2024年4月26日(金)

【新春販売店座談会】第2部 魅力ある業界にするため必要なこと②

コト提案でなくコト売りを

司会 ところで、IoTの案件は、機械工具商社に声はかかりますか。

井口 こちらから話かければ声はかかりますが、話しかけないと声はかからないですね。

淵本 だから、当社の展示会には必ずIoTシステムを出展しています。ソフトやシステムは必須ではないかなと感じています。

藤生 どのようなのものですか。

淵本 本当にシンプルに、稼働率の「見える化」などですかね。

井口 そんな感じですよね。規模に関わらず、意外と監視稼働もやっていないところも多いです。

藤生 小規模でも情報収集に熱心な経営者がいるような会社の方が進んでいるケースも多いかもしれないですね。当社の提案としても、IoTの案件だと、表示灯メーカーのパトライト様(大阪市中央区)と協力して作った稼働監視システムがあります。

淵本 IoTの案件はどのくらいの頻度でありますか。

藤生 そう多くはないです。ただ、自社展示会開催後などの短期的なところでいけば、10件くらいの引き合いがあったといったところでしょうか。大手からも数社引き合いが来て、販売につながったこともありますね。

司会 根岸さんにもお聞きしましたが、教育はどうしていますか。

藤生 当社が販売しているシステムについてはパトライト様と一緒にやったこともあり、教わる先はありますし、導入すると画面で見て分かるので、そこまで専門的な知識が必要なものではないと思っています。

協業に活路見出す

司会 しかし20年前は工具や機械だけで良かったものが、IoTやAIなど顧客の要望に応えるために、すべきことや学ぶことが広く深くなっていますね。取捨選択は必要じゃないですか。井口社長はロボットを始める時、専任部署にしましたよね。それも意図があったのですか。

井口 営業商品の一つとして扱っていたのですが、工具を販売する営業にロボットをさせても、既存の顧客しか回らないし、回れない。違う顧客や業界にアプローチしようと思う難しいので切り分けたわけです。

淵本 そう考えるとどこかとアライアンスを組むのも必要かもしれません。

司会 そうだと思うんです。直需商社のビジネスはローカル色が強く、求められることも多岐にわたると思います。同業だけではなく、異なる業種と手を組むとかはできないのでしょうか。

淵本 そういう風な動きをしているところもありますよね。

藤生 井口さんもご指摘されていましたが、エンジニアリングに強い会社が営業に強いとは限らない。エンジニアリングに強くても営業がない会社があれば、組んで仕事をする方法もあると思うんです。協業で、メーカーさんが求めていることを満足させることができればユーザー様や自社にとってもベストですね。

井口 協業ではないですが、加工業者を知らないかという依頼も多いので、加工受託とかもビジネスになりえるかもしれないですね。根岸社長が言われたようにニーズがあるようですし。

司会 受託ではないですが、加工業者同士をつなげて、マッチングするサービスも増えています。そうしたビジネスはできないのでしょうか。現場を誰よりも知っているのは皆さんですし。これまで無料のサービスのようカタチでしていたとは思うのですが。

淵本 そのニーズは間違いなくあると思います。製造業は隣県ですらもコネクションが無い。当社は新潟と長野のお客様に集まって頂き、情報交換する場を設けているのですが、隣県でも、ほぼコミュニケーションが無い。その壁を突破することができれば何かできるのかもしれない。ただ一方で、間に入ることで、補償の問題などのリスクも発生するので、ビジネス化をどうするか考える必要があるでしょうね。

風通しの良い企業、業界に

司会 人不足が業界でも話題になっていますが、魅力的な業界であることが人材確保のためには重要です。魅力的な業界にするにはどんなことが必要でしょうか。もしくは自社で取り組まれていることなどを教えてください。

根岸 業界だと大きな話になるので、自社の話をさせてください。長く勤めてもらうというのが成長につながると思っています。また、当社も創業時から「人を大切にする」ことが不変の部分で、そこにはかなり力を入れています。幸いにして定着率はかなり良いと思います。

