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アルミ加工特集
〜自動車部品の現場を訪ねて〜
榊原精器 (愛知県西尾市)
効率と品質の「ダントツ工場」
試作〜量産の一貫生産
アルミは加工しやすい材料と言われながらも、難削材の1つに数えられる。アルミ切削加工で豊富な経験を持つ榊原精器(愛知県西尾市)は、自動車部品のオルタネータ部品などで得た経験とアルミの特性を良く理解した上で、切削工具の使い方、切削時の加工条件、治具の設計などに応用し、正確な加工を行うことで、産業用ロボット部品やブレーキ部品など、様々なアルミ加工に役立てている。電気自動車など自動車産業が大きく変化しつつある未来を見つめ、材料開発や試作から量産まで請け負える一貫生産体制を構築するなど、新たな取り組みも始めた。
榊原精器はアルミダイカスト製品やアルミ鋳物部品、アルミ総切削部品などアルミ部品の切削加工を得意とする。製品は自動車のオルタネータ部品を主力に、産業用ロボット部品や金型・砂型鋳造部品、鉄鋳物部品など全加工の85%がアルミ加工で、量産部品から多品種少量生産まで手掛ける。工場は本社工場(愛知県西尾市)とタイ工場(鋳物部品が主)があり、本社工場の生産能力は、オルタネータフレームの切削加工で150万個/月、その他に鋳鉄・樹脂部品など50万個/月生産できる能力を持つ。近年は新規開拓にも力を入れ、メディカルメッセなどに出展し、医療機器部品も手掛けるほか、排気ガス処理システム「尿素SCR」という自動車の新たな部品にも取り組んでいる。
歪ませないアルミ加工
アルミの特性は鉄に比べ、軽くて柔らかく熱伝導性が高いことが挙げられる。この熱伝導性が加工時に大きく影響する。切削では加工による歪みや、切粉が製品に噛むことによるムシレ(切粉の問題)、刃物の溶着など、アルミの特性である熱伝導や温度変化によるトラブルが多い。同社はこれまでのアルミ加工で培った豊富な経験を活かし、自動車部品で多く採用されているアルミ合金のADC12をはじめ、強度など異なるアルミ合金に対し、切削工具はDLCコーテイングを施した工具や専用工具(試作製作用)などを使用することで工具トラブルを抑え、加工では1℃変われば寸法が1/100㎜台変化すると言われる温度の影響を十分考慮し、機械の高圧クーラント仕様や最適な加工条件の随時調整、押え過ぎず微妙なバランスを取った治具など、細心の注意と工夫を凝らす。試作品で使われる切削工具の60%は特殊工具で、量産加工では主に汎用工具を使用する。同社はアルミを『変化するもの』と捉えており、加工担当者は「素材形状にあった加工の受け(基準)と押えの位置を工夫し、最適な加工条件で切削しないと簡単に歪む」と、加工ノウハウの重要性を説く。同社では機械のオペレータが熱による変化を予測し、刃物の入れ方、加工条件、クーラントのかけ方などを考え、ミクロン台の精度が要求される正確な加工に反映させている。
ムダをなくす取り組み
本社工場はマシニングセンタ107台、NC旋盤125台、多軸ボール盤104台など量産設備と5軸加工機2台、マシニングセンタ7台、複合CNC旋盤2台など試作設備があり、検査用の3次元測定機4台など充実。
同社が目指すのは『ダントツ工場』作り。設備の統廃合と工場内物流の効率化を進めながら、生産性向上と設備費の低減を図る。「今は社内物流の改善に取り組んでいる。倉庫などムダを見直し、18%のコスト削減を目指す」と榊原利夫社長。ラインの統廃合で「ムダ・ムラ・ムリ」を排除しながら設備を省スペース化し、空いたスペースに新ラインも構築できる。今後、電気自動車など自動車業界の変化も見据え、オルタ―ネータ部品以外にブレーキ部品や電動パワーステアリング部品、異業種では医療機器関連など、新規開拓も積極的だ。営業購買部の川上喜嗣部長は「これから自動車も変わる。同じ車でも必ず必要となる部品を手掛けなければならない」。
