2024年11月23日(土)

販売店5社が語る 未来を拓く戦略
第1部ー直面する課題ー

勝ち抜くカギは「人」

座談会出席者(50音順)

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岡本機工
岡本 幸久社長
 本社は大阪府堺市、 社員は15人。 工作機械や切削工具をはじめとする機械工具を販売するほか、 機械・装置の基礎工事、 建屋建設や機械器具の設置なども請け負う。 営業エリアは主に南大阪で、 大阪市内の一部も。 事業規模の拡大を図るのではなく、 少数精鋭を重視する堅実経営をモットーにする。

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サカイ工機
小林 洋介社長
 本社は大阪市東成区、 社員は20人。 ねじの製造機械・検査向けの専用機械や塑性加工に携わる機械や工具・特殊搬送装置がメインで、 工作機械、 精密測定機器・切削工具、 空調設備、 エアー機器などを販売する。 最近では極圧潤滑剤や機械用センサーをメーカーと共同開発している。 営業エリアは全国区へと広げている。

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三和精密
鹿村 佳孝常務
 本社は大阪府東大阪市。 切削工具、 工作機械、 工場用品、 工作機械周辺機器のほか、 環境製品 (クーラント循環ろ過装置、 浮上油、 浮遊物回収分離装置など) も取り扱う。 営業エリアは、 東は京都、 西は岡山、 南は和歌山まで。 創業から、 主な取引先は大手ユーザー。

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大徳機工
横山 欽一社長
 本社は大阪市西区立売堀、 社員は26人。 機械工具や工場設備をはじめ管理機器、 工場環境機器などを販売している。 営業活動の地域は、 近畿が中心。 顧客の殆どが大手企業。 現在、OMJC(大阪機械工具商青年会) の会長を務めている。

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横山機工
横山 利治社長
 本社は大阪市福島区、 社員33人。 工作機械や切削工具、 伝導・制御機器、 ポンプなどを取り扱う。 金属加工子会社を持ち、 部品加工や機械のメンテナンスなども手掛ける。 機械工具商でありながら、 加工事業にも参入したことによりユーザーの気持ちがよく理解できるようになったという。

ニーズに応える力

知恵や技術、次代へ

 機械工具業界では、 堅調な自動車産業などに支えられ、 また円高是正、 設備投資補助金、 投資減税などもあり、 リーマンショック後の低迷から回復基調にある。 一方で少子化やグローバル化の進展による製造業の海外移転、 ネット販売の参入など懸念材料も多い。 機械工具流通業界は、 各社各様の課題に取り組み、 事業の継続・発展を図っている。 日本産機新聞は新春号特別企画として座談会を開き、 大阪の販売店5社の経営者・経営幹部に 「未来を拓く戦略」 について語ってもらった。 その第一部のテーマは 「直面する課題と取り組み」。 販売店の競争力の源泉ともいえる 「人材」 に苦悩しつつ、 前を向き挑戦する姿が浮かび上がった。

司会 機械工具業界の景況はこのところ上向いているように感じます。
 
小林 近況は良いです。 アベノミクス効果もあるかもしれませんが、 助成金が後押しとなり、 当社の業績は良い水準で推移しています。

横山 (横山機工) 当社も受注がまずまずで、 今年4月の決算は過去最高の売上となりそうです。 ただ、 今の好況を信用していません。 今は助成金が受注を押し上げていますが、 無理に設備投資を煽ると反動が怖い。 まだまだ好景気が続くと考えている人もいますが、 設備投資の先食いをしているだけで、 好転している確たる要因は見受けられない。 来年どうなっているかはわかりません。
 
岡本 同感です。 今のバブルは間違いなく過剰投資と考えています。 あと一回補助金があるようですが、 終われば弾けるかもしれません。 消費税が上がった途端に反動があるかもしれません。

