2024年4月26日(金)

JIMTOF2014総集編 限りなく精密

自動化の極み

 国内最大の工作機械展示会「JIMTOF2014」(主催・日本工作機械工業会)が10月30日~11月4日まで東京ビッグサイトで2年ぶりに開かれた。切削や旋削、レーザーなどを組み合せたハイブリッド機や、知能化の機能を持つCNC装置、高速で耐熱合金を加工する工具など、ものづくりを革新する様々な新技術が登場した。個性豊かな技術が競演した6日間の軌跡を辿る。

 切削加工機 

多彩なハイブリッド機

 工作機械は見どころが盛りだくさんあった。多くの来場者は多彩な技術・機能に驚くばかり。キーワードは、“ハイブリッド” “機上測定”“新CNC制御” “知能化技術”“ファイバーレーザー”。既存の設備を入れ替えねば戦えない、と腕組みするものが展示された。
 まず、ハイブリッド加工機(複合加工機)。話題のアディティブ マニュファクチャリング(AM)と切削加工を複合したDMG森精機の「LASERTEC65 3D」、ヤマザキマザックの「INTEGREXi‐400AM」、ソディックの「OPM250L」は、部品の加工方法を変革させる提案となった。既に生産現場で使われている松浦機械製作所の「LUMEX」も含め、金属粉末で積層造形し、切削工具で仕上げる方法が注目された。複雑形状の金型の冷却水管や金型を分割することない。来場した金型メーカーの人は、「プラ型の入れ子製作に使えるかも」と興味を寄せた。
 さらにヤマザキマザックは1台で切削加工と摩擦撹拌接合をする「VTC‐530/20FSW」を出展。新たな用途を探った。レーザー加工と旋削を合体させたツガミ。医療機器分野の部品加工をターゲットに微細加工を提案した。
 牧野フライス製作所は微細精密加工機「iQ300」で工具研削から加工・計測までを一気に仕上げた。工具計測を計測し、砥石でPCDボールエンドミルを高精度に研削、鏡面加工した後はプローブで計測するという一連の工程をワンチャックで仕上げる。工程短縮の大きな武器となりそう。
マシニングセンタでギヤ加工(スカイビング加工)するメーカー(安田工業、ヤマザキマザック、ジェイテクト、オークマなど)が多かった。オークマはギヤ加工プログラムを簡単に作成できる「スカイビングギヤパッケージ」も開発した。従来の専用機でなく、汎用5軸・複合加工機でコストダウンに迫った。
 大阪機工のグラインディングセンタGC53Rは、1台でマシニング加工と研削加工を見せた。三井精機工業の立形複合研削盤「VGE20A」は、スプライン加工とねじ研削を高精度に仕上げる提案をした。 切削加工に様々な機能を追加することで大胆な工程短縮を実現することが可能となりそうだ。

 また、機上測定を殆どの機械メーカーが搭載した。工具径、工具長の計測からワークの形状測定、ブルームLMTの表面粗さ測定まで、測定室での計測をする前に機上で測定し、ワークを外すことなく補正加工をする。大幅な工程短縮に繋がる。
 新CNC装置が注目された。いよいよ頭脳部の大改革が始まった。DMG森精機の「CELOS」、ヤマザキマザックの「SmoothX」、オークマの「OSP suite」などはスマートフォン感覚で、直観的に操作する。若い人たちに受け入れられた。操作性の向上だけでなく、工程管理やデータ管理など加工を支援する様々なアプリケーションが追加された。
 また、知能化技術が付加価値を高めた。オークマの「シンクロドライビング」機能は、フライスカッタのチップの振れに応じ、各刃の切削負荷が同じになるように送りを刃毎に調整することで、チタン材など難削材の加工条件を上げるとともに、工具寿命を2倍以上に延ばした。5軸機の空間補正機能はじめヘッド動作の最適化など、経験の浅い若手でも熟練者と同等の加工ができるように支援するソフトが各社から多数提案され、ますます熟練技能者のノウハウが技術化されていくことが予想される。
一方で、熱変位補正が多い中で、三菱重工業の門型MC「MVR・Ex」は、コラムの中に液体を入れて、基礎から熱変位を抑える「サーモスタビライザコラム」は直角度の変化を極小化した。
 最後にファイバーレーザー。CO2レーザーが主流の中で、ファイバーレーザー加工機が三菱電機、アマダ、コマツ産機、トルンプ、エンシュウ、ツガミなどから紹介された。レーザー波長を微調整できるので精密加工に強みを発揮する。今後もファイバーレーザー加工機の市場が拡大することを予測させる。
 今回のJIMTOFにおける工作機械は、工程短縮・高付加価値化を実現するための新技術のまさに宝庫だった。見そびれた人やもっとじっくり見たい人は、各機械メーカーが各地でアフターJIMTOFを開催するので体感してほしい。

