2024年4月18日(木)

【特集】ー事業継承ーについて販売店へアンケート2
どのような悩みや覚悟、目標があるのか?

回答60社

83%が子供や親族に継承

 今回の機械工具販売店へのアンケートは、経営のタスキを次代に渡す現社長にも事業継承でどのような悩みや期待があるのかを聞いた。「社長候補が決まっていない」「いつ交代するのがベストなのだろうか」-。そうした課題や悩みを抱えつつ、経営理念を引き継ぎ事業を継続できる人材を探し帝王学を指導する経営者の姿が見てきた。

【特集】ー事業承継ーについて販売店へアンケートどのような悩みや覚悟、目標があるのか?

アンケート回答者 北から南から

回答者の年齢

従業員規模

 今回のアンケートは全国の機械工具販売店約130社に実施し60社から有効回答を得た。回答者の本社所在地は関東・甲信越が36%、関西が32%、中部11%、東北11%、北海道5%、四国・九州が3%だった。
 従業員規模は1~10人が25%、11~20人が25%、21~50人が24%、51~100人が18%、100人以上が8%。回答者の年齢は30代が5%、40代が25%、50代が37%、60代が30%、70代以上が3%。地域や事業規模、世代などでバランスの良い回答を得た。

 

Q事業継承税制改正を知っていますか?

50%以上「知らない」

 事業承継税制改正について尋ねたところ、「知っており準備を進めている」が7%、「知ってはいるが、活用は考えていない」が37%と40%強が税制の改正を理解している。
 一方で25%が「知らなかった」、30%が「知ってはいるが、詳しい内容までは知らない」と回答。合わせると50%以上の企業が税制改正でどのようなメリットが享受できるか理解していない。
 税制改正の有効活用が10年(計画書提出期限は5年)のため、10年以内での事業承継を検討するならば、全ての企業に有効かどうかは別にしても、優遇を得られるなら活用を考えたいところだ。

Q1.後継者はいますか?

48%が「いる」と回答


 回答者の48%が「後継者がいる」と答えた。しかし残りの約半数は「探している」、「いない」状態で、後継者不足に課題を抱える販売店が多いようだ。

Q2.「いる」一方、後継者は誰ですか?

「社員」「外部人材」少数


 58%が「子供」、25%が「親族」と一族に事業を継承したいと考えているという回答が83%に達した。一方、「社員」11%、「外部の人材」3%と親族以外の人に継ぐ人は少数だった。

Q3.その後継者を選んだ理由は?

「子供」最も信頼できる

 後継者を選んだ理由について、「子供」「親族」と答えた人は「子供がいるのならば子供に継がせるのが一番問題がない」、「最も会社の歴史、そして私のことを理解してくれている」と「まだまだ家族経営を抜け切れていない」など、子供や親族が最も信頼のおける身近な存在だからとする答えが多かった。そしてこれは殆どの回答者が「株式譲渡がスムーズ」と答えた。

Q4.「探している」方、候補は誰ですか?

「社員」が33%


 意外にも多かったのが「社員」や「外部人材」という親族以外で探しているという回答。なかでも「社員」という回答が最も多く、33%となった。少子化によって「子供」から後継者を探すのが難しくなっていることのほかに、より広い範囲で後継者に適した人物を選択できることや会社の経営や文化をよく知る人物に承継できることなどが理由に挙げられる。

Q5「いない」方、将来会社をどうする?

同業者に譲渡


 「売却」という回答が40%を占めた。近年あらゆる業界でM&A(合併と買収)による事業承継の事例が増えており、機械工具業界でも検討している企業は少なくない。ただ、売却先の選定など課題も多く「同業者に商権を譲渡する」という声もあった。

 一方で「未定」とする回答が60%となった。回答者の4分の1が5年以内に会社を引き継いだということもあり、「社長に就任したばかりでまだ考えられていない」という回答が多くみられた。

また、「子供に継がせたいが、まだ幼いのでどうなるか分からない」という声や「この先の景気状況や業界動向を鑑みて後継者を探して承継させるか判断したい」とする回答もあった。

Q6事業継承の課題は何か?

