2021年10月18日(月)

特集:食品産業 〜HACCP義務化で変わる食品業界の今〜

 食品衛生法の改正に伴い、食品業界はHACCPに沿った安全・衛生管理に対する対応が迫られている。すなわち、衛生管理の強化が企業の競争力に直結する。そのため、食品工場や食品機械メーカーは安全性を高める活動や製品開発が活発化している。機械工具業界も食品向けを視野に入れた製品開発が進んでおり、ユーザーの課題解決に向けて営業活動が本格化してきた。特集では法改正により安全性や衛生面の強化を図る食品工場や食品機械メーカーの動向を探ると共に、食品業界に向けた機械工具商社の取り組み、食品業界向けの様々な製品を紹介する。

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① 食品工場ルポ 共親製菓(名古屋市) 〜衛生管理認定を取得〜

異物混入排除をテーマ −見える化、ルール化−

 「金属異物を危害要因に設定しトラブルが起きても解決できる仕組みを作ってきた」と話すのは共親製菓の安部隆博専務。同社は子供に大人気の『さくらんぼ餅』や『こんにゃくゼリー』、『半生大福』などを製造する菓子メーカー。直近は機械工具商社のノダキ(名古屋市)とコラボした熱中症対策商品『現場の相棒 塩ビタミンゼリー』を発売し好評を博している。2018年に菓子メーカーとして最初の「名古屋市食品衛生自主管理認定」を取得、HACCP義務化を見据え、現場の安全面や衛生面を強化した。

食品と作業者の安全守る
製造、包装、梱包などの工程がある

 HACCPで重要なことは重要管理点(CCP)を明確化し、見える化やルールを設け、危害要因を排除する仕組みを作ること。食品工場は材料投入から製造、包装・梱包など様々な工程があり、作業者が食品に近づく機会も多く、何が危険なのか見える化やルール作りが重要になる。「当社は金属異物をターゲットに仕組みを作ってきた」とは同社の商品開発・品質管理を担当する伊藤清仁氏。異物混入を排除するため、カメラ検査機や金属探知機の導入、チェック体制を強化してきた。例えば、機械メンテナンスや賞味期限の2重チェックなどチェックリストを作成し、管理責任者を設け、問題の早期発見、対応につなげている。さらに、従来行っていなかった金属探知機など機器のメーカーメンテナンスを年1回に設定、動作確認といった確認事項も増やしている。こうしたルール化が衛生強化の第1歩。「1年ごとにルールの見直しも行っている」とルールや社員教育がHACCP認定で重要だと説く。

 続いて取り組んでいるのが5S活動。「HACCPは品質管理の安全確保、5Sは安全に作業するための手順作り(見える化)」と安部専務。手洗いやメンテナンス方法などイラストを作成。また、作業者の移動量を分析し、最小限の移動で作業ができるレイアウトに変更するなど、安全で快適な職場環境を整えてきた。機械の汚れも速やかに清掃することでライン停止時間も減少し生産性が向上。当然、衛生面強化にもつながる。「コロナ禍で売上は減少したが、利益率は上がった」と安部専務は5S効果を実感。今後も5S活動を会社の基盤にし、事故がない安全な職場を図ると共に、作業者の多能工化も進めている。

 今年12月、前述のノダキに加え、森永乳業と新商品「現場の相棒 乳酸菌GABAゼリー」を発売。安部専務は「今後もこうしたコラボ商品や海外への販売を強化したい。そのために賞味期限を延ばす方法を考え準備を進めている」と抱負を語った。

会社概要

  • 本  社 : 名古屋市西区名西1‐15‐2
  • 電  話 : 052-521-5581
  • 代表者  : 安部隆三社長
  • 創  業 : 1947年
  • 従業員数 : 48人
  • 事業内容 : お菓子の製造、販売

②食品機械 レオン自動機・開発設計部  細谷  昌樹次長に聞く 〜構想段階でDR採用〜

 食品衛生法等の改正で食品機械メーカーは衛生面強化に取り組んでいる。お饅頭やチーズ入りハンバーグなどを製造する包あん機で有名な食品機械メーカーのレオン自動機は安全面や衛生面を強化した次世代型包あん機「火星人CN700」を開発。どのような対策を行ったのか、開発設計部の細谷昌樹次長に聞いた。

トレーサビリティ強化 〜自動化&IoT訴求〜

火星人CN700

今回の取り組みは。

 構想からデザインレビュー(DR)を採用し、企画、製造、技術など各部署の有識者で問題抽出から解決まで事前に行い、3D設計上で安全性・衛生面など確認する手法を取った。

