2024年4月19日(金)

トップインタビュー コマツ執行役員 大阪工場長 岩崎章夫氏に聞く

中型油圧ショベル、日産30台

建設機械・鉱山機械の雄・コマツがフル稼働に入った。全地球測位システム(GPS)を搭載した26万台(2012年3月末現在)の建機が、世界の現場で稼動率を上げており、いち早く市場の動きに適応させた。背景は、排出ガス規制前の「駆け込み需要」に加え、インフラ整備、本格的な震災復興と2020年開催のオリンピック特需が重なり、息の長い需要層に入った、と見られる。このため、工場建屋の統廃合、生産性(機械整備)の最適化、稼働率の向上、コスト低減にも着手した。2月26日、伝統ある大阪工場(枚方市)を訪ね、第28代大阪工場長、岩崎章夫執行役員に大阪工場の現況と今後についてお聞きした。

世界各地の生産拠点の
中心的役割を担うマザー工場

―大阪工場の足元の生産状況は如何ですか。
 「最新の2013年度生産計画は、8500台、日産35台前後です。このため、3ラインある大阪工場の中型油圧ショベル(160~400t)と大型油圧ショベル(600~2000t)、ブルドーザの生産現場はフル稼働中です」
 ―生産状況は。
「14年1月の販売・生産ベースは、13年度生産台数が計画比8.8%増の9251台です。うち量産の中型油圧ショベルが年産7021台、日産30.5台で、他に大型油圧ショベルが年産1142台、ブルドーザが同1065台、六甲工場置きのブルドーザが同23台となっています。排出ガス規制前の駆け込み需要が見られます」
―巨大な建機が、日産40.2台とは驚きです。
「後程、中型油圧ショベルの量産工場を見ていただきますが、平均ピッチタイム16分に1台を生産しています」
 ―大阪工場の位置付けについて。
 「今年、開設62年を迎えます。一貫していえることは、操業開始以来、油圧ショベル、ブルドーザの生産拠点としてコマツグループを牽引していることです。また、コマツの世界における技術開発と生産改革の発信基地であり、世界17工場のマザー工場としての開発製造機能を有する役割を担っています。さらに加えれば、日本の製造業の西の“砦”役でもあると自負しています」
 ―巨大な敷地です。
 「甲子園球場に例えれば、約17個分が入る54.5万㎡の敷地に7つの工場を抱えます。ここは、元々大阪陸軍造兵廠枚方製造所の跡地で、今も当時の建物を残し、築70年以上の建物が40%占めます。ずーっと忙しい工場でしたので、工場の修繕が常に後回しになってきたのが原因です。今後は、工場の最新化を計画しています」
 ―甲斐田門の広場に7階建ての近代的なビルがそびえています。
 「本社直轄の生産技術開発センターです。ここでは3つの機能、生産工場、商品開発拠点、新生産技術開発拠点役を担い、世界のコマツグループに技術開発と生産改革を推し進める一方でマザー工場役を具現化しています。例えば、ここでは中大型油圧ショベルの開発と大型ブルドーザの開発・一極生産、両製品の生産技術開発を行いながらグローバル拠点の役割を果たしています。また、部品は、中型油圧ショベルのコンポーネントと足回り部品の開発及び生産技術開発をグローバル展開しています。さらにマザー工場としてグローバルで海外チャイルド工場の支援も行っています。チャイルド工場は現在、6工場と11の機種・部品の工場を有しています」
 ―マザーとチャイルドの工場連携はどのように。
 「例えば、コマツの油圧機器の基本設計は、世界統一図面です。いざとなれば世界のチャイルドブランドで生産する部品は、各工場でも流用できますのでグローバル調達も可能です。昨年、大阪工場は非常に忙しく、イギリス工場からアメリカへ機械を出す、タイから南米へ出荷するなどグローバルに展開し、事なきを得ました。まさに基本設計が功を奏した例です。負荷の標準化を図っています」
 ―それは凄い事です。簡単ではありません。
 「基本がしっかりしているため部品は世界共通です。骨格が一緒であればどこで生産してもドンピシャで繋がります。このため、中国工場で部品を安く造ることができれば中国から世界のコマツの工場へ出荷することも可能です。納期が的確になり世界中のお客様に喜ばれています」
 ―設備機械の特長は。
 「現有能力を高能率に稼働させることが基本です。機械メーカーさんは、市場が最も大きい自動車産業向けのライトな機械を造るのが得意で、我々のようなヘビーでニッチな機械は苦手ですから、機械によりますがわれわれ生産技術が自前で開発をしています。例えば、コマツ製溶接ロボットなど」
 ―強みはどこですか。
 「シミュレーションを使い製造プロセス現場を“見える化“し、素材から鋳造・鍛造プレス、機械加工、溶接までを最適加工条件にしたこと。加工時は、瞬発稼働に入ることができることです。これらは、工具が鉄を削る際に工具の先端がどのような温度分布になるのかシミュレーションし、最適条件になると工具のすくい面が高温になりますので、その条件を探し求め、稼働率を上げてきた成果です」
 ―現有設備台数は。
 「工作機械は約200台、溶接ロボットは70台を数えます。昔はもっと多くの機械設備を持っていましたが、社内加工を極力減らし、パートナー企業、コマツみどり会に仕事をどんどん出しています。
 ―新年度の設備投資は。
 「設備は短期に合わせてもいけません。長期的に見ています。例えば、市場規模が大きい中国市場。春節明けの3カ月間に需要の4割強が集中するため標準化が難しい。このため、設備投資は、長期的に判断をしなければ痛手をこうむる。ただ今後3年間で国内4工場の生産性を3~4割高める目標にある」
 ―お忙しい中、談論風発で忌憚ないお話をいただき有難うございました。建機が日本の製造業を牽引する現況と今後の見通しを知る事ができました。

コマツ大阪工場岩崎工場長。002
【岩崎章夫氏】
 1981年4月小松製作所(現コマツ)入社▽97年1月建機事業本部大阪工場製造部技術課長▽99年8月生産本部大阪工場製造部組立課長▽2000年10月英国コマツ社長付▽04年9月生産本部生産技術開発センター副所長▽06年4月同センター長▽11年4月執行役員生産本部生産技術開発センター所長▽12年4月執行役員生産本部大阪工場長、現在に至る。

日本産機新聞 平成26年(2014年)3月15日号

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