試作~量産までを可能にした精密砂型
同社は数年前より量産部品のみならず、材料から製品まで手掛ける一貫体制や試作から量産まで請け負う一貫体制の構築を図ってきた。そのため、試作加工部隊を設置し、切削プログラムの削減やテスト加工など切削方法から最適なアルミ材の開発(含有元素など)、成形方法(スクイズ方式ダイカストなど)技術提案を行うほか、SSK会という同社の協力会社とも密に連携し、顧客の満足度を高める戦略だ。顧客の短納期化ニーズでは、製品設計段階から参画し、シミュレーションを活用しながら加工の問題点を全て洗い出し解決することで、型製作、成形、切削まで工程を円滑に進め、短納期化を実現した。砂型ならモデリングから製品納品まで最短7日、金型でも最短30日で納品した実績を持つ。
また、新たな技術に精密砂型(特許)の開発。砂型でありながら、アルミ鋳造でアルミダイカスト品と同等の鋳肌面や量産に限りなく近い形状にできる。これは砂型の材質を変え、海砂の細かな粒子を採用し、ガスで固めて使用することで実現した。これにより、試作段階から量産時と同じアルミ材質と形状をテストすることも可能になる。
自動車部品は材質の変更など動きが激しい。今後の自動車部品のアルミの動向について川上部長は「熱に強い特性から樹脂部品からアルミに切り替わる部品もある。キャップや樹脂ボックスは熱の影響で摩耗するため、アルミ材に切り替わっているケースもある」という。さらに、従来複数あった部品の一体化で部品の大型化が進んでいる。時代の変化を素早く捉えるために、同社が掲げる顧客への合言葉は「スピードでは他社に負けません!情熱を持って作ります」と、他社には出来ない短納期化や技術開発で顧客に感動を提供する。
ムダ見直し工場刷新
「ムダ・ムラ・ムリ」を排除
榊原 利夫社長
『ダントツ工場作り』をテーマに、設備の統廃合を進めている。これは生産性向上とコスト低減を図るためで、特に社内物流の改善に力を入れており、18%のコスト削減を目標にしている。ダラリの法則とも呼ばれる『ムダ・ムラ・ムリ』の3ムを徹底的に排除し、倉庫など常に運搬動作を把握することで、モノの移動距離を短くし、ラインを省スペース化させることができれば、空いたスペースに新しいラインも導入できる。
工具商に望むこと
新たな技術を早く コスト減の提案を
川上喜嗣部長
アルミ加工において刃物は重要で、新技術や新商品を早くタイムリーに情報がほしい。ジェネリック製品のように刃物類も現在使用している品質と同等でコスト減につながる製品やサービスがあるはず、工具のリサイクルなど循環型サービスなど様々な情報を提供してもらえたらと思う。
また、工場現場の困り事を聞き、解決方法を提案して頂きたいほか、アルミ特有の問題であるバリや切粉処理も含め、トータル的に最適な工具・機械の提案してもらうとありがたい。
会社メモ
代表者:榊原利夫社長
設立:1973年
資本金:9,800万円
従業員数:240人
営業品目:自動車用オルタネータ部品、産業用ロボット部品、ブレーキ部品、電動パワーステアリング部品などのアルミダイカスト部品やアルミ鋳物部品など。
所在地:愛知県西尾市花蔵寺町五貫目東48番地
日本産機新聞 平成29年(2017年)4月25日号
TONEは、本社を同社最大拠点である河内長野工場に統合、移転した。9月26日から業務を開始した。 今回の統合により、開発、製造、営業企画、品質保証、管理の各部門と経営を一体化。部門間のコミュニケーション向上を図り、一層綿 […]
ツーリングメーカーのエヌティーツール(愛知県高浜市、0566-54-0101)は福岡県筑紫野市に九州事務所を開設し、九州地域での迅速かつ細やかなサービスを提供することで顧客の課題解決に応えていく。住所は福岡県筑紫野市原田 […]