2022年8月16日(火)

【特集】2022新春インタビュー 機械工具業界の「明日」を考える(後編)

政府が2050年までにカーボンニュ—トラル(脱炭素化)達成を目標に掲げたことで、昨年から大手企業を中心に取り組みが始まり、省エネに関連する商品や技術が注目を浴びている。さらに、SDGs(持続可能な開発目標)も含め、社会課題に対しどのように向き合うかが問われ始めた。そうした背景をもとに、新年号インタビュー特集の後半は愛知県の販売店3社のトップに、今後販売店ではどのような取り組みが必要なのか、また、時代の変化にどう対応していくかを聞いた。

※前編はこちらから

PART1:ミズタニ機販 水谷 隆彦社長「自社の強みを見極める」
PART2:井高 髙田 研至社長「メーカー組み合わせニーズに応える」
PART3:モリタ 森田  乾嗣社長「顧客に合わせた変化を」

PART1

ミズタニ機販 水谷 隆彦社長「自社の強みを見極める」

ミズタニ機販
水谷  隆彦社長
(愛知県機械工具商業協同組合  理事長)

政府は2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素化)達成を目標に掲げました。これも新たな課題と言えますか。

世の中がその方向で動いており、取り組まなければいけない。まだ調査している段階なので、明確なことは言えないが、顧客が何を求めているのか、そうした専門部署が必要になるかもしれない。

カーボンニュートラルへの対応は。

実際に工場を持っているわけではなく、CO2や温室効果ガスの排出に関する規制はないが、出来る範囲の取り組みは必要だ。当社は昨年に新本社を建設し、電力に一本化した。旧社屋は電力とガスを併用していたが、電気にしたことで空調機器を見直し、エネルギーロスの少ない設備を導入するといった省エネ対策を進めた。ユーザーからもそうした要求が出ないとは限らない。業界としても出来ることを進める。

そのほかには。

営業車を順次ハイブリッド車に変更している。EV車の採用も検討したが、航続距離や充電スタンドの問題があるため、まだ活用するには困難だと判断した。また、新社屋は太陽光パネルを設置できるスペースも確保している。多額の設備投資が必要になるが、数年先の将来に向けて引き続き検討していく。

カーボンニュートラルに関するカタログなど作成予定は。

大手卸商社がそうしたカタログを作成するかもしれない。そうしたカタログがあれば活用させてもらいたいと思う。

感染症、EV車、カーボンニュートラルなど業界を取り巻く環境は急速に変化しています。今後、販売店の役割は。

やるべきことは『変化に対応すること』だ。

例えば。

働き方改革はその1つ。最近は若手がすぐに退職するケースも出てきた。当社も社内改革に努め、産休や育児休暇の充実を図っている。制度を設けると、早速2人が取得した。ただ、従業員40人の会社で2人が抜けると、その期間の対応が難しい。男性社員からも育児休暇の申し出があり、調整している。働き方改革を進める上ではデジタル化を取り入れ、社内の仕組みを再構築していく。

その内容は。

会社の将来を見据え、30代の若手社員を中心とした新しい中期経営計画を策定した。販売店もデジタル化を図ることで、ペーパーレスを進めることができる。ただ、それは他社も同じ。デジタル化を図った後に何が残るか。それが販売店の強みとなる。

将来、販売店の強みとなるものは。

顧客から要求されたものを早く、丁寧に、適正な価格で届ける。これは不変的なことだと思う。

ただ、時代に応じて順番は異なるだろう。ある大手牛丼チェーンの有名なフレーズに「うまい、はやい、やすい」がある。元々は「はやい、うまい、やすい」だったようで、時代に応じて変化させている。これは我々も同じ。販売店に置き換えると、「納期、品質(サービスの)、価格」となる。この3原則は変わらないものと捉えている。

この3原則で現在の順番を決めるなら。

当社なら「品質、納期、価格」の順番。品質とは安全性や注文を間違えないに始まり、顧客の要望を超える感動を提供できること。この3原則は個々の企業の強みで変わるため、価格が最初に来る企業もあるだろう。各社で強みを見極めること。当社は品質を大事に考えており、それには人材教育が重要だ。

20年前から管理者養成学校をはじめ、各種コンサルタントを活用し、人材教育の充実を図ってきた。それはいつの時代も変わらない取り組みだと思う。

PART2

井高 髙田 研至社長「メーカー組み合わせニーズに応える」

井高
髙田  研至社長
(愛知県機械工具商業協同組合  副理事長)

昨年からカーボンニュートラルが大きなテーマに加わりました。

どの企業もカーボンニュートラルの話題を話し、大きな課題となっている。これは販売店にとっては大きなビジネスチャンスだが、まだネタはない。顧客もどうしたら良いか探っている段階で、我々も色々調べているところ。現実的に一気にカーボンニュートラルに結び付けられるようなものは存在しない。ただ、省エネを提案すると顧客は聞いてくれる。例えば、切削工具で生産性を上げれば、省エネにつながる。小さな省エネ効果だが、顧客は関心を寄せてくれる。こうした事をコツコツ積み重ねて脱炭素化に進むのではないか。顧客も人が通るたびに発電するといった仕組みを考えたり、試行錯誤しているようだ。だから、現段階でカーボンニュートラルについてどうすべきか誰も分からない。ただ、顧客から「どうしたら良いか」と尋ねられるので、そこには大きな可能性を感じる。