司会 そのための取り組みはありますか。

根岸 とにかく、働きやすい環境を整えることですね。社内の風通しが良くなければそれがストレスになり、仕事への意欲もマイナスになるので、意見をとにかく言って欲しいと思っています。その声に必ず耳を傾け、リアクションを取っています。その一つとして、毎日手書きの日報のやり取りをしています。「何もなければ何もないでもいいから」と言っています。

司会 手書きですか。

根岸 私も毎日手書きで戻しています。営業担当が10人程度だからできるのだと思いますが、些細な事でもちょっとした一言でも何かしら書いていればコメントし、必要があれば共有することを心掛けています。

司会 すんなりいきましたか。

根岸 当初は「言ってもどうせ」という雰囲気もあったので情報も上がってこなかったですが(苦笑)。「言ってくれればリアクションします」と伝えた結果、何かしら毎日書いてくれるようになりつつあります。時間はかかりますが、一言二言でも返すことで心の距離を保てているのかなと思います。そうしたことを積み重ね、問題や異変があればすぐに手を差し伸べることができれば、お客様で問題があった時も対応が早くなると思います。社内の風通しを良くすることで、お客様に訪問できなくても、お客様の情報が良く見えてくることもあります。

司会 井口社長は魅力的な業界にするために何が必要だとお考えですか。

井口 マーケットを広げる努力も必要だと思いますね。お客様が海外に移転し、金属加工が減っているとなると若い人には魅力的に映らない。海外に出たり、ネットに注力したり、何かしら魅力的なことをしないといけないと思います。もう一つがPRも必要だと思うんです。分かりづらい業界なので、宣伝活動や人材募集の時には分かりやすく説明しています。応募者の方には、営業先には購買や生産技術などの部署があって、一日どのくらい営業して、社内で何をするかなど細かく説明することを心掛けています。

司会 井口社長はIT業界出身ですが、業界の古さは感じませんでしたか。

井口 当社もですが、60年~70年前の創業が多いので、「昭和の香り」がする企業が多いですね(笑)。入社すれば慣れるんですが、見栄えだけではやはりIT企業に分があるので古さを刷新する努力をしています。本社も建て替えたのですが、機械工具という感じを無くしました。また、紙を減らす取り組みとしてワークフローシステムを導入したり、手形も来年から電子化したりしますし、マーケティングツール見込み顧客育成の半自動化を図っていきたいと思っています。

司会 淵本社長はどう考えていますか。

淵本 私が今考えているのは評価の在り方ですね。経営者ですから数字は当然大事です。達成率など定量的なものは仕方ないと思うんです。しかし、お客様の将来のためにする地道な種まきなどもの定性的な作業も評価されないとダメだと思っています。すぐに数字にでなくても、お客様への貢献度や、内勤の人でも会社に対しての貢献度のようなものを評価していくべきだと思っています。あとは、井口社長も言われましたが、業界特有の「雰囲気」ですかね。味があっていい部分もあるんですが、業界全体がもう少しスタイリッシュに垢抜けてもいいかなと思いますね。(笑)。

司会 藤生社長は魅力的な会社や業界にするために何が必要と思いますか。

藤生 5年前会社を継いだ時に、真っ先に思ったのが、根岸社長と同じく、風通しを良くしたいということでした。中途採用で面接に来た人になぜ前職をやめたのか聞くと、理由として多いのはやはり人間関係でした。なので、長く勤めてもらうためには風通しを良くすることが大切だと思います。あとは皆さんのお話をお聞きして、各社の風通しはそれぞれの努力でできると思うのですが、業界全体の風通しの良さも必要かなと思ました。

司会 良い方法はありますか。

藤生 我々の業界は、販売する地域、商品が重なり競合すると、本当の意味で仲良くできなかったりすることも正直あると思います。でも、たとえば今日のように、業界について議論したり、コミュニケーションや情報交換をすることはとても大切だと思いました。同じ悩みを抱えている経営者同士が本音で話をすれば、そこから何か答えを見出せるかもしれませんし、今日のようなコミュ
ニケーションがとれる場を設けて、顔を突き合わせて、真剣に話せる人を増やしていけば魅力ある業界につながるのではと思います。 (

日本産機新聞 2020年1月20日

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