2022年12月2日(金)

【特集:進化する商社】PART2/ 商社 進化した4つの力

リーマン・ショック、ネット販売の拡大、新型コロナ禍—。商社はこの20年、幾多の困難や逆境も乗り越え成長し続けてきた。そのエンジンとなったのがエンジニアリングや受発注業務効率化、物流、海外展開。この4つの力を進化させてきた理由と、それによって成長した今の姿は。本紙の20年の取材を振り返り、商社の進化の本質に迫る。

PART1:エンジニアリング
PART2:受発注業務の効率化
PART3:物流
PART4:海外展開

PART1

エンジニアリング

ジーネット ロボットテクノロジーセンターのロボット 

SIer機能やショールーム 〜ロボやIoT、自動化提案〜

日伝が今年9月に新設したDXショールーム
Cominix テクニカルセンター

商品を幅広く揃え、在庫を豊富に持ち、変化する需要に柔軟に対応し、商品を販売店に提供する。かつてはそれが商社の最たる存在意義であり求められることだった。そして、その能力を高めつつ、一方で進化させてきたのがエンジニアリング力だ。

商品を届けるだけでなく、幅広い商品群を活かして最適な製品を組み合わせて提案するソリューション力と、それを実現するエンジニアリング力を強化し、顧客の課題や困りごとを解決する強力なパートナーであろうと邁進してきた。

今、人口減少に伴い労働力が不足。働き方改革も相まって就業時間に対する仕事の生産性の低さが社会問題に。日本のものづくりはこの7~8年、人出不足に対応すべく生産性を上げることが課題としてクローズアップされてきた。

そしてその課題を解決する新たなテクノロジーとして注目され始めたのがロボットやIoT、ソフトウェアをはじめとする自動化の技術。商社は多様なメーカーと取引するネットワークを生かしつつ、関連する企業との連携や新会社発足、展示場の新設などにより提案力を高めていった。

ロボットなど自動化システムを手掛ける子会社「ロボットエンジニアリング」を2016年に新設したのはユアサ商事。この子会社はロボットやIoTなどをシステム提案するほか、既存の機械に簡単に取り付けできるロボットシステムも独自で開発した。また、AI企業にも出資するなど、AIを活用して自動化の提案の幅を広げる。

山善は2021年、アセントロボティクスと業務提携した。AIを活用する知能ロボットなど向けのインテリジェントソリューションを手掛けている。そのうち、部品とロボットハンドのCADデータでAIに事前に学習させることでバラ積みの部品を正確にハンドリングできる。

フルサト・マルカホールディングスは、NCプログラムの自動化ソフトを手掛けるアルムと販売代理店契約を結んだ。製品のCADデータをアップロードするとAIが自動で工具、切削条件、加工パスなどを作成するもので、切削加工における労働生産性の課題を解消する。2016年にはロボットテクニカルセンターも設立している。

一方、テクニカルセンターを活用するのはCominix。複合加工機や立型マシニングセンタ、CAD/CAM、測定機などを揃え、同社が取り扱う切削工具でテスト加工する。被削材や加工形状など様々な条件で工具の特長を研究。その結果に基づき最適な工具と加工条件を提案する。

日伝は今年9月にDXをテーマとするショールームを開設した。設備の稼働監視やスマートグラスによる保守の遠隔支援、帳票のペーパーレス化などDXを進める上で必要なソフトウェア・ハードウェアを展示。それぞれ実機で体験できる。開設の狙いはユーザーに自らの課題を再発見してもらうこと。課題を顕在化し、その本質を見極め、解決へとつながる最適な方法を提案する。

PART2

受発注業務の効率化

山善と日伝が設立したプロキュバイネット 

デジタル営業効率化の進化 〜ウェブ受注からAIまで利便性高める〜

営業担当者同士がテレビ会議やチャットで会話できるトラスコ中山のフェイスフォン 

今や誰もがスマートフォンを持ち、ウェブで受発注したり、セミナーを受講したり、製品の詳細を動画で見たりするのはあたり前。卸商社がこうした営業を効率化できるデジタルツールを手に入れたのも、この20年の大きな進化だ。同時に人材を付加価値の高い仕事にシフトさせることにもつなげている。

2000年代前半はスマホもなく、電話とFAXの受発注が当たり前で、電話の量=忙しさだった。しかしパソコンとインターネットが一般化し始めた00年代初頭に、機械工具業界でもウェブ受注を中心に様々なサービスが広がり始めた。ユアサ商事が業界に先駆け受注サイト「ウェブユアーズ」を05年にスタートさせている。

普及期は06年ごろ。販売店と卸商社の業務効率を改善する目的でウェブ受注が一気に広がり始めている。トラスコ中山が「オレンジブックドットコム」を開設し、山善と日伝が共同で「プロキュバイネット」を設立したのが06年だ。

前後して、NaITOが「NICE‐NET」、ジーネット(現フルサト・マルカホールディングスグループ)「EGネット」、Cominox「コミニックスオンライン」をスタートさせた。その後、上場企業以外にも広がりはじめ、10年に本紙が「ウェブ受注本格化」として、取り上げている。

こうした背景にはミスミやモノタロウなどのネット通販企業が急激に伸長し始めたこともある。モノタロウがマザーズに上場したのが06年で、ミスミが流通ビジネス「VONA」を開始したのが10年で、ウェブでモノを購入するのが一般的になり始めたからだ。

10年代後半には様々なウェブ受発注だけでなく、デジタルを活用した仕組みは進化。18年にユアサ商事が業界横断型のECサイト「グローイングナビ」を立ち上げた。トラスコ中山は19年、AIを使って、商品検索を支援するサービスを始め、20年からは見積の自動回答システムも開始した。

