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生産現場を訪ねて コベルコ建機 五日市工場
コベルコ建機五日市工場(広島市佐伯区五日市港2‐2‐1)はすべて活気の中にあった。ブルーグリーン色のショベルを全員参加で作っていた。昨年秋口から排ガス規制による駆け込み需要の影響で15%前後生産を落としていると言うが「最適生産」に慌てない。訪問した8月21日午前11時ごろは、7tから30tまでのショベルを14.3分に1台のピッチで生産していた。リアルタイムに表示する電光掲示板の前回実績が11.5分と表示されていたから2.8分速めていた。しかし、大きさの違うショベルを混流生産する技術・技能は「凄い!」。五日市工場は、2012年5月、約200億円を投じ、祇園工場(中型)と沼田工場(大型)で生産していたショベルをここに集約し、生産能力を年産1万2000台から30%減の8500台にし、それでも採算の取れる工場に仕組みを変えた。働く人たちの智恵と工夫が詰まった工場は「21世紀型日本の製造業」のあり方を見る思いがした。(取材は8月21日。木下取締役専務執行役員のインタビュー記事と併せてお読み下さい)
広島市の西南五日市港地区に五日市工場はある。敷地面積約10万㎡。広大な敷地に組立棟、製缶棟の生産現場を持ち、同社初の司令塔機能を持つグローバルエンジニアリングセンター(GEC)と総合研修センター、先行技術センター(建物面積約3.5万㎡)を置いた。
本格稼働は、2012年5月。「世界№1のものづくりを実現し、最高水準の生産性を持つ」ことを使命に、生産性の倍増、部品及び完成機在庫の半減、生産リードタイムの半減と言う高いハードルを設定して始まった。丸3年経った自己採点を聞くと「まだ道半ば。全従業員がその目標に向け早期実現を目指している」(木下章取締役専務執行役員、GECセンター長)と言う。
祇園と沼田を集約
五日市工場は、中型油圧ショベルの旧祇園工場(広島市安佐南区)と大型ショベルと基幹部品を生産する沼田工場(同)を集約した。祇園工場の周辺が宅地化し、生産能力の拡大ができないことが背景にある。また、沼田工場を「部品の内製化によるコア技術の強化、差別化技術の深掘り」(木下氏)に重点を置くことも要因に一つ。
沼田工場はこれまで、製缶部品(30t以上の大型特殊アタッチメント部品)やコア部品(走行モータ、旋回電動機、発電電動機などのハイブリッド関連機器)を購入していた。それを内製に切り替え、今、2014年度から16年度の3年間に約23億円を投じ専門部品工場化を急いでいる。
大垣工場、フル生産
コベルコ建機の国内生産拠点は他に大垣工場(大垣市本今町)がある。ここでは1~5.5tクラスの油圧ショベルの生産・組立を行っており、年間5500台を生産する。2014年5月にはリーマンショック前の水準に比べ、生産リードタイムの半減、仕掛品の半減、製缶・機械加工・物流の工数半減、後工程への手戻りゼロなどに挑戦している。ミニショベルの生産は、都市化が進んだ日本はじめ欧米の市場に最適で、超多忙中にある。
工夫の宝庫
瀧川誉生産本部広島事業所五日市製造室長に工場を案内してもらった。
組立棟は、約4100㎡。製缶棟、出荷棟を併設し、中型ショベルを一気通貫で組み立てる。中心は中型ショベルライン。大型は中型組立ラインと製缶ラインの間で組み立てている。
また、製缶棟は大型工作機械群による切削加工やロボットと人の手で仕上げる溶接ライン、塗装エリアを持つ。溶接のロボット化率は80%を超え、残りをロボットができない難しい個所の溶接を人が行っている。カーボディーやアッパーフレームといった大型部品が順番待ちにあった。
製缶棟と組立棟は、自動搬送システムで繋がり、中型ショベル部品の上腿と下腿を混流ラインに運び込む。
