2024年11月22日(金)

機械工具商社14社のトップに聞く-今年取り組む3つのこと-

昨年は新型コロナウイルスの影響により、世界中の経済に大きな打撃を与えたが、今年に入り、中国や米国など海外を中心に回復が目立ってきた。国内では半導体や電気自動車、DXといったデジタル化、脱炭素社会に向けたカーボンニュートラルなど次世代に向けた取り組みも徐々に広がっており、コロナ後の世界が少しずつ浮き彫りになってきたところだ。そうした背景をもとに、本特集は卸商社14社に、今期重点を置く具体的な取り組みや内容を取材し、機械工具業界の次なる一手を探る。

目次

PART01:エバオン 前西 衛社長
PART02:Cominix 柳川 重昌社長
PART03:サンコーインダストリー 奥山 淑英社長
PART04:シミヅ産業 清水 善徳社長
PART05:Joyful喜一ホールディングス 田中 健一社長
PART06:大喜産業 森口 博之社長
PART07:鳥羽洋行 鳥羽 重良社長
PART08:トラスコ中山 中山 哲也社長
PART09:NaITO 坂井 俊司社長
PART10:西野産業 西野 佳成社長
PART11:日伝 福家 利一社長
PART12:前田伝導機 耕 善一郎社長
PART13:山善 長尾 雄次社長
PART14:ユアサ商事 高知尾 敏之常務

PART01

エバオン 前西 衛社長

商品を間違いなく届ける 

今年取り組む1つ目は、注文頂いた商品を間違いなく届ける体制をつくること。卸商社にとって当たり前ともいえる「商品を正確に送り届ける」ことを確実にできるようにしていく。

というのも、ここ数年、受注とは違う商品を出荷したり、納期に間に合わなかったり、出荷ミスが起こっていた。その原因は、取扱商品を増やし続けたことによる本社と東大阪の倉庫の在庫量のキャパオーバーだ。

倉庫にある商品の種類が多すぎて間違える。在庫の量が多すぎて商品が見つからない。起こるのはごく希とはいえ、そんなケアレスミスを引き起こす物流の現場になっていた。

そこで一昨年、浜松に新たに物流センターを開設した。ここに本社と東大阪のキャパを超えた在庫を移管、今年8月にもその作業を終える。これにより3つの倉庫で、出荷作業を効率良くできる環境を整える。

一方、これまでのミスの原因と改善する方法も分析していく。物流における様々なデータや作業現場の声を吸い上げて、会議を重ねてより良い改善策を導き出したい。在庫はエバオンにとって大きな競争力の一つ。それをより生かせるようしていく。

働き方の多様性

色んな働き方ができる会社にもっとしていきたい。例えばその一つがテレワーク。コロナ禍で感染対策の一環として推進してきたが、これからの平時においても働き方の一つとして続けていきたい。

それが常態となれば、夫の転勤で引っ越ししても継続して働けるし、子育てしながら余裕のある時間だけ勤務することもできる。社会生活などの変化による影響を受けず、培った技能や知識を生かして働ける。

当社は高齢者の雇用に力を入れている。それは、人生を通じてエバオンで働き、幸せを感じてもらいたいから。もっと働き方の幅を広げることで、ずっと働いてもらえる会社にしていきたい。

SNSで情報発信

ツイッターやインスタグラム、フェイスブック。そうしたSNSを活用し、会社の活動に関する情報を発信していく。エバオンという会社を世の中のより多くの人に知ってもらいたい。

その効果の一つとして期待しているのが人材採用。今の10代、20代の若者が就職する企業を探すとき、SNS上の情報は、その判断基準の一つとなっているという。人不足で向かい風が吹く中、採用を手助けしてくれるツールとならないだろうか。

PART02

Cominix 柳川 重昌社長

切削工具のネット販売

今年は切削工具のネット販売をさらに伸ばしたい。昨年10月に切削工具販売サイト「さくさく」を立ち上げた。このサイトで取り扱う独自ブランド「さくさく」の切削工具の販売を増やす。

「さくさく」で取り扱うのは、低価格帯の汎用的な切削工具。旋削・ミーリング用のインサートやホルダ、カッタ、ドリル、エンドミル、タップなどで、金属加工で幅広く使われる3千点を揃えている。

