2026年11月5日(木)

部下の心理的な安全を守る【現場考】

組織運営で会議は重要なファクターだ。アイデアを集め、選び、決める。採択した内容がときに組織の成長や進化に大きく結びつく。では会議で管理職はどのようなことを心掛けるべきか。あるメーカーの製造部長は「部下の立場を守ってあげること」と話す。

それには課長時代の苦い経験がある。製品のリードタイム短縮に取り組んでいた。原因のひとつが協力会社の生産性の低さだった。それなら効率改善の技術を指導すれば。部長に提案すると良いアイデアと褒められた。次の幹部会議に出席し進言してみると良いと勧められた。

ところが社長の反応は芳しくなかった。指導するヒマがあるなら社内の効率をもっと高めろ。蓄積してきた独自のノウハウが流出する。すがる気持ちで部長を見たが、社長に追従し助けてくれなかった。理解されにくそうな意見はもう発言しない。この会議を境に殻を閉じた。

しかし部長が代わり転機が訪れた。新任の部長は会議で部下の立場を守ってくれた。アイデアを採用してくれることは少なかったし、浅慮を注意されることもあった。しかし必ずひとつの意見として認めてくれた。会議は自由闊達に考えを交換する場となりダイナミズムを増した。

自分も、そして部下も平等に立場を損なうことがない。それが嬉しかったし、安心できた。ほかの部との会議では上司やほかの部長から部下を守る。自らの部の会議では部下のどのような意見も発言を認め、議論する。課長時代の経験から、今はそういう考えで会議に臨んでいるという。

仕事に意欲が少なく自らの考えを発言しない。新奇性に乏しくアイデアが常識の枠に留まっている。管理職は会議でのそんな部下の姿勢に頭を悩ませる。しかしその原因は会議の心理的安全性にあるのかもしれない。そしてその状況を生み出したのは管理職である。

日本産機新聞2026年6月5日号

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