小林氏 「働きたい」と思える職場を

   採用   

司会 短期で見ると好況のようでも経営環境はなお混沌としているようです。 そんな中で課題は何だとお考えですか。
 
横山 (横山機工)  何より、 人です。 新卒の採用が難しい。 この2年間採用していなくて、 昨年募集し内定も出したのに、 全て蹴られました。 人口が減少している上に大手企業がどんどん人を採っていくので中小企業に人材がまわってこないという感じです。

司会 採用の目的は。
 
横山 (横山機工)  営業力の強化です。 取引する全てのお客様への訪問活動がしっかりとできていなくて。 営業のマンパワーが足りていないんです。 昨年は中途で2人入社しましたが、 できれば新卒を採用したい。
 
横山 (大徳機工) 採用が難しいのは職場の立地にも要因があるかもしれません。 大阪ならば、 利便性が良くて都市部の西区だと採用し易いとか。 今どきの若い人は家から会社まで近い、 あるいは繁華街に近いなどの理由で就職する会社を決めるそうです。

司会 採用はどんな方法を。 
 
横山 (横山機工)  合同会社説明会などです。 東京の説明会では、 とても優秀な人が応募してくれましたよ。
 
小林 当社では、 就職サイトを使い、 当社の業態に興味のある人に応募して貰い、 採用したい部門の社員が面接するようにしています。 各部門で 「この人を採用したい」 と思う人だけ社員が自ら面接します。 自分の部下になるのだから真剣に選んでますよ。当社では中途と新卒を1人ずつ2年に一度採用し、 同期社員をつくってあげるようにしています。

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岡本氏 雨漏りも治したいと思う感性

   定着率   

司会 採用した人の定着率はいかがですか。

小林 業態が特殊なので、 仕事に感性が合わない人がいます。 その逆のケースもあるのですが、 定着して貰うために、 『こんな環境の職場なら働きたい』 と思える会社づくりに力を入れています。 色々あるのですが一番力を入れたのが事務所、 会議室、 セミナールームの改装や新設です。 おかげで定着率が上がりました。
 
鹿村 会社の雰囲気はとても大事なことなのかもしれません。 採用活動をすると学生から 『社員の皆さんは仲が良いですか』 『綺麗な職場ですか』 と最初に質問されます。
 
小林 メディアの影響もあると思います。 私自身が入社する時そうでした。 自分ならこの会社で働きたいか、 働きたくないか。 自分が働きたくないなら、 他の人もきっとそう思うはず。 それならまずその原因を改善しよう。 それが心地よく働ける環境をつくる第一歩じゃないかと思います。
 
司会 機械工具商に適性はありますか。

岡本 お客様に喜んで貰って嬉しいと思える人は、 機械工具商で働くのに向いているのではないでしょうか。 逆に言えば機械工具商の営業には、 喜んで貰ったことに嬉しいと思える感性が必要なんです。 例えばお客様の工場を訪ねて、 屋根から雨が漏れている。 それを見て何も感じないのか、 雨漏りを直してあげたいと思えるのか。 そういう感性があれば雨漏りの保全の仕事も頂いて、 お客様に喜んで貰えるかもしれない。 機械工具商の営業は、 豊富な知識や技術を持ちながら、 敏感なアンテナを持っていることが重要です。

司会 そういう人がお客様に満足感を与え、 受注も増やす。 営業として大切なことですね。

横山 (大徳機工) その通りです。 当社ではお客様の営業担当を変えたことで注文が減ることがあるんです。 その理由は前任者と後任者との営業レベルのギャップによる不満感です。 人の力が受注をはじめ事業展開の成否などに大きく影響すると感じています。

横山氏(大徳機工) 要望をしっかり捉える力

   人材育成   

司会 人の育成が最重要になりますね。

横山 (大徳機工) 人材育成は、 まず商品や技術的な知識について、 取引する卸商社にお願いし研修会を開いて貰っています。 卸商社の方々は当社の営業を育てることが当社との販売における連携強化につながると考えて、 意欲的に協力して下さいます。
 一方、 人間力向上は社内で私が直接、 営業に指導しています。 機械工具商はお客様と直接お会いして会話し、 困り事や求められたことに応えなければいけません。 そのために大切なのは、 挨拶や丁寧な言葉遣いなど社会人としての基本的なマナーをしっかりと身につけることです。
 