ターゲットとしているのは、訪問営業し切れていない小規模のユーザーや切削工具の使用頻度が極めて少ないユーザー。稀にしか買わないが、工具を効率良く探し購入したい—。そんな市場に潜在する需要を取り込みたいと考えている。

「さくさく」は、工具の分類や用途に応じて求める工具を検索しやすいのが特長。工具はそれぞれのスペックに加え、加工動画や当社設備での実証実験による推奨加工条件なども閲覧できる。切削加工に関する情報を充実させており、近く掲載商品を2~3万点に増やす予定だ。

あらゆるものがネットで買える時代になり、その波は切削工具にも広がっている。特に20代や30代と世代が若いほどネット販売への抵抗は少なく、これからその動きはさらに進む。「さくさく」の年間売上高をまず1億円、いずれ10億円に増やしたい。

海外の市場を開拓    

海外の市場開拓をさらに進めていく。海外にはかねてから進出し現在、中国や東南アジア、北中米、欧州など10カ国(32拠点)に展開している。最新の工具と加工技術による生産性の向上—。日本で培ったこの技術提案を海外でも展開し需要を開拓していく。

自動車の電動化などで日本の工具や設備需要は回復しつつあるが、それを上回る勢いで海外の市場は拡大している。コロナ禍とはいえ中国ではそれ以前の活況を取り戻しているし、北米の市場も回復している。

また、自動車の電動化に関連する部品の生産コスト低減のために海外に生産移管するケースも増え、それが拍車をかけている。現在(2021年3月期)海外の売上高は39億円だが、これを近く50億円にのばしたい。

耐磨工具と光製品も伸ばす

パンチやダイスをはじめとする耐磨工具は電気自動車の電池向けの需要が今後拡大しそうだ。一方、光製品は8K映像を伝送する機器など次世代技術に対応する製品の需要が伸びそうだ。市場の動きを捉え、耐磨工具や光製品も伸ばしていきたい。

PART03

サンコーインダストリー 奥山 淑英社長

小さい労力で大きな成果生む営業

今考えていることの一つが「小さい労力で大きな成果を上げられる営業活動の創出」ができないかということ。極端だが、シンプル化すれば、売上=行動計画(訪問回数や時間、時期など)×Xという方程式が成り立つと思う。行動計画は日報などから把握しているが、Xの要素を見つけ、行動計画との相関が分かれば、冒頭の仕組みは可能だと思う。

ただ、小さい労力というと、コロナで外勤の営業が難しい状況もあったので、営業を無くして利益を上げれば良いと言う人がいるがそうではない。

例えば、以前は訪問回数の多い御用聞きが行動計画の中で、8割程度の需要度を占めていたかもしれない。今はその割合は以前より低い。しかし、方程式の重要な変数であることは間違いない。また、Xは一つではないかもしれないし、成果を最大化させるためのバランスが重要なのだと思う。

ただ、その方程式は完璧なものでなくていいし、営業の参考値であればいいと思っている。例えば、そこから火曜日の夕方に訪問すれば受注の可能性が高いといったことが分かれば、それだけで営業は動きやすくなる。このように、営業活動をサポートできるものにしたい。

価格の最適化

一つ目の取り組みとも関連するが、最大の販売を生み出すための価格の最適化にも取り組む。過去のデータから価格と数量の関係をみると、安ければ最大化するのではないことは分かっている。全ての製品ではないが、その価格がある程度の幅に収まることも明確になってきた。

ただ、最適価格を算出できたからと言って、採用するかどうかは未定だ。あくまで見積りの際や、販売時の参考価格にとどめようと思っている。機械的に価格が決まるとなると働く人は単純に「面白くない」。最も手間がかかる価格決断までの時間を短縮できる参考数値であればいいと思う。

物流業務の効率化

来年東大阪物流センターで稼働する小箱の自動ピッキング倉庫の準備を進めるなど、引き続き物流業務を強化する。自動化自体は珍しくはないが、今主流の自由に品物を配置するフリーロケーションではなく、決まったところに配置する固定ロケーションにした。また、類似商品を近くに配置しないのも物流の常とう手段だか、これも廃止した。

ねじという製品の特性や、作業者の動きを考慮すると、そちらのほうが効率的な作業が可能だったからだ。小箱の自動ピッキングだけでなく、継続して物流業務の効率化は進めていく。

