ「イスカルワールド」を発表。「電子カタログ」、「工具選定プログラム」、「ねじ切り工具選定プログラム」など20以上のコンテンツを集約したほか、チップ摩耗改善や他社相当品検索、切削動力の計算などの機能も提供する。タンガロイは新たに「ツールナビゲータ」を提供している。最適な旋削加工用材種とチップブレーカや高送り加工に使用する工具の検索など、同社が推奨する工具を発見できる。

 京セラは切削工具のデジタルソリューションに力を入れ、クラウドサービス「ToolsUnited」に参画。ISO13399に準拠した工具情報や2D/3Dモデルの利用を可能にしたほか、削る前に解析技術を駆使して切りくず形状の予測など、実加工前にトラブルを回避し、ユーザーの生産性向上を図っていく。三菱マテリアルも「計算式アプリ」を用意。ねじ切りや穴あけ、フライスなど数値を入力するだけで主軸回転数や切削速度を簡単に計算できる。

匠の技能を補う 

加工データを自動で修正 −研削の指示、ボタン一つ−

ボタンひとつで全自動研削ができる「SELF」

 少子高齢化を背景に、技能伝承が課題となっている日本のものづくり。新人への指導にかける手間と時間が十分になく、一方、ベテラン技術者は定年を迎え現場を去っていく。そんな「熟練技能者の不足」を補う技術がここ数年、登場している。

 岡本工作機械製作所の全自動平面研削システム「SELF」は、総取代を入力するだけで加工条件などを導き出し全自動で研削する。加工の負荷や熱、振動などにも適応して加工条件を補正し、その情報は機械のメンテナンスにも生かせる。従来はワークの段取りや位置決め、加工条件の入力、ワークを外して測定、仕上げなどの作業が必要だったが、「SELF」はこれらのプロセスをボタン一つで行える。熟練者が持つ「操作のノウハウ」が無くても、高精度に加工できる。

 マシニングセンタに送った加工データの不具合を自動で修正するのは、オークマの「Hyper‐Surface」。加工データの指令位置のバラつきを補整、さらにコーナー部の加工パスの通過速度を揃える。これにより送り速度が安定し、加工品質が向上する。これまで加工した後、熟練者が手作業などで仕上げていた「磨き」の工程を大幅に短縮できる。

 ジェイテクトがこのほど発表した高精度ロール研削盤「GR7i‐400ULTIMATE」は、搭載したAI機能でロールのテーパを自動で修正する。従来は熟練技能者の手で測定し修正していた。しかしこの作業を自動化することにより作業時間を短縮でき、誰でも簡単に研削加工をできるようになった。

 

日本産機新聞 2021年2月5日

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