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【特集】ユーザーに聞く「良い工具」−トヨタ自動車貞宝工場 ものづくりエンジニアリング部−
いい工具とはどのような工具なのだろうか—。用途や加工、ユーザーによってその解は異なるだろう。しかし、多くの工具を使い、しかも工具を作っている企業に聞けば、正解に近い答えが見つかるのではないか。そうした思いから、本特集の第一部では、5000種類の工具を所有する大手のユーザーでありながら、工具開発も同時に行う、トヨタ自動車のモノづくりエンジニアリング部の工具開発の現場を取材した。合わせて、同部の中山貴司課長に「いい工具」について聞いた。
※メーカー各社に聞く「良い工具」はこちらから
工具先行のモノづくりを
約5000種類、3万7000本—。トヨタ自動車のモノづくりエンジニアリング部が保有する切削工具の本数だ。これだけ多種多様な工具を使いこなすだけでなく、近年では特殊工具の自社開発にも取り組んでいる。「世の中にない製品を生み出すためには、世の中にない工法、金型、設備を造るのが我々のミッション。そのために切削工具は不可欠」(同部第一加工課の中山貴司課長)だからだ。同部の切削工具の開発や取り組みを取材した。(中山氏の役職は取材時。現在は同部生産管理課課長)
自社で工具を開発 −工具メーカーと協業強化−
モノづくりエンジニアリング部は2019年にパワートレーンの「試作」、「金型」、「生産設備」、「生産技術」の4つの部隊が統合してできた部署。新素材や新工法が相次いで登場する中で、生産部の強みを融合し、加工技術を高めるために発足した。中でも、第一加工課はマシニングセンタ(MC)約100台を所有する切削加工の要の部署だ。
現在では、手掛ける部品はパワートレーンに留まらず、幅広い。空飛ぶモビリティや、木材を森林から運び出す装置、静岡県裾野市で建設を進めるスマートシティ「ウーブン・シティ」で必要な装置やモビリティなど「これまでの延長線上にないモノづくりばかり」(中山課長)だという。
そんなモノづくりエンジニアリング部が一部の特殊切削工具の自社開発に取り組み始めたのが、4年ほど前。製品の軽量化が加速し、世の中にない工法、金型、設備をいち早く造るために切削工具が不可欠だったからだ。
中山課長は「以前は工具がないからという理由で、自分たちで加工の制約を設けてきた部分が多かった。しかも切削加工を強みとしながら、特殊刃具はメーカー任せ。これでは世の中にないものづくりは実現できない」。また、「切削工具メーカーに開発を依頼しても数か月かかることがあった」ことも自社開発する契機となったという。
L/D100の工具など特殊工具を自社開発
こうして開発した工具の一つが、L/D60の加工が可能な総形エンドミル(写真①)。これまで金型加工時に放電加工で行っていた深いリブ形状を効率よく切削加工するために開発。リードタイム短縮とコスト低減を図り、現在はL/D100を超える加工と刃具開発にも挑戦中で、さらなる製品軽量化への貢献を目指している。(写真②)
もう一つが刃先に桜のような形状を持たせたCチゼル形状のドリル(写真③)。開発者の名前などから名付けたその形状はすでに特許取得済み。切削工具メーカーにも技術供与しており、刃先の強度を大幅に上げることに成功し、「欠けや折れが全くなくなった」という。
最近では、射出成形時の製品品質を高めるため、カッターマークを極限まで抑えることができるワイパー付きのフラットエンドミル(写真④)を開発。ワイパー機能を持つインサートチップは少なくないが、エンドミルに採用した。面粗度Rz2μm以下を可能にしたことに加え、カッターマークを抑えることで磨き工程の削減につながっている。
こうした自社での開発を進める一方で、工具メーカーとの協業も進めている。高硬度材や難削材対応用などでは、複数の工具メーカーと共同開発している。「我々と工具メーカーはモノづくりするうえで仲間」という意識からだ。
切削工具はより重要に
今後も自社開発と協業は強化していく考えで、人材育成にも工夫を凝らす。現在、同部では約10人が工具管理業務と兼務しながら、工具開発に従事しているが、最近は若手も積極的に担当させている。「工具開発は加工の知見が高いベテラン技能者が向いていると思う。しかし一方で、ベテランからは今までに無い新しい考え方や工法が出てきづらいことも事実」(中山課長)だからだ。
中山課長は今後、工具開発はより重要になるとみる。「これまでは、新しい部品や新素材が出てから、それを加工する切削工具を開発するというニーズ起点だった。しかし、空飛ぶモビリティなどこれまでの延長上にない新しいモノづくりが登場しているので、ニーズ後追い型の開発では遅い。道具が先行していく必要がある」。
トヨタ自動車モノづくりエンジニアリング部
- 住 所 : 愛知県豊田市貞宝町貞宝7
- 責 任 者 : 鈴木健文部長
- 設 立 : 2019年
- 従 業 員 : 1500人
- 事業内容 : 試作、金型、設備、生産技術など。
トヨタ自動車モノづくりエンジニアリング部 中山 貴司課長インタビュー
長寿命、超精密、超微細、高硬度、難削材—。用途に合わせ、切削工具の特長を表す言葉は数多くある。しかし、ユーザーから見て本当に「いい工具」とは何か。トヨタ自動車のモノづくりエンジニアリング部、第一加工課中山課長に自らが考える「いい工具とは」、「工具メーカーに求めること」を聞いた。(中山氏の役職は取材時。現在は同部生産管理課課長)
生涯寿命の長い工具/ダントツ性能の工具
工具の評価基準を
中山課長が考えるいい工具とは。
まず、市販されている汎用的な工具と、特殊な工具によって、定義は異なると思います。汎用的な工具でいい工具とは「生涯寿命の長い工具」です。イニシャルコストが安いだけでは意味がないし、単にランニングコストが良ければいいということでもありません。再研磨、再コーティングを含め、その工具がどれだけ稼げたかということです。特に当社は大量に工具を使うので、生涯寿命の長い工具が多いほど、コストメリットは大きくなります。
特殊工具でいい工具とは。
「ダントツ性能を持った工具」でしょうか。分かりやすく言うと、特長が圧倒的に分かりやすい工具です。特別な材質に強いとか、平面加工の面が極端にきれいに仕上がるとか。こうした工具だけを作っていては、工具メーカーの収益に大きく貢献できないことは分かります。しかし、工具に関する知見の高いメーカーが作った尖がった工具があればテストしたくなりますね。
工具メーカーに求めることは。
ひとつは「切削工具の評価基準を作れないか」ということです。機械加工は条件が多岐にわたるので、工具の基準を作るのは難しいと思います。しかし、基準がないと良し悪しの判断ができません。今は、自分たちで統一の評価方法を決めて各工具メーカーの刃具を評価させて頂いています。人材育成にもつながっていますが、時間と労力が掛かっています。
もう1つは、もっと「一緒にいいものを作っていきたい」ですね。これまでは、どうしても「作り手」と「使い手」に分かれていましたが、これからはそんな時代ではありません。我々も工具メーカーもモノを一緒に作っていく仲間。ニーズの掘り出しだけでなく、シーズの開発も一緒に考えたいですね。
日本産機新聞 2021年2月20日
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