PART04

シミヅ産業 清水 善徳社長

物流機能のさらなる強化

商社の大きな役割の一つは、「お客様が求める商品を、すぐに届ける」こと。その役割を果たすために、物流機能をこれまで以上に強化する。

当社の強みである豊富な在庫を活かすことに取り組んできた。その一環として、北関東物流センターを新築移転。床面積も5・5倍に拡大して、今年の6月に営業を開始した。

これまでは東大阪の物流センターを中心に在庫を管理しており、ロングテール商品を東日本に商品を届けるには時間を要した。今回、北関東物流センターを拡大移転したことで翌日の午前中には、西日本と東日本のそれぞれに核ができた。

今後は北関東物流センターの在庫もより充実させ、日本全国どこでも、従来以上に迅速に商品を届けられるようにする。

製品・提案の充実 

取り扱う製品や、提案の内容も充実させていく。切削工具については引き続き力を入れていくほか、自動化の需要が高まる中で必用となってくる油空圧機器の拡大に注力する。ロボットの販売には特に力を入れる。

当社は販売店様とメーカー様、SIer様、ユーザー様を有機的に繋ぐ架け橋となるべく、社員の育成にも注力している。昨年の秋にロボット専任の営業マンを2人選任し、ロボットメーカーやSIer企業に出向いて学んでもらった。その結果、2人ともプログラムを組めるまでになり、ユーザーが求める機能をより正確にSIer様に説明できるようになった。今後はこの2人を中心に、ロボット単体の販売ではなくロボットを含むシステム提案を行っていく。ただし、決してロボット有りきでなく、現場に最適な提案をするという使命を果たす。

また、ほかの営業マンの知識・技能向上を図り、いずれは全ての営業マンがロボットや油空圧機器にも詳しく、提案できる商社を目指す。

WEBでリアルを充実

コロナ禍を機に、新たな働き方が生まれているが、商社のベースが「人」であることは変わらない。例えば、定期的に行っている販売店様、仕入れ先様との会議などはWEBを活用し、お客様への提案は対面で行うなど。対面営業でお客様の期待を超える提案をする。販売店様や仕入れ先様と一緒に、お客様に感動を与え、感激して頂けることを目指す。

一方、当社の受発注システム「SHIMIZU INTERNET SHOP」での受注も緩やかだが確実に増えてきている。「ネットで買いたい」というお客様のニーズにも対応できるよう、今後さらに品揃えを充実させていく。

PART05

Joyful喜一ホールディングス 田中 健一社長

土曜出荷で 商品より早く

今年新たに取り組み始めた一つが「土曜日出荷」。営業時間を過ぎた金曜17時~土曜13時までの間に電子取引サイトから注文を受けた商品を土曜に出荷し、早ければ翌週月曜には届くようにする。今年5月からスタートした。

目的は販売店により早く商品を届けるため。これまでは金曜17時で受注を打ち切り、それ以降の注文を受けるのは翌週月曜。金曜17時に間に合わないと発注が遅れ、商品が届くのは早くて火曜となることが常だった。

しかしこの出荷の仕組みだと販売店だけでなく、ユーザーに商品が届くのも遅くなる。結果的にユーザーの生産活動を滞らせ、迷惑をかけることになりかねない。それを解消する一つの方法が土曜出荷。商品をより早く届け、販売店の営業活動、そしてユーザーの生産活動を後押ししたい。

グループで連携し商品開発

そしてもう一つ新たに取り組み始めたのが「グループ3社連携による商品開発」。喜一工具、エスコ、小川善。業態や得意分野が異なるこの3社が持つノウハウやアイデアを生かし、新たな商品を生み出していく。

具体的には、全社員がチャット感覚で情報共有できるネット上のアプリケーションを新設。ここに営業も業務も物流も新人もベテランも部門や立場に関わらず、日々の仕事の中で思いついた新製品を書き込んでもらう。

そしてその情報から、3社連携のプロジェクトチーム(今年新設)がアイデアを選び、マーケティングを重ねて商品化へとつなげていく。目的は商品開発のスピードアップ。3社それぞれで取り組みながらも、3社でも連携して商品を生み出し、変化する市場のニーズに応えていきたい。

ユーザー向け発注サイト

ユーザーが工具・機器を注文できる電子サイト「エスプロ」の利用者も増やしたい。これはエスコの便利カタログに掲載する工具や機器約12万5000点を購入できる。商品の特長比較や限度額設定ができ、ユーザーが使いやすいよう工夫した。

