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モノづくりの文化をつくる
ロブテックス 地引 俊爲社長に聞く
作業工具の未来は
昨今、少子高齢化により日本のマーケットは様々な業種で縮小が続いている。製造業のみならず、アパレル、外食、建設など業界に関係なく、次の時代に向けた取り組みが不可欠だ。製造業の中でも一番裾野の広い自動車産業は人々の自動車に対する意識変化でシェアリングサービスなどが世界的に広がっている。機械工具業界も同じく変化の時代を迎えたといえる。そこで、創業130年を超える作業工具の老舗メーカーであるロブテックスの地引俊爲社長に「作業工具の未来」について話を伺った。様々な時代の変化を乗り越えてきた同社は今の時代変化をどう感じているのか、また、将来を見据え、何に取り組むのかなどを聞いた。
直近の市況は?
昨年の機工ルート市場は悪くなかった。ただ、ホームセンター市場は若干苦戦したかなと感じる。ナショナルブランドに匹敵する海外商品も増え、メーカー各社が独自の多角化戦略に変わってきているのをみると、今は変革期だと思っている。
作業工具だけでなく次の柱が必要だと?
当社も全体でみると、作業工具よりリベット・リベッターなどファスナー事業の比率が高まっており、順調に販売を伸ばしている。その点、作業工具は難しい市場になってきた。
長い歴史の中で昔と今の違いは?
130年前の創業時はバリカンを作り、昨年はモンキレンチを作って90年になる。だから、作業工具の歴史も100年前後といったところだろうか。当時を振り返ると、作業工具は高価な輸入工具から手頃な価格と高品質な国産品への道を切り拓いていった時代。それから100年が経ち、今後作業工具はどうなるのか、どう考えるべきかと問う時代になってきた。大きく変わったのが職人。人手不足や住宅分野など工法の変化で、作業するシチュエーションが減っている。作業工具はなくならないと思うが、今まで通りの市場規模でいくかは疑問が残る。
使う現場が減ると?
自動車も同じ。100年前に馬から自動車に代わり、今は自動運転へと変わってきている。ただ、馬がいなくなったわけではなく、交通手段から乗馬や競馬など余暇産業に変化した。ものづくりの生産現場もロボット化で作業工具より電動工具が主流になるかもしれない。しかし、趣味の世界では作業工具が力をつける可能性もある。
工作体験や伝える力
だから、DIYを?
『モノづくりを文化に』というキャッチフレーズで推進している。工具自体はプロ向けとDIY向けに分けていないが、DIYをもっと根付かせて、作る楽しさを伝えていかないと裾野が広がらないと思っている。
今のDIY市場は?
まだブームの段階で市場規模としてはまだまだ。イベントやDIY女子など流行もあり、広がってはいるが、根付いたとは言い難い。
根付かせるには?
ワークショップを通じて子供や女性など、ものづくり体験を行っている。東大阪市内の小学校の授業や東大阪市民イベントである『ふれあい祭り』に加え、一般向け展示会やデパートのイベントにも積極的に参加している。
参加者の反応は?
場を作ると楽しいと感じてもらっているようだ。あるイベントでモンキレンチを使った棚作りをすると、参加者からオリジナルのものが作れたと、達成感を感じてもらっているようだ。昔のような学校での工作授業も減っており、こうした体験を通じてモノづくりを広めていきたいと思う。
新経営ビジョンも
新しい価値ですね?
作業工具の国内市場は縮小する傾向なので、裾野を広げていくしかない。作業工具×DIYも必要だ。職人も昔の職人さんと違い、モンキレンチといえば『エビ印』と選んでもらっていたが、今の若い職人さんはデザインやかっこよさなど、選ぶ基準が変わってきた。それに加えて、一般とプロとの境界もなくなっている。例えば、作業服だと女性や一般の人を対象にした販売も行っている。
今後の取組みは?
我々も長年プロ向けを作り続けてきて、良い製品を作れば何も言わなくても分かってもらえるという観点が強かったかもしれない。でも、プロという括りが多様化した場合、製品の特長を分かりやすく伝えることが大切だと思っている。あえて説明しなくてもではなく、伝えたいことを明確にし、伝える方法を考えていかないといけない。お客様が一目で当社の製品だと分かるようにすることが重要になる。
そのためには?
情報を発信し続けることが大切だと考えている。現代は発信するためのツールが充実しているので、当社や商品の良い部分を発信したい。お客様に理解してもらうにはデザインだけでなく、使い方も含めてトータルで見せる必要がある。そのために、当社や製品の中身をもっと知ってもらおうと、代理店や販売店向けに鳥取工場の工場見学を開き、製造現場や品質管理などを見てもらい、他社との違いを実感してもらっている。
体験が重要だと?
製品も大切だが、体験など関連するコト作り(ストーリー性)が重要になってきた。社内で我々は何業か?と問うている。答えが金属製品製造業だと枠から抜け出せない。当社は2023年に創立100周年を迎える。そこで新しく『モノづくりのプロに応え、モノづくりの愉しさを育む』という経営ビジョンを掲げた。社内でこれを共有し、ロブテックスとはこういう会社なんだと広く伝えていきたいと思う。
産機新聞 2019年8月5日
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