特にこだわったのは。

 食品機械は、作業者が機械に触れる時間を短く、生産性を向上させる設計が重要だ。CN700は計量精度を重視し、重量安定性を高め、良品精度を20%向上させた。2段コンベア仕様で小物製品は毎時最大5100個生産することができる。また、コンベアの高さ調整はこれまで球状や俵状など食品によって作業者がハンドルで調整していたが、サーボモータによるモーション制御を採用し、タッチパネル操作で調整を可能にした。作業者負担も減り、衛生面強化や食品ロスにつながっている。

機械の清掃面は。

 軽量化をテーマに部品の薄肉化に取り組み、従来比4㌔軽量化させた。材料変更はないが、SUS303や304の採用が多く、ユーザーや機種でSUS316・316Lを求める声もある。

生産面の取り組みは。

 法改正と同時に機械メーカーには適正製造規範(GMP)から食品機械に使われる材料の規定が行われ、ポジティブリストにある材料しか使用できなくなった。例えば、食品に触れる合成樹脂は規定され、ユーザーから求められれば証明書を発行する義務がある。

安全強化が必要に。

 そこで材料や購入部品や加工部品のトレーサビリティを強化している。また、材料メーカーの証明書発行は努力義務のため、発行してくれるメーカーとの取引も重要だ。

今後について。

 適正な材料入手と安全性と操作性を両立する機械の開発がテーマになる。CN700は前機種より一層、IoTに取り組み、最適なメンテナンスや生産性向上を提案している。IoTで様々な情報を管理し、現場の自動化や衛生面強化を訴求したい。

機械工具業界へ要望は。

 機械の丸洗いが求められており、市販部品は水・蒸気・粉に強い防塵対策や食品用グレードの潤滑油対応が必要だ。また、火星人は海外にも幅広く販売しており、各国の規格に遵守する必要がある。モータなどグローバル対応も進めてほしい。

最後に。

 社是である『存在理由のある企業たらん』を使命だと思い、SDGsや人では困難な作業を機械化や自動化で解決し、食文化を守っていきたい。

会社概要

  • 本  社 : 栃木県宇都宮市野沢町2‐3
  • 電  話 : 028-665-1111
  • 代表者  : 田代康憲社長
  • 創  立 : 1963年
  • 従業員数 : 967人
  • 事業内容 : 食品機械の開発・製造・販売

③商社の取組み 〜「市場開拓」狙う商社〜

勉強会やチラシで販促 / 対応製品を絞り込み

ユアサ商事は展示会で自動化ラインを出品した
南出キカイはステンレス製品をアピール

 HACCPの義務化に伴い、工場環境の整備や機器の入れ替えが必要なるため、ビジネスチャンスと捉える商社は多い。特に今後ターゲットとなりそうなのが、中小規模の食品工場などだ。

 ジーネットの田中光副本部長は「大手は(HACCPに)対応しているところが多いが、年商10億円未満の工場はこれから」と指摘。特に「圧縮機や運搬など製造ラインの周辺はチャンス。食品工場は生産技術を持たないユーザーも多く、機械工具商が対応できる」とし、関連商品の絞り込みをしている。

 南出キカイも関連製品を明確にする。さびや塗装剥離のないステンレス製品を「洗えるステンレス機器」としてカタログ化。サニタリーポンプ、換気扇、撹拌機、モータなど扱いを強化している。

 大喜産業が扱いを増やすのは協働ロボット。形のバラつきや、頻繁な商品の変更などから、完全自動化は難しいとされてきた食品業界に対し、協働ロボットによる自動化と安全性を考慮した提案を行っている。

 販売店にHACCP対応への理解を深めてもらう動きも多い。ジーネットは「食品工場のHACCP義務化に向けて」と題した簡単解決カタログを作成。セミナーなどと合わせて、販売店と一緒に拡販を進める。南出キカイも勉強会を開くほか、「ステンレス機器がなぜ必要になるのか」などをテーマとしたメールマガジンの配信や、専用チラシを配布している。

 実際に製品を見せることができる展示会も有効な手立て。ユアサ商事は、11月に開いたウェブとリアルを融合した「グローイングフェア」で食品工場を模したラインを設置し、お菓子の梱包から出荷までの自動化を展示。AIとカメラを活用し、事故を防ぐ仕組みを紹介するなど、新たな提案を行った。

 HACCP義務化は食品工場だけでなく、製造、加工、調理、販売までが対象になるので、町の飲食店や企業の食堂なども当てはまる。HACCP対応の強化することは、商圏の拡大にもつながる。

 

日本産機新聞 2020年12月20日

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