目的はユーザーの工具・資材購買の効率化を後押しするため。とはいえ直接取引するわけではない。ユーザーからの受注情報は当社が知り、商品を発送する。しかし、商流はこれまでと同じ販売店との取引のままだ。

エスプロは、販売店からIDやパスワードもらったユーザーが利用できる。近年、ユーザーが工具や資材をネットで購入することが増えている。そのニーズに応えるためにも販売店と連携してエスプロの利用者を増やしていきたい。

PART06

大喜産業 森口 博之社長

ロボット&マテハンに力

今期はコロナ禍からの回復期と見込んでいる。海外を中心に市場の回復が鮮明となっており、国内も3品業界や半導体、自動車関連など徐々に上向くと予測している。その前に受注を獲得できる体制を整え、需要の波を取り込めるようにしたい。今期のテーマは「前進」と掲げ、前年比10%増の売上高146億円を目標に、全社一丸で取り組む。

伝導機器商品のみで成長することが難しい昨今、将来に向けた新しい柱作りを進める。当社はロボット&マテハンに注力するつもりだ。昨年、社内にロボット拡販プロジェクトを立ち上げ、専任チームのロボット課を設立した。主な役割は営業のサポートやマーケティング、情報発信で、営業と専任チームの2軸でロボットの拡販に努めていく。また、協働ロボットや自動走行搬送ロボットのMiR(デンマーク)を取り扱っているが、商材を持つだけでは拡販につながらない。そこで、今夏に大阪・八尾の物流センター内の一部スペースにショールームを設け、MiRの搬送シーンを披露する予定だ。これまで実際の動きをユーザーに見せることが難しかったが、動作確認ができる場を作り、さらにテスト環境を少しずつ整えることで、ロボット&コンベアといった省人化・自動化の設備案件に応えていきたい。

教育制度の充実

伝導機器やロボットなど様々な商材を販売するには教育の充実が不可欠。今期は特に、新人から役職者まで階層別に同水準の教育を受けられる体制を構築する。改めて見つめ直すと、過去の教育は個人や部署に頼っていた面が強く、個々の裁量によって教育水準にばらつきがあった。今期は内部教育のみならず、リモート活用による外部教育も含め、ビジネススキルから商品教育まで幅広いカリキュラムを設け、『人間的魅力』の備わった人材を育てたい。商社の課題の1つは人の依存度が高いことだと言える。たとえ担当者の変更があっても、同レベルの人材が顧客を担当するようになれば、顧客損失の改善にもつながると期待している。

WEB受注の拡大図る

もう1つの大きな課題としては業務の効率化でデジタル化を推進する。特に受発注システムの効率化は重要だ。RPAの導入などで、従来の2重発注業務の解消を図ると同時に、WEB受注の拡大にも努めていきたい。当社の強みである軸受や直動機器におけるWEB上のラインアップ拡充も並行して実施していく。その先には点在する物流拠点の集約といった物流強化も視野に入れている。

PART07

鳥羽洋行 鳥羽 重良社長

アフターコロナへの対応  

鳥羽洋行は新しい時代へのスタートラインに向かっており、今はその準備の時だと社内で言っている。まずはアフターコロナへの準備だと考えている。

コロナが収束した後、多くの部分で元に戻ると思うが、仕事の仕方は変わっていくと思う。今回のコロナ禍で分かったのが、デジタルツールを使えば営業の効率が高まるということ。これはコロナが収束しても続く。とはいえ、全てがデジタルに置き換わるわけではないので、状況を見ながら柔軟に対応していく。

一方で、コロナ後にマーケットは急回復するとの見方もあるが、半導体不足などもあり、正直読み切れない。市場の動向を見極めて対応していく必要がある。

脱炭素への取り組み

次に脱炭素への取り組みも新たに準備が必要だといえる。昨秋以降、急速に社会的ニーズとして高まってきているが、今後は営業活動においても脱炭素の視点は不可欠になる。コロナ禍で面談が難しいユーザーでも「二酸化炭素削減の提案」だと、直接会って話を聞いてもらえたという報告が来ている。

では、それに対し、我々ができることは何があるのか。まず社内で貢献できることは当然進めていく。すでに本社の電灯は全てLEDに変えたし、各営業所でも置き換えを検討している。また、社用車を電動車にするなども考えたい。