司会 それは例えば。

横山 (大徳機工) お客様を訪問した時、 またその場を失礼する際は必ず挨拶をする。 お客様に食事をご馳走になったら、 翌日必ず感謝の気持ちを改めてお伝えする。 そういった社会人としての基本を最も大切に指導しています。 日々の業務の中で気づいたことはその場で、 そしてくどいほどにも言い続けています。

司会 人間力の基礎は社会人としてのマナーということですね。 では、 受注を伸ばすためにどのような指導をされていますか。
 
横山 (大徳機工) お客様の気持ちになることです。 その場面によってお客様との会話や表情から、 求めていることをより正確に掴み取り、 求められていること以上に応えることです。 早さなのか、 精度なのか、 深い情報なのか。 その時のお客様の立場に立って 「要望」 に応える。 例えば、 見積もりでも、 速さを求めているならその日のうちに答える、 深い情報を求めているならじっくり時間をかけてつくる。 お客様の 「要望」 をしっかりとヒアリングして応える力が大切だと思います。

小林 そうですね。 お客様の求めることを理解して、 プラスαのアドバイスや提案ができる、 また見積りには金額だけでなく、 必要な情報も加えるといった営業は受注も伸ばしています。 そういう営業は他店の納入価格と比較した価格交渉でもそれほど厳しく迫られません。 きっとお客様にとって、 頼りになり、 取引する相手として気持ちいいのでしょう。 自社がお客様にどういった提案やサービスができるのかを理解し、 また苦手なものは苦手を言えるような営業になるように指導しています。

司会 そんな営業がどんどん増えるといいですね。

小林 会社として営業を後ろから支援する仕組みも作らないといけないとも思っています。 お客様とメーカーの間に立って、 当社しか相談、 提案の橋渡しができないような専用機械の取り扱いを増やすなど、 営業活動で優位に立てるようにしてあげたいと思っています。

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横山氏(横山機工) 意欲ある人はいつまでも

   定年者の再雇用   

司会 高齢化社会と言われる中で、 定年延長の話もあります。

横山 (横山機工)  当社の定年は65歳ですが、 働く意欲のある方には継続して働いて頂いています。 長らく社業に貢献してくれましたから。 勤務時間も希望に合わせています。 自分で 「辞めたい」 と言うまで働いて頂いたらいいと思っています。
 
岡本 当社は定年が60歳で、 つい先ごろ、 再雇用で働いてくれていた65歳の人が辞めたんです。 定年の時に 『これからも働いて欲しい』 とお願いし5年勤務して貰いました。 60歳で退職金を支払い、 その後5年間の給料はそれまでと同じ条件で、 辞めたときには5年分の退職金を払いました。

司会 ベテランに期待することは何ですか。
 
岡本 若手の指導です。 当社のベテランの人たちは若い人をうるさいほどに指導してくれます。 ただ、 若い人はそれ以上にしぶといんですけれど (笑)。 人は大切だとつくづく感じています。

鹿村氏 事業継承に必要なこと整える

   後継者   

司会 「人材」 と言えば、 事業承継も課題の一つです。
   
鹿村 私にとっては直面する課題が事業承継だと感じています。 当社社長は私の妻の叔父にあたり、 息子がおりません。 私は今年40歳になります。 今すぐに社長を交代するということではないですが、 近い将来には引き継いでいかないといけないという切迫感があります。

司会 準備期間ということですね。
  
鹿村 そうですね。 会社運営において現在は、 社長がいて、 私が常務としていることでうまくバランスが取れていると思っています。 新しい体制に変えていったり、 新たなことに挑戦したり。 そうした環境のなかで事業を引き継いでいく上で必要なことを整え、 身に着けていかないといけません。

第2部 ー勝ち抜くための取り組みー に続く...

日本産機新聞 平成28年(2016年)1月5日号

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