ショベルは、1万点余の部品で構成されている。その部品郡は、沼田工場やコアパートナーで約900点前後にモジュール化され、五日市に運び込まれる。全て“ジャスト・イン・タイム”が重要な約束事になっており、一つの部品が遅れると全てのラインはストップする。「管理する人、作業をする人、清掃をする人、全員が一丸になり1台1台ショベルを組み立てる」(瀧川室長)ことを強みにしている。1日30台を生産する。
工場のコンセプトは、「Smart & Clean」。この旗印の基に現場では幾つもの工夫を取り入れている。これらは、リーマンショックの時に作業者が「必至で考え改善につなげた」(中田雅彦企画管理部広報秘書担当部長)ものばかり。
大型部品以外は、社外から運び込まれる。部品点数の大半を占める。ディーゼルエンジン、油圧機器、トランスミッション、旋回減速機、各種部品…は計画に基づいて搬入される。
ここ1、2年、トヨタ自動車元町工場や航空機部品のIHI相馬工場を訪ねた。トヨタやIHIと同様量産のための「機械加工による自働化」の徹底や最終的に精度だったり品質であったり向かう方向は同じでも、コベルコ建機は「手造りに近く、人の手の温かさ」を感じた。
荷受けはひさしの下
部品は、幅8mの長いひさしが付いた組立棟の荷受け置かれる。ひさしが長いのは、雨天でも部品を濡らさない同社のものづくりの心配り。今年は天候不順の日が多く、「効果はあった」と瀧川室長。
トラックで搬入する部品は、組立棟前でフォークリフトが下ろし、工場内の作業は専用の電気搬送車が運ぶ。排ガスを持ち込ませないためだ。組立棟の中央の柱にクリーンメーターの電光板が取り付けられ、リアルタイムで空気中の塵の量を計っている。訪問時は、50μm以上が2個、20~49μmが3個と表示されていた。広い工場の隅々まで見通せるクリーンさにある。
「ピカピカ通路」
組立棟に入って驚いた。通路が光っている。「建設機械はどちらかと言えば汚いイメージがあり、そこを一新するためにメイン通路をフィルム化にした」(瀧川室長)。床にフィルムを1枚貼り光沢を出し、掃除をやり易くした。同社に大勢のユーザーが訪問するが、綺麗な工場で作っているショベルを見て安心する帰る人が多いと言う。「工場が営業マンの一人」(瀧川室長)と、物言わぬ工場を高く評価している。
また、電気搬送車の通路の一部に粘着シートを貼っている。タイヤに付いた塵や埃を取り除くのが目的で、汚れたら一枚ずつ剥がしている。さらに女性が腰をかがめピカピカ通路の汚れを手で拭いている姿に2度も遭遇した。「自分の職場は自分で行い、公共のところを清掃してもらっている。こうした気持が安全で品質の高いショベルづくりに繋がる」とは、瀧川室長。
このほか、同社は毎朝、約10分間、全員で持ち場を雑巾掛けもしている。ここまで拘って工場を綺麗にする会社は他に聞いたことがない。過去に航空機部品メーカーや自動車、工作機械などの工場を海外工場も含め数多く取材してきたが、徹底して綺麗さに挑戦する製造現場を見たことがない。
組立ライン
メインの組立ラインでは、フレームを加工するライン(小型アッパーフレーム、運転席やエンジン、燃料タンク、アタッチメントを取り付けるためのフレーム、7t、13t)と下部走行体の中心部分、カーボディーライン(7t、13t、20t、23t、25t、30t、40t)を別々に組み立て、途中で2ラインから上部をドッキングする。まるで手品を見ているような組立方法に目を見張った。
また、大型ショベルの組立は、中型組立ラインと製缶工場に間にあり、ここでは40t以上220tまでの組み立てをする。台車に乗っていたのは100tのショベルが見上げるばかり。他にビルを解体する建機やトンネル機械を組み立てている。