ただ、商社が事業活動の中で、二酸化炭素削減に貢献できることは製造業に比べ大きくない。我々が最も貢献できるのは、お客様に対して削減提案を強化していくことだ。機械工具業界は「脱炭素社会をサポートする業界」と言ってもいいのではないか。

もともと、生産設備に関連する新商品は、小型化、軽量化、低消費電流等、あらゆる面で脱炭素へ向けたものばかりである。このような新商品のプレゼンテーション能力を強化していき、客先の脱炭素への取り組みに貢献していきたい。

新株式市場への対応 

そして、来年4月の株式市場の再編に対しても準備が必要である。新市場において、当社がどこに属するかは近々明確になるが、いずれにしてもこれまでのJASDAQとは違った対応が必要になる。

例えば、上場維持要件や、改正されたコーポレートガバナンスコードの確認などを行い、社内制度の再点検やアップグレードを進める必要がある。上場を維持していることは、社会的にも取引先への信頼という意味でも重要だと考えている。

PART08

トラスコ中山 中山 哲也社長

MROストッカーの拡大

置き薬のようにユーザーの工場に棚を置かせてもらって、使った分だけを請求する「MROストッカー」の拡大を進める。5月末時点では82件だが、23年末をめどに約550件まで引き上げたい。

そのために機能強化も進めていく予定だ。先日、人工知能(AI)スタートアップのシナモンAIやGROUND、名古屋大学と業務提携した。彼らと共同で、26年をめどに、実績や工場の稼働や天気など様々なデータをAIで分析することで、MROストッカーに需要を先読みして納品できる仕組みを構築したい。

MROストッカーを進めるのは、ユーザーにとって「納期ゼロ」という究極の即納が可能で利便性が高まるためだ。また、販売店にとっては「急に持ってきて欲しい」という要求で、走りまわることも減るし、本来すべき提案活動に時間を充てて頂ける。また、配送コストやそれにかかわる手間が減るので、環境にも優しい。

ユーザー直送サービス

この数年進めてきたユーザー直送サービスも強化する。これまでネット通販企業向けが多かったが、ファクトリールート向けにも広げていく。具体的には定額でユーザーへの直送が可能となるようなサービスを検討している。詳細は今後詰める。

このサービスの狙いは、ユーザーによっては納期が1~3日ほど短くなるという利点だけではない。当社から販売店、そしてユーザーという2度発生していた運賃がなくなり、コスト削減にも役立つ。また、梱包資材や運送車両の削減もできるので、二酸化炭素削減をはじめ環境負荷低減にも貢献できる。

プロツールの限定解除

これまでは「工場で必要とされるもの」=「プロツール」と定義し、プロツールに特化してきた。物流やシステムなど経営資源もそこに絞ったからこそ、顧客の利便性の向上につながってきたと思っている。

しかし、最近はネット通販企業との取り組みや、仕入れ先メーカーの製品の多様化などから、プロツール以外の需要が急増している。このため、これまでご法度としてきた、プロツールを限定的に解除する。

無秩序に拡大するわけではない。例えば、アイリスオーヤマさんが分かりやすいが、同社のルームエアコンはプロツールではないため、これまで販売してこなかった。しかし、今後は同社のルームエアコンの販売も行う。まずは、既存の仕入先メーカーで取り扱いのなかった製品から徐々に拡大していく。

PART09

NaITO 坂井 俊司社長

オールインワン事業の展開

単に商品を販売するだけでなく、メンテナンスや修理などのアフターサービスも含めた「オールインワン」で提供できる体制を整えていく。

一昨年から計測機器の修理・校正サービスにも注力している。今年は産業機器など計測機器以外でもメンテナンスや修理を提供できる商品を増やしていきたい。また、単品だけでなく、システムでの販売にも注力する。特に計測・検査の自動化提案に注力していく。

こうしたアフターも含めたサービスを提供していくためには、専門業者とのタイアップが欠かせない。自社だけでなく、様々な企業と連携しながら、サービスの幅を広げていく。

今年3月には新しい事業を調査、検討していく事業企画室を新設した。この部署を中心に将来につながる事業を生み出していきたい。

デジタル化の推進

デジタル技術を活用した業務の合理化を進めていく。今年6月には受発注システムをリニューアルした。使い勝手を向上させ、機能アップも図り、販売店の方々にはより使いやすいシステムになっていると考えている。まずは旧版からの移行に取り組んでいく。

