2024年3月28日(木)

感動!16分に1台の生産ライン
<コマツ 大阪工場 建機第2工場(枚方市)>

中型油圧ショベル増産中

20120303PC210LC 151 2.ブルドーザ375A。_R

 コマツの主要建機、中型油圧ショベル(PC200-10)の大きさは、全長約9.4m(輸送時)、全幅2.8m、全高3.1m(同)、作業範囲10mもある。見上げるほど大きさのショベル(20tクラス)が、昨年末から増産に入っている。

 コマツ大阪工場の第2工場では、平均ピッチタイム、16分に1台を組立てる。日産42.2台、これほど量産が出来るところはない。競争力は群を抜いている。昨年末比20%増を続けている。コマツ大阪工場第2工場は活況の中にあった(2月26日)。

工作機械設備は200台強

切削工具年間2億円

 全長130mの組立てライン。2本が平行して並ぶラインに隣接する第3工場(中型油圧ショベルの溶接一貫工場)から地下道を通って運び込まれる上部旋回体と下部走行体の各構成部品が乗っかる。

 旋回体のラインは1分に450mmの速さで、走行体は15~20分に1回のタクトで次工程に自動搬送する。わずか16分に1台の中型油圧ショベルが完成する様は、ゆっくり、しかし瞬く間にショベルの形になる。感動ものだ。ちなみに、大型ショベルのピッチは、60分に1台、超大型は240分に1台が作られる。きっと壮観に違いない。

 スイングサークルと呼ばれる大型ワークの工程では、熟練技能者3人と3台のロボットが走行体に取り付ける。グリースを素早く注入する作業は15年前からロボットに代わった。3Kといわれる作業環境を、コマツは素早くロボットや自動化機器に置き換えた。足回りの履帯(クローラ)はホイストで吊り上げ、走行体に巻きつける。

 また、組立て作業現場には常時組立て手順や部品情報を確認するPAD(液晶ディスプレー)常時現場に設置され、作業者はいつでも手元作業を確認することができるようになった。これまで、判らなくなった場合は、ラインを止めて事務所に駆け込んでいたが、導入後皆無になり、組立て効率が格段に高まった。

 各工程では、部品が動くたびに3、4通りの警告音や音楽が流れる。事故を未然に防ぐための知らせ音。熟練工の人たちが無駄なくキビキビ働く姿勢が最高のショベルを作り出す。部品は、各工程を経るたびに形を成し、ショベルに変わって行く様は驚かされる。

3.中型油圧ショベルの下部走行体。_R 4.中型油圧ショベルの履帯(クローラ)取付け作業。_R 5.ハイブリッド油圧ショベル用Swing_Machinary_Assy。_R

部品点数1万3000点
 ショベルの部品点数は約1万3000点。各工程でアセンブリされ7千点から8千点に絞り込まれる。

 コマツは、主要コンポーネントを自前で生産している。大阪工場は走行減速機などを、小山工場はディーゼルエンジンや油圧機器を、粟津工場はトランスミッション、湘南工場では制御コントローラ、モニタ、ハイブリッドコンポを、という具合。

 このキーコンポーネントは、それぞれ主要組立工場に出荷される。また、鍛造品はコマツキャステックスが、その他主要部品は協力工場のコマツみどり会(130社、主力サプライヤー27社、コマツはパートナーと名づける)が、各工場にジャストインタイムでラインに運び込む。

 「キーコンポーネントとキーパーツは、コマツが日本一極生産をしている重要部品」とは岩崎章夫執行役員大阪工場長(以降、工場長)。コマツは需要のあるところで建機の生産(組立)を行うが、キーコンポーネントは「国内で造り国内外の工場に出荷する」体制を貫いている。

ハイブリッド建機、製造
 大阪工場は、大阪の北東部・枚方市にある。大阪北地区の最大規模を誇る工場で、約2800人(13年4月現在)の人が働き、年間1835億円(13年度見通し)を稼ぎ出す。1人当たり月間546万円は、優良工場の一つに上げられる。

 主要製品は、同社が最も強みとする中型油圧ショベル(PC160~PC400)のほか大型油圧ショベル(PC600~PC2000)、大型ブルドーザ(D155~D575)、超大型ブルドーザ、それに環境リサイクル商品(ガラパゴス、リテラ、リフォレ)の4機種。

 加えて2008年に世界で初めて発売したハイブリッド建機(PC200/200LC-8E0)や2013年排出ガス規制対応車HB205/36
5LC‐2と30tクラス(HB355/365LC‐1)の生産を加えている。

 ちなみに、ハイブリッド油圧ショベル(以降、HV)は大阪工場で一極生産し、これまでに2467台(13年10月現在)が出荷され、うち日本は1421台(HB205/215LCが約82%)がユーザーの現場に投入されている。

 最近は、競合他社もHV開発を追従しており、排出ガス規制の高まりと同時に、市場は拡大する方向にある。

 HV開発責任者、吉田周司開発本部建機第一開発センタ部長は「PC200ハイブリッドは市販車で世界初の建機。その後、後継機としてHB205/215LC‐1を開発し、ハードな作業条件下でも十分に応えることができる建機として注目されている。さらにCO2削減に寄与できる機運が強まりつつあり、規制の強化と同時に市場が広がる方向にある。同社は、ハイブリッドエンジンを小山工場で作り、ここ大阪工場で組立てる。国内2割の市場確保が達成できそう」と、今後に期待する。