 放電加工機 

長尺ワークや超硬の精密加工

放電加工機_R

 超精密、高精度、超硬など、ワイヤも型彫りも放電加工でしかできない加工に特化する動きが顕著だ。
例えば複数のメーカーが展示していたのは長尺プレートの高精度加工。三菱電機の大型超精度ワイヤ放電加工機では、800㎜のストロークでXYのピッチ誤差が±1・5μの加工精度を実現した。西部電機やソディック、牧野フライス製作所でも700~800㎜までの同クラスのプレートを高精度に加工できるワイヤ放電加工機を展示した。
 放電加工で優位性の高い一つが超硬材の加工だ。GFマシニングソリューションズ(旧アジエシャルミー)は超硬材を面粗さRaで0.05μmの精度で加工できるワイヤ放電加工機を紹介。三菱電機は型彫り放電加工機で、超硬のべベルギアの中荒加工時間を3分の1に短縮した。高精度、超精密に加え、型彫り放電加工機に自動化提案を加えたのがソディック。エロワのロボットと組み合わせ生産性の向上をアピールした。
高精度仕様で言えば、ソディック、三菱、西部電機など多くの放電加工機メーカーで、水よりも加工精度が高い油仕様の放電加工機をラインアップに加えていた。
高精度や微細、大型化など高付加価値化が進む日本のものづくりには放電加工機でしかできない加工も少なくない。

 切削工具 

高硬度材や耐熱合金用の新型

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左:耐熱合金用のセラミック製ソリッドエンドミル   右:ミーリングで歯車を加工

 切削工具は、焼き入れ鋼や超硬合金などの高硬度材やチタン・インコネルといった耐熱合金を加工する工具の新型が登場した。一方、加工効率を一段と高めたり、従来にない加工法の工具も紹介された。
 高硬度材加工工具は、住友電工や日進工具、彌満和製作所などが出品。住友電工や日進工具は、刃が欠けることなく超硬を鏡面加工できる多結晶ダイヤのエンドミルを展示。彌満和製作所は焼き入れ鋼にねじ立てできるタップを紹介した。
 耐熱合金用工具の新型としてセラミック製のソリッドエンドミルを出品したのは三菱マテリアルや日立ツール。耐熱性を活かして送り速度を高め、チタンなどを従来の工具よりも約10倍の速度で加工できるという。
 一方、オーエスジーやタンガロイ、ライノスは効率を高める工具を出品。オーエスジーは耐摩耗性や切れ味を高めたタップ、ドリルの「Aブランド」をアピール。タンガロイは高速回転スピンドルにより時間短縮する加工技術を紹介。ライノスは小径穴やクロス穴のバリ取りを効率良く処理する工具を提案した。
 また、サンドビックやセコツールズ・ジャパンはミーリングで歯車を加工する工具を、エムーゲ・フランケンは穴に刃部を挿入したのち逆半回転で一気にねじを加工するタップを紹介するなど、これまでにない発想の工具も登場した。

 研削盤 

切削やロボ組み合わせ自動化

 加工の最終工程で、人の手が必要だった研削盤でも無人化や自動化がテーマとなった。マシニングセンタやロボットを組み合わせるなど複合化による工程集約や機上測定を搭載し、安定した高精度加工を実現する機械が展示された。測定機を自社開発するなど、今後は精密加工の精度保証も注目となりそうだ。
 アマダは5軸マシニングセンタと研削盤の複合加工機「MX150」を展示。1分間に最大42000回転の高速主軸で超硬や焼入れ材の切削と研削の微細加工ができる。プロファイル研削盤「DV1」にはロボットを取付け、ワークや砥石の無人交換が可能。職人作業の自動化や複合化による工程集約で生産性を向上させる提案がされた。
 岡本工作機械製作所はほとんどの展示機種に機上測定を搭載。2スピンドルのプロファイル研削盤「UPZ210LiⅡ」は砥石をCCDカメラで監視し、安定した加工を実現。作業者ごとのバラつきを無くす。複合円筒研削盤「UGM360NC」はタッチプローブでワークを計測。工程短縮で生産性を向上する。
 少し変わった動きを見せたのがナガセインテグレックス。機上測定を搭載した新型の小型研削盤のほか、2㍍以上の大型ワークを0・25㍈㍍の精度で測定する真直度測定機「SMU‐01・02」を披露した。「超精密加工をいかに保証するかが課題」と新たな展開を匂わせた。