今後は、発注のAI(人工知能)化や在庫機能の自動化など、さらなる機能アップも検討している。人に依存している部分をシステム化し、在庫効率を改善、生産性を向上させていきたい。

現状はまだまだ電話やFAXでの注文も多い。しかし今後は、ペーパーレス化や業務効率化の流れなどからウェブでの受発注が増えていくと考えている。利便性の高いシステムを構築し、世の中のニーズに乗り遅れないように対応していきたい。

海外事業の強化

当社は、タイとベトナムの現地法人に加え、親会社である岡谷鋼機のネットワークを使って海外事業を展開している。海外事業を強化し、海外比率を上げていきたいと考えている。

足元では新型コロナウイルスの影響で、海外に渡航して現地でビジネス活動を行うのはまだまだ難しい。一方で、ウェブを使ったリモート会議システムの普及などによって、現地に行かなくても仕事ができるようになった。これまでとは違った形で海外事業も展開できるのはないかと考えている。

例えば、海外に行けず、現地に拠点も無くて海外展開に困っているという仕入先メーカーの市場開拓をサポートするなどを検討している。岡谷グループの協力も得ながら、取り組みを進めていきたい。

PART10

西野産業 西野 佳成社長

アフターコロナへの対応 

コロナ禍のよってデジタルツールの活用が増えたのは誰もが認めるところだ。当社でもzoomを活用して、営業会議を開くなど頻繁に使うようになってきた。また、メーカーが主催するウェブセミナーの受講なども当たり前になっている。コロナ後は大半の部分で元の状況に戻ると思うが、こうしたデジタルの利便性の高さは残ると思う。

一方で、昨年からこうしたデジタルツールの活用が広がる中で、個別にウェブ面談するためのスペースがないといった課題も出てきた。事業所によっては、会議室兼用スペースを設けるなとの対策を進める。また、全ての業務というわけにはいかないが、ノートパソコンや通信環境を整えるなど、テレワークの推進も検討したい。

業務作業の効率化

請求書や各種伝票のデジタル化を進めて、社内の業務効率の改善につなげる。少し先だが、売り手が買い手に正確な適用税率や消費税額等を伝える「インボイス制度」が始まると、インボイスの写しの保存が必要になる。また、紙の手形を撤廃し、電子化する動きもある。

こうした社会的な変化に加え、先に言ったテレワークやデジタルツールの活用が広がっていく中で、紙ありきの業務改善には限界がある。

とはいえ、手形の発行や受取りを減らしたり、FAXを減らしたりすることなどは、お客様があることなので、全て一気に変えるということは難しい。しかし、業務のデジタル化を少しでも進め、将来的には、RPA(ロボットプロセスオートメーション)を活用して、更なる業務効率の改善につなげたい。

強み磨くため営業効率化

当社は測定専門であることが強みなので、それを磨くためにも営業の効率化を進めたい。測定専門商社であることの強みは、ユーザーのニーズに応じた適切な測定機器の提案だったり、「こんなものを測りたい」といった測定に関する相談を受けたりすることにあると思っている。

営業担当者が、こうした本来すべき活動にもっと時間を費やせるようにする必要がある。そのためには、効率化できる部分は効率化していく。

例えば、リピート品のオーダーや、誰もが知っている製品の注文に対して、時間をかけることは販売店にとっても当社にとっても良いことはない。ウェブ受発注システム「コムネット」の機能の強化をするなどして、そちらの活用も促したい。そして、相談に応じるなどの専門性をさらに磨いていきたい。

PART11

日伝 福家 利一社長

パートナーとの協業

近年、ユーザーの機器調達や設備投資における我々(商社や販売店)へのニーズが変化していると感じる。その一つが商品の供給だけでなく保管、情報管理も含めたサービスを望んでいるということ。そして自動化やIoTなどの投資は総合的なやノウハウによる的確な提案を求めているということ。大手ユーザーほどその傾向が強い。

そんな中でここ数年、取り組み続けているのが、パートナー(販売店)との協業だ。そうしたユーザーニーズの変化を感じ、当社の方針や強みを理解し、共に市場を開拓しようと考える販売店とのパートナーシップを強化している。