安全道場
良いショベルを作るには「安全な職場」が欠かせない。五日市では、過去の災害から危険な個所を分析し、恐怖体験をするコーナーを設けている。
工場の一角に安全道場が設けられ、2014年度の型別発生件数の災害件数17件を分析し、警告する。製造現場では数字やグラフによる事故を表示しているところがあるが、ここではグラフによる分析の他にミニ実験まで見せて事故防止をしている。
「作業者がこう言ったところが危険を考え、事前に理解する、もし直面したらこうしなさいと教育するのが安全道場です」(瀧川室長)。具体的には、作業者が作業着のボタンを1個外しているだけで巻き込まれるリスクを表示している。服装、保護部の重要性(マスク、埃の色で代え時を知らせる)にも注意を促す。さらに、部品が吊り具から落下し、手や足に当たれば切断する模型も用意している。一瞬にして木が切断される様は、働く人の安全を訴える。
溶接エリアと機械加工
アッパーフレームやカーボディーなどの鉄板を組み合わせ溶接する。必要な形に切り抜いた鉄板をプラモデルのように必要な形にし、ロボットで溶接し、ロボットの手が入らないところは人が溶接する。
溶接する箇所は、ショベルの上側のフレーム台と下側のフレーム台。「スペースが限られているので2階建にし、2階で溶接し1階に下ろし搬送する」(瀧川室長)。
溶接は80%をロボットがする。残りを人が溶接する。ここは溶接の煙が工場内に充満し、組立棟のようにならないが最近は、手元で煙を吸い込み、浄化して外に出すなど環境整備に乗り出している。一方で、成り手が少ない男性に対し、溶接を希望する女性がいて「女性目線の改善」(瀧川室長)を行っている。
また、機械加工は精度を要するところを加工する。オークマなど大型門型MCが並ぶ。組立ラインと同じ15分タクトで流れ、機械加工は24時間稼働中。
溶接棟と組立棟は双方にひさしがあり、雨を凌げる。溶接工場から組立棟に架台を運ぶ時は、双方のシャッターが開き、レールが出てきて双方の工場が繋がる。時間にして上腿と下腿部品が各7分、15分に1回、レールは繋がる。
21世紀の製造業
量産工場の建設を模索していた時、リーマンショックが襲った。増産は一旦凍結され、木下氏がインタビューで話すように、「人員整理をするのでなく、余剰人員で改善を徹底して考えた」。ここに五日市工場のスタートがある。この結果が、生産量を減らしても収益を出せる工場を生みだした。そのベースが綺麗な工場づくりでありジャスト・イン・タイムで運び込まれる部品の数々をノンストップで組立てる技にある。この仕組みは、まだ危ういところを残す。そこを「全員野球」「全員サッカー」のごとく「全員ショベル生産」に取り組み、ブルーグリーンのショベルを作り出す。21世紀型製造業のあり方を示しているようだ。
会社概要
東京本社:東京都品川区北品川5‐5‐15
広島本社:広島市佐伯区五日市港2-2-1
創 立:1999年10月
資本金:160億円
社 長:藤岡 純 氏
従業員数:1,156人(グループ計6,419人、2015年4月現在)
売上高:3,110億円(連結、2014年度)
事業内容:建設機械、運搬機械の製造、販売並びにサービス
日本産機新聞 平成27年(2015年)9月25日号
TONEは、本社を同社最大拠点である河内長野工場に統合、移転した。9月26日から業務を開始した。 今回の統合により、開発、製造、営業企画、品質保証、管理の各部門と経営を一体化。部門間のコミュニケーション向上を図り、一層綿 […]
ツーリングメーカーのエヌティーツール(愛知県高浜市、0566-54-0101)は福岡県筑紫野市に九州事務所を開設し、九州地域での迅速かつ細やかなサービスを提供することで顧客の課題解決に応えていく。住所は福岡県筑紫野市原田 […]