同業者に譲渡


 事業承継の課題として最も多く挙げられたのが、そのタイミングだった。「何歳で次期社長に事業を渡すか」という質問に50%が「60代」、43%が「70代」、6%が「80代」と、どのくらいの年齢や時期が最適なのか悩んでいるようだ。

 次いで多かったのが、「後継者の選定・決定」。回答者のうち約半数が「後継者が決まってない」と回答(Q1)しており、課題と考えている経営者が多いようだ。

 その次が「後継者の育成」。後継者自体もそうだが、その後継者の参謀となる人材の育成も重要課題となっている。ある経営者は「何か決めるときに自分と同じレベルで相談できる相手がいると心強いし、より正確な判断ができる」。

Q7後継者に期待することは?

理念・文化を次代に


 「経営理念を引き継ぐ」「社風を引き継ぐ」といった現在の企業文化を受け継いで欲しいという回答だった。その一方で「自社の強み・弱みを知る」という回答も多く、内部環境をしっかりと把握し、自社に合った戦略で時代の変化に対応することも求めているようだ。

 新たに期待することとしては、「事業の垂直展開」「事業の水平展開」「新規エリアへの進出」などが挙げられ、中には「ビジネスモデルの転換」という回答も多く、現状に危機感を抱く経営者も少なくはない。

 また、売上に関しては「売上規模の拡大」を期待する回答は少なく、「利益の拡大」を期待する回答の方が多かった。

Q8後継者に何が必要ですか?

コミュニケーション力

 後継者に必要な能力として最も回答が多かったのが「実行力」。次いで「決断力」だった。「会社のトップとしてこの2つは最低限必要な能力」と話す経営者もいるほど、重要な能力として捉えられているようだ。

 3番目に多かったのが「コミュニケーション力」。内部分析や理念の浸透のためには、社員とのコミュニケーションが不可欠。また、取引先や同業者など社外での人脈づくりにも欠かせない能力となっており、必要だと考える経営者は多い。

 そのほか、「経理・財務知識」「指導力」「人脈」「誠実」「調整力」と続いており、中には「優先順位や得手不得手はあるだろうが、全ての能力が必要」という回答もいくつかみられた。


販売店経営者の声

継ぎたいと思う魅力ある業界に

 事業承継における課題や悩み、今後の計画などについて尋ねた今回のアンケートには機械工具販売店経営者の様々な声が寄せられました。変化が激しい時代における次期社長の手腕への不安や、事業を継ぎたいと思うように業界の魅力を高めるべき…などいくつかの意見を紹介します。

●中小零細から上場企業まで混在し、さらにネット販売、通販業者が入り乱れるこの業界で生き残りをかけて、子供を含む親族に事業を継承させたいと思うほうが少ない。子供に継がせたいと皆が思うようなもっと魅力ある業界にするためには、どうしたら良いのでしょうか?大きな課題だと思います。子供の次はどうなるかは不安ですがM&Aなども含め、生き残りを考えた長期的なビジョンでの対応が必要と思っています。

●いつまでも社長でいたい現役の方を見受けますが体力のあるうちに後継に譲らないと痛い目に合うと思います。

●一番の問題は事業継承時の自社株かによって相続税が決まること。頑張って良い会社にすればするほど相続税がかかる。子供に借金をさせてまで継がせたくないので、会社売却との決断をしたということもあった。現在この点はかなり改善されているらしいが1千万円の資本金であれば1千万円の評価で相続税をかけるべきだと考えている。

●経営者は私欲を捨てて会社のこと、社員のこと、お客様のこと、仕入先のことを考えれば後継者に困ることもなくM&Aにおいても問題は起きないと考えております。

●世の中の変化に伴い、機械工具商の商いの仕方も大きく変化しつつある。日本の人口減少、EV化、IoT、ロボット化など今まで考えられない状況が生まれており、社長受難時代が到来していると思います。事業継承には単に現在までの仕事を守るだけでは生きていけず、資産、ノウハウ、資金、人脈をフルに活用し、次代のビジネスを創り上げる必要があります。事業継承したからには会社をより発展させるとの気構えと実行力が必要です。

●先代に何も言わず見守っていただけるのが、本当にありがたいです。

●恐らく当業界は今後、相当考えないと事業継承が厳しくなるだろう。そのために「一定の規模」がどうしても必要になると思われる。そして、その規模の企業を少なくとも経営できる能力が経営者にないと難しいだろう。当業界は組合も全国規模で存在しており、今後は個別の生き残りというより、こういう組織で再編・統合を主導しても良いのでは。事業継承は次の時代の必要性に応えられる企業と経営者がやることだと思う。

●全てを任せる勇気がないなら事業継承はするべきではないと最近、思います。

日本産機新聞 平成30年(2018年)8月5日号

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