例えば当社には多種多様な大量の商品を保管、その情報を管理し、全国各地に求められた時間に求められた商品を届ける物流の能力がある。その一方でここ数年培ってきた自動化や効率化、IoTなどの技術的な知識やノウハウと、それに関連する様々なメーカーとのネットワークがある。

こうした当社の強みは、販売店との連携で全面的に生かしていきたい。それを理解し、この強みを生かしてくれる販売店と協力にタッグを組んでいきたい。

地域特性にマッチした営業戦略

そのうえで、地域で異なる特性にマッチした営業を展開していく。例えば、東北や九州は電子部品、関東や中部は自動車、関西や中四国は重工—。それぞれの地域で根差す産業は異なり、機器調達や設備投資へのニーズも異なる。

地域の産業構造やユーザーの動向、設備投資計画は、それぞれの地域の販売店が緻密で正確な情報をつかんでいる。パートナーの販売店と連携し、その地域のユーザーマップに応じて柔軟に営業展開していく。

成長市場でビジネス拡大

そして、特に成長市場を重点的に開拓していく。自動車の電動化やIoT、AIの市場拡大を背景に、電子部品やその製造装置、電池、モータ、インバータなどは技術革新が進み、市場が拡大している。

成長産業はこれから何に投資し何を強化していくのか。ニーズに対し、どのように応えることができるのか。情報を集め、分析し、当社の強みを生かし、パートナーと協力して開拓していく。

これらの成長産業が日本の製造業をけん引していくことはほぼ間違いない。それによって産業構造や、我々の存在意義は変化していくだろう。しかしそうした変化がまた新たなビジネスチャンスを生むと感じている。

PART12

前田伝導機 耕 善一郎社長

社内DXの推進

社内システムのDXを推進することで、あらゆる業務の効率化を図っていく。

例えば販売管理。これまで、商品を仕入れた数と販売した数は手打ちでデータを入力し、人の手によって数を合わせて管理していたものを、システムを組んで一元化することで、より効率的に管理できるようにした。

FAXの電子化も行った。取引先から届いたFAXを機械が読み取り、PDFに変換して各担当者のPCに届くようにした。また、PC上で作成したPDFファイルをFAXに変換して先方に送れるシステムを組んだことで、先方が電子化しておらずとも社内でのDXを進めることができた。

今後は、これらのシステムを従業員に周知し、より効率的な働き方ができるようにしていく。

SDGsへの配慮

これから企業に求められるものの1つとして「SDGsへの配慮」があるだろう。SDGsという言葉には難しいイメージが付きがちだが、SDGsが何を目標にしているのかを考えて知恵を絞れば、中小企業の規模でもできることは多いのではないかと思っている。

例えば、社内DXを推進した結果、ペーパレス化が進めば、回り回って森林への負担が減る。その上で古紙回収なども、環境に配慮したリサイクル業者などに依頼すれば、これは15番目の項目である「陸の豊かさを守ろう」に十分該当すると言える。また、例えば社内で使用する紙やペンなどにリサイクル品を使用するだけでも、12番目の項目である「つくる責任、つかう責任」に該当するし、商社である以上は長寿命、高耐久な製品を探して取り揃えることもこれに該当するだろう。

そういったことを積み重ね、中小規模の企業であってもできるSDGsを細かく見つけ、実践していこうと考えている。

企業ブランドの向上

これは以前から取り組んでいることだが、企業としてのブランドの向上にも取り組んでいく。

そのためにも、当社で買って頂いた製品に対してご意見を頂いた際に、丁寧に対応する。お客様にはお客様の目的があり、そのために製品を買っている。その目的が果たせるよう、製品を買って頂いた後にも、もし何かあれば現場に伺い、真摯に対応する。地道な積み重ねを経て、「前田伝導機で買えば安心だ」という信頼得られれば、それが企業のブランド力につながると考えている。お客様の困りごとに臨機応変に対応できる企業を常に目指す。

PART13

山善 長尾 雄次社長

積極投資が成長戦略

持続的成長に向けて、DX、グリーン成長、物流、自動化・省人化の4分野を中心に2019年度から23年度の5年間で600億円の投資枠を設定している。DXの一環で経営基幹システムが今期後半に稼働、来年1月には関東の物流拠点も稼働するなど積極的に投資する。

