2026年11月5日(木)

「わかりません」は悪くない【現場考】

相互の理解を深める好機

入社以来40年にわたり、工場の自動化に携わってきた生産技術者にエンジニアリング会社を選ぶ際の極意を聞いた。「自社でどうしていいか分からない難しい技術を相談した際に『(前向きに検討していてもできるかどうか)わかりません』という会社のみを選ぶ」という。「できます」と即答する企業は絶対に選ばないそうだ。「できる」と答えた会社は経験上「100%上手くいったことがない」からだ。

その理由を次のように分析している。「『できます』と回答されると、大抵の場合、こちらも一応安心して、コミュニケーションを終えてしまう。しかし、難しい技術なのだからそんな簡単にできるわけがない」。

一方、「わかりません」と答える会社は「分からないからこそ、細かく聞いてくる。『なぜできないのか』、『どこに課題があるのか』と詰めることになる。結果、情報を多く持つことになり、可否判断の精度が高くなり、実際にできることが多い」。

「判断」は管理職の業務の一つで、そのために情報は重要だ。ただ、常に正しく判断できる情報があるとは限らない。むしろ、完璧にそろっていることの方が少ない。だから、後輩や上司から多くの情報を集め、判断の精度を上げる必要がある。

ある販売店の部長は「『報・連・相』を徹底していても、否定的な情報ほど上がってこない」と話す。人の心情として、マイナスな情報や自らが理解していないことは報告しづらいものだ。

だから「わかりません」と言われた時にこそ、コミュニケーションを深め、情報を集めるチャンスなのだ。まずは「わかりません」と言ってもらえる心理的安全性を確保する環境づくりが重要だ。

「わかりません」と言うことは、後輩や部下からだけでなく、管理職にこそ重要な姿勢だ。「わからないから、詳しく教えて」。管理職から問いかけることで、心理的安全性が担保されやすくなり、相互理解は深まる。

日本産機新聞2026年7月20日号

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