 2月のHVの組立て計画は41台が予定されていた。

拠点は世界に50カ所
 コマツの生産拠点は現在、日本はじめ米州、欧州/CIS、中国、アジアの世界各国に建設機械・鉱山機械の生産拠点を50カ所ある。うち日本は機械本体拠点6カ所、コンポーネント・部品拠点7カ所、素材1カ所の計14カ所(28%)があり、例えば、建機の主力工場、粟津(小松市)では「トランスミッションの一極生産と中小型ブルドーザ、小型油圧ショベル」が、大阪(枚方市)では「建機の足回り部品の一極生産と中大型ショベル、大型ブルドーザ」がフル稼働させている。

 大阪工場は、建機の性能を左右するキーテクノロジーの開発・生産も行っている。
 主なキーテクノロジーのコンポーネントは、走行減速機、旋回減速機、スイングサークル、発電機モータで、減速機は大阪工場が一極生産をし、国内2工場と海外9工場に一括供給をしている。

6.溶接ロボット_中型油圧ショベル_メインビーム。_R 7.機械加工_Swing_Circle(オーエム製作所)。_R  8.機械加工_ブルドーザ―Sケース(新日本工機)。_R

大阪工場の位置付け
 大阪工場は、世界における技術開発とマザー工場としての開発製造機能の2点と双方の生産改革の発信基地にある。

 また役割は、①中大型油圧ショベルの開発②大型ブルドーザの開発、一極生産③中型油圧ショベルのコンポ―ネントと足回り部品の開発にある。何れも生産技術開発のグローバル拠点の役割も担っている④マザー工場としてグローバルで海外チャイルド工場を支援する重要な役割もしている。ちなみに工場のチャイルド先は6カ所、機種・部品のチャイルド先は11の工場を支援している。

 このほか、岩崎工場長のインタビューでご紹介したように、「3つの機能」を担っている。一つは、生産工場。一つは、商品開発拠点。一つは、新生産技術開発拠点である。

第1~第7工場の役割
 本社直轄の「開発本部」が置かれている。建機の開発から生産(調達+製造)、販売までを、同社の“中枢頭脳”が集まって、品質保証・生産管理・調達・生産技術の全機能を管理・推進している。

約55万㎡の広大な敷地には7つの工場があり、各工場は以下の役割を担っている。

第1工場=大型ブルの溶接・組立、中型HE作業機溶接、完成車検査工程。
第2工場=中型油圧ショベル組立工場。
第3工場=中型HE板金工程。
第4工場=中小物機械加工、熱処理工程。
第5工場=ギヤ機械加工、熱処理工程。
第6工場=上下転輪スイングサークル大物機械加工。
第7工場=超大型板金。

 各工場は、コマツの国内各工場とパートナー会社と連動し、必要な部品が、必要な時間に計画通りに運び込まれるタイムスケジュールが緻密に組まれている。

200台の工作機械
 建機は、頑丈である。剛性は、乗用車に比べ格段に違う。岩崎工場長は、工作機械、鍛造機械、切削工具のあり方について希望する。
「乗用車ボディーの板厚は、せいぜい0.6~0.8㎜に対し、建機の板厚は平均20㎜、厚いものは30~40㎜もある。このため、橋梁を加工するイメージの工作機械が必要」。

 また、建機は重切削と加工スピードが基本で、「工作機械業界は、多くの市場を乗用車生産が占めるため、ライトな機械を得意としている。ところが建機は、剛性と加工速度が必要で、現状の工作機械は使いづらい」と、いう。つまりバリバリ、高速で削る工作機械でなければ役に立たない。

 「高速化を進めれば工作機械、テーブル、主軸とも剛性が高くなる。このため、われわれは機械を設備する際に、シミュレーションを使い、コマツが求める剛性、主軸回転数の範囲に入る機械を採用している。採用しても独自の付加を加え、より剛性と加工スピードを高めている」(岩崎工場長)。

 切削工具に関しても工作機械と同様の希望を持つ。切削工具は、年間約2億円を消費しており、今後はシミュレーションの結果である「工具の耐熱温度は高くなれば高くなるほど摩耗に強くなることが判っており、摩耗に強い工具を求めている」と、岩崎工場長。

ちなみに、工具の耐熱温度は400℃から700℃、さらに800℃と高まっており、今後はコーティングにかなり力を入れる、としている。

阪大にコマツ講座
 コマツは、06年から大阪大学に「コマツ共同研究講座」を開設している。阪大が外部企業から資金を受け、阪大内に独立した研究組織を設置するもの。コマツの講座では、建設機械、自動車・船舶用動力機関、油圧システムなどの動力機械システムを対象に、地球環境保全の観点から排気ガス清浄化、省エネルギーなどの課題を解決するための基礎研究・産業化に結び付く応用研究をしている。

 この研究からコマツは、アーク制御を大電流にも応用する技術を開花した。そのひとつが、高速溶接ロボット。従来の2、3倍強のロボットを開発し、「コマツ社内とパートナー会社だけで使い、競争力を一段と高めている」(岩崎工場長)。パートナー会社では、「7台使っていたロボットを今では2台でこなす」成果を上げている。コマツの強さの一つである。

日本産機新聞 平成26年(2014年)3月15日号

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