3つの組織を新設

成長戦略を立案し実行していくために、4月1日付で新たに3つの組織を新設した。

1つは「DX戦略部」。DXの本丸として、市場での出来事や経営数字をデータ分析し、繋がりを解明して、どこに新しいビジネスチャンスがあるのか、気づきと発見を生み出すマーケティングを担う。顧客の課題・ニーズを分析し、我々は何を提供できるのかを考える。

2つ目は「グリーンリカバリー・ビジネス部」。ESG企業としての価値を最大化させるため、新たなビジネスモデルなどの開発ビジネス、取扱商品に環境価値を付与するセールスプロモーション、環境銘柄としての認知度を高めるブランディングに取り組む。

3つめは、トータル・ファクトリー・ソリューション(TFS)支社。工場などの設備を一括で請け負うSFS支社と、ロボット専門の販売支社であるFAE支社を統合し、顧客とエンジニアを一元化して効率的かつ強固な営業体制を構築する。今年1月には、AIのスタートアップであるアセントロボティクス社と資本業務提携契約を締結。ティーチング不要で専門知識がなくても誰でも動かせるソフトを搭載したロボットシステムを国内外に販売する。グループ会社の東邦工業や石原技研のエンジニアリング機能もネットワーク化して充実させる。

ハイブリッドな営業活動

オンラインの有効性と共に、商材の付加価値が繊細で複雑なものほど対面での高度なコミュニケーションが重要。整理された情報を広く早く正確に伝えることは、リモートで行い、ターゲットやテーマを絞り込んだ高度なプレゼンや商談はリアルで結果を出す。リモートとリアルを機敏に使い分けるハイブリッドな営業を実践する。どてらい市も、新型コロナウイルスの感染状況を冷静に判断し、関係者全員の命を最優先に、対策を徹底した上で実施していく。

我々は変化対応業。変化に気づく場所は現場にしかない。商いの現場にある生きた情報を的確に掴み、リモートとリアルを有効に活用しながら市場変化を先取りする具体的な提案活動に取り組む。そして、不易流行の精神を基本に、攻めの姿勢で果敢に取り組んでいく。

PART14

ユアサ商事 高知尾 敏之常務

コロナ対策の進化

様々な成長戦略を描いているが、今はコロナ対策を抜きに何も語れない。今年もコロナへの対応をベースに事業展開していく必要がある。

まず、コロナ対策関連製品は今後も拡充するほか、デジタル技術を活用した営業も引き続き工夫する。テレビ会議システムを活用した情報発信は行っているが、もっとタイムリーな情報提供や、常に販売店のそばにいるような形を提供できないかなど検討していく。

展示会もコロナに対応し、進化させる。昨年ウェブとリアルを融合した「YUASA Growingフェア」を開いたが、その知見を活かし、今年の「グランドフェア2021」では、新たな形を提示したい。

営業の新たな形を提示

コロナによって、営業のあり方や商社に求められることが変わりつつある。その変化に対応した施策を進める。

その一つが、これまで以上に販売店がユーザーに届けやすい情報やコンテンツの提供だ。コロナで有益な情報を持つ人にしか会わないというユーザーが増えている。そのため、販売店は今まで以上にユーザーに応じた提案やネタが必要になる。

自動化に関する動画や資料を用意したり、二酸化炭素削減に貢献する製品を提案したりするなど、今の時代に即したコンテンツをユーザーに提案しやすい形にして提供する。

また、リアルの商談より動画や資料のほうが効果的な部分があることも分かってきた。例えば、自動化提案では、口頭より成功事例の動画を見せるほうが分かりやすいこともある。相対が必要な商談はどんな場面か、デジタルが効果的なことは何か。それらを組み合わせて、最適な営業の仕方をしていく。

社会課題への対応強化

車の電動化に代表されるように産業構造は大きく変化しており、対応が必要になる。ただ、どう変化したとしても、社会課題に貢献することは変わらない。

例えば、コロナによって非接触の自動化のニーズはさらに加速する。カーボンニュートラルに貢献するための機器や提案が必要になる。

こうした変化する社会課題に貢献することが商社の役割。当社では、それらに対応できる準備を進めてきた。カーボンニュートラルへの対応では、工業分野だけでなく、住環境分野もあり、補助金活用まで含めた総合的な提案が可能だ。自動化やIoTの分野であれば、エンジニアリング会社を持つほか、AI企業とも連携するなど、引き続き、ユーザーとメーカー、販売店を「つなぐ」機能を強化していく。

日本産機新聞 2021年7月20日

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