  測定機器 

非接触、機上の性能向上

 測定機の分野では、レーザーやカメラを使った非接触で効率良く測定できる新型が目立った。一方、工作機械の中で測る機上測定では、接触式で測定精度と速度を追求した製品が展示された。生産拠点の海外シフトなどで品質保証の重要性が増し、来場者の関心度も高かった。
 東京精密は非接触で表面粗さを3次元測定する白色干渉計顕微鏡「Opt-scope」を初披露。従来の触針式に比べ、測定時間が200分の1に短縮する。ミツトヨは、記録図形を作らず、誰でも簡単に測定できる2次元画像測定機「クイックイメージ」を展示した。カールツァイスは、非接触式センサとロボットを組み合わせた計測装置を実演。溶接後の車体を効率的に検査・測定できる。
 機上測定では、課題だった無線通信技術の改善により、測定精度が向上。レニショーはワークを倣い計測するスキャニングプローブを出品。ブレードなど自由形状が測定できるほか、幾何学形状も従来比約20倍の速度で測定できる。ブルームLMTも表面粗さを測る接触式プローブを展示した。
 生産拠点を海外に移す企業が多く、品質の均一化が求められるなど品質管理の重要性は増している。出展メーカーは「来場者の測定に対する関心が高く、以前にも増してニーズは高まっている」と手応えを感じていた。

 金属3D造型機 

ものづくりに未知の可能性

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左:金属粉末を焼き固めて形状を造る   右:金属3D造型機

 大きな注目を集めたのがアディティブ マニュファクチャリング(AM)と呼ばれる金属3D造型機だ。これまで注目されていたインクジェット式3Dプリンタとは違い、金属粉末をレーザー光で焼き固めながら、切削加工で仕上げていくハイブリッド加工機(複合加工機)として登場した。DMG森精機の「LASERTEC65 3D」、ヤマザキマザックの「INTEGREXi‐400AM」、ソディックの「OPM250L」は、部品の加工方法を変革させる提案となった。
 既に生産現場で使われている松浦機械製作所の「LUMEX」も含め、金属粉末で積層造形し、切削工具で仕上げる方法だ。複雑形状の金型や冷却水管など製作可能だ。
 来場した金型メーカーの人は、「プラ型の入れ子製作に使えるかも」と興味を寄せた。
そもそも3Dプリンタはどんなことに使えるのだろうか。基調講演を行った東京大学・生産技術研究所機械・生体系部門付加製造科学研究室の新野俊樹教授は「3Dプリンタの未来像」のテーマでその可能性を語り、「見たことがないものを作る」、「意匠性の高いモノ」、「機能性の充実」を挙げた。今回披露された機械メーカー各社の3D造型機を使えば、複雑形状の部品や深リブなど部分的に強度を加えることが可能とされ、航空機関係の企業から試作の依頼もあるという。
 モノを作る方法は大きく変わろうとしている。今後見たことがない形状、製品を目にする日は近いかもしれない。

 来場者アンケート 

金属3D、スカイビング工具 新たな加工技術求め

アンケート

 日本産機新聞はJIMTOF2014で「興味を持った出展製品」をテーマに来場者にアンケートを実施した。出展ブースでのヒアリングや本紙発刊の「ポケットガイドブック」で、機械工具商社や自動車・電機・金型メーカーなど105人から回答を得た。
 回答でとりわけ多かったのは「工作機械」(39%)や「切削工具」(25%)。全回答の約65%を占め、それぞれの上位3品目は「①MC②NC旋盤③レーザー加工機」「①エンドミル②ドリル③超硬工具」だった。
ヒアリングした自動車部品メーカーのエンジニアは「加工での品質やコストのカギは工作機械と工具。自らの目で新製品を見たかった」。
 次いで多かったのが「金属3D造型機」や「スカイビング工具」など次世代の加工技術。金型メーカーの社長は「金属3Dの金型への利用法や、ものづくりへの影響を知りたかった」。工具商の営業部長は「スカイビング工具や難削材工具など次のビジネスにつながるヒントを探りにきた」。
 ただ、ヒアリングでは工作機器や測定機器への興味をうかがわせる答えも。電機メーカーの技術者は「新規設備投資の予定はない。新たな治具や測定機で製作時間の短縮や品質向上を図りたい」。

日本産機新聞 平成26年(2014年)11月25日号

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