カーボンニュートラルに対する販売店の取り組みは。

キーワードは電気、車、ペーパーレス化だと考えている。当社では電力を再生可能エネルギーの購入に変更し、営業車をハイブリッド車に切り替えている。販売店各社もISOを取得し、環境対策について勉強しているので、最もやるべきことは省エネ製品を売ること。顧客にメリットとなる提案を行い販売できれば、カーボンニュートラルな企業という位置付けになる。メーカーに省エネにつながる製品の開発を促すことも販売店の役割。

今後、販売店に求められることは。

自動車産業も1個流しの生産ラインから変種変量の生産ラインへと生産ラインの考え方が変わってきている。5軸加工機や複合加工機でのワンチャッキング加工や、自動化やDXの要素を加えた物流業務や工具管理などデジタル化も進んでいる。測定もインライン計測になってきた。これらのニーズに応えるにはメーカー1社では難しくなる。いかにメーカー各社を組み合わせ、応えられるかが商社の新しい仕事であり、生き残るための付加価値だと思う。従来の日々の注文をもらいながら、そこで人間関係を作り、さらに、新しいものを提案する。そのサイクルを作るのが商社の営業。これから仕事内容も大きく変化するかもしれない。既存の仕事が7~8割で、新しい仕事が2~3割。基本は残しながらも、新しいことに目を向ける。

社内の取り組みは。

当社も『チェンジ・チャレンジ・クリエイティブ』の3Cを21年の会社テーマに据え、新しいことに挑戦している。今までのように右から左では価格勝負になってしまう。また、外的な要因も増え、ネット通販だけでなく、部品加工の受託サービスも出てきた。販売店の得意としていた領域でも、ネットで簡単に値段と納期が分かる仕組みが生まれ、脅威と感じる。これからのネットとの競争を考えると、ますます価値をどう作るかが問われる時代になった。

ピンチはチャンスとも言われますが。

もちろん。自動車の中身は変わっても、生産台数は現在の9000万台から1億台を超えると言われ、自動車産業の22年の見通しは悪くない。半導体の供給問題があるが、安定すれば自動車は増産になり需要は見込める。

さらに、EV化に向けた投資が動いており、電池やモータ以外にも数多くの部品があり、まだまだビジネスチャンスはある。そのチャンスを取り込むためにも、新しいことに目を向ける姿勢が大切だ。

PART3

モリタ 森田  乾嗣社長「顧客に合わせた変化を」

モリタ
森田  乾嗣社長
(愛知県機械工具商業協同組合  副理事長)

昨年からカーボンニュートラルが大きな話題となっていますが、どう見ていますか。

大手自動車部品メーカー各社は現実問題として具体的な時期を設定したCO2削減に対する数値目標を掲げている。だから、CO2削減につながる省エネ商品を提案していくことが普通になっており、カーボンニュートラルにつながる商品に対するニーズはとても多い。これは従来の商社機能でも十分成果を出せるチャンスだ。地域や顧客に根差した活動を長年継続してきたからこそ、顧客のニーズに応じた商品をしっかり提案できれば商売につながるのは間違いない。ただ、私自身はカーボンニュートラルに貢献する省エネ商品の提案以上に企業としてSDGsにどう向き合っていくかが重要だと捉えている。

それはなぜですか。

企業としてSDGsと向き合っていなければ、ユーザーと取引する土俵にすら上がれなくなる可能性があるからだ。「SDGsが取引の前提条件となる」、そうした声は約2年前から増えてきた。以前なら環境マネジメントの「ISO14001」がそれに当たり、取り組んでいないと取引できない状況が起こっていた。当社も『SDGs宣言』をし、モノづくりと自然環境の調和をテーマに、ISO14001に基づいた3R活動や工場環境の改善につながる商品提案のほか、培ってきた「傾聴力」「提案力」「商品力」を活かし、顧客の持続可能な生産性向上に寄与するサポート体制の充実を図っている。難しいことは考えず、従来ビジネスにSDGsを紐づけられるか考えれば良いと思う。

カーボンニュートラルも同じだと。

従来通りに省エネや環境改善につながる商品を提案する流れは変わらない。SDGsに取り組んでいれば、カーボンニュートラルでも頼りにされる。大事なことは、それが当たり前になる前に先に取り組み、変化した時に土俵に上がれる準備をしておくことだと思う。

カーボンニュートラルは顧客の現場も対応に困っている。今後ますますカーボンニュートラルに貢献する材料や部品、工法開発が進むだろう。そうした商品が開発され、量産になれは、我々にとって、さらに大きなビジネスが期待できる。

今後販売店に必要なことは。

これからユーザーもどう生き残っていこうかと模索する時代になってきているので、従来の提案型の役割ではなく、顧客の新しい挑戦に対し、一緒になって考え、寄り添うようにサポートする。つまり、売り買いの関係ではなく、ビジネスパートナーとしての役割が求められる。そのために必要なことは①情報力②探求力③対話力やネゴシエーションといった力だと思っている。情報は当然だが、探求力は次にユーザーが求めそうな市場や異分野の情報も集め、結びつける力のことで、顧客さえ見えていないニーズを掘り起こすためのものであり、対話力や折衝力といった顧客を説得する能力も必要になってくるだろう。最適な言葉が見つからないが、EV化やコロナ禍だからこそ、柔軟な変化が必要な時だと感じている。

それが付加価値だと。

顧客が変化すれば、自然と我々もそれに併せて変化していく。自動車産業の大変革で他分野への進出を後押しする声も多いが、生き残りをかけて何とかしようと思っているのは顧客も同じ。既存の自動車部品メーカーもEV化や新技術開発への挑戦を進めている。だからこそ、今以上に既存の自動車産業で顧客を増やし、我々に何が求められるのかを注視していけば、新しい道が拓けるはずだ。

日本産機新聞 2022年1月20日

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