さらに、プロキュバイネットも見積り依頼から発注までをサポートできるほか、NaITOも今年NICE‐NETを刷新するなど、機能を高めている。

20年に発生したコロナ禍は対面が難しくなることで、デジタルの活用を後押しした。大半の商社がウェブセミナーや、ユーチューブチャンネルを設けるなど一気に動画による販促が浸透した。

仮想空間「メタバース」の活用も模索されるなどデジタルツールの進化は止まらない。今後も様々なサービスが生み出されていくはずだ。

PART3

物流

トラスコ中山 プラネット 埼玉で稼働する自動搬送ロボ

「届ける」力を最大化 〜拠点拡大や積極的なIT投資〜

日伝の新西部物流センター
山善のロジス新東京

卸商社にとって根幹ともいえる「届ける」機能も、この20年で大きく進化した。物流拠点の拡大はもとより、IT投資を積み増したことで、工具1本からでも届けたり、効率的な配送システムの構築を進めたりしている。

こうした進化の背景には、顧客のニーズが多様化し、取り扱い点数が増加したことや、ユーザーが在庫を減らし即納要求が増えたこと、ネット通販への対応などがある。物流システムが高度化し、社会的に翌日配送が当たり前になってきたことや、物流を差別化と捉える企業が増えてきたことが背景にある。

中でも、過去20年で圧倒的に物流を強化してきたのがトラスコ中山。中山哲也社長が1994年に「物流を制するものがビジネスを制する」と宣言して以降、投資を加速させてきた。

04年に6万6000アイテムだった在庫は22年には約50万点にまで増加。物流拠点は27か所にまで拡大した。投資は物流拠点だけでなく、効率的な配送を実現するためにITにも積極的に投資しており、過去5年だけで約600億円を設備投資にまわしている。

24年には、愛知県に新たな拠点を開設予定。大学やAI、物流企業らと協業し、さらに物流オペレーションを最適化させ、ユーザーの直送体制を強化している。

物流強化の動きは10年代中盤以降、他社でも加速している。自社投資に加え、3PL事業者などを柔軟に活用し、物流体制の強化を進めている。

山善は15年、東海地区の物流を3PL事業者に委託。昨年にはロジス関東に、ロボットソーターを導入し、自動化や効率化を図るほか、今年には東日本の「ロジス新東京」を稼働させた。今後も迅速な商品配送ができる体制を整えていく考え。

日伝も同じく15年に東部物流センター移転新設。21年には新西部物流センターを開設した。旧センターの約1・7倍の広さ(延床面積)で、在庫できる商品点数は1・4倍の5万点を目指す。

バケット自動倉庫や搬送コンベアに加え、作業者が定位置で作業する定点(GTP)ピッキングシステムを導入しピッキングの作業効率を大幅に高めた。

ユアサ商事は16年の関東物流センターの移転を皮切りに、19年には中部物流センター移転拡張し、当日配送エリアを拡大。22年に九州物流センターを集約するなど、最適化を進める。

NaITOは来年にも東日本と中部の物流センター移転する予定で、それぞれ1・5倍、2倍に増床し、在庫アイテムを拡充する。坂井俊司社長は、「今まで以上に業務の効率化を進めないと対応できない」とし、デジタル投資も強化する。

卸商社の一丁目一番地ともいえる「届ける」機能の進化は今後も止まることはなさそうだ。

PART4

海外展開

ユアサ商事はタイでグランドフェアの開催を予定している

海外の需要を開拓 〜アジア中心に進出〜

この20年で、上場商社の一部は「海外マーケットにアクセスする」機能を獲得した。2000年代以降に拡大した、中国をはじめとするアジア諸国の製造業のマーケット需要の開拓を狙ったものだ。特に01年に中国がWTOに加盟し、「世界の工場」と言われ始めたころが転換点となっている。

中でも、大きくその需要を開拓してきたのが山善だ。20年前の2003年3月期決算の国際営業部門の売上高は231億円。対して22年3月期には、923億円と20年間で、ほぼ4倍に伸ばしている。特に、EMS(電子機器の受託製造サービス)企業を始めとする、現地企業や中国進出企業の需要を開拓した。

M&Aによるシナジーで海外へのアクセスを広げるようとしているのがフルサト・マルカホールディングス。00年にジーネットを子会社化したフルサト工業は21年にフルサト・マルカホールディングスを設立し、マルカと経営統合した。

統合前のマルカの19年11月期の海外部門の売上高は255億円。フルサト工業は海外比率を明らかにしていないが、マルカの海外販路を活用したシナジーを図るのは必至。中長期の戦略では「グローバルマーケットでの飛躍」を掲げている。

ユアサ商事も海外の拡大を狙う。22年3月期の海外取扱高は294億円。現在の中期計画では、海外の拡大に向けた投資枠を3年で40億円と設定。タイでのグランドフェアを開催するほか、M&Aなども検討し、さらなる海外事業の売上増を目指している。

切削工具を中心にグローバル展開を加速しているのはCominix。2000年代から海外拠点を次々と開設し、販売ネットワークを広げてきた。現在では中国やタイ、ベトナム、インドネシア、インド、米国など10カ国33拠点に展開する。現地に進出する日系製造業をはじめ新規顧客を開拓。売上高全体の約24%(2022年4‐9月期)を占めるまでに成長している。

人口減少などで、製造業の国内マーケットの急激な拡大は難しい。今後とも、海外の需要を開拓する動きは活発になりそうだ。

PART1: 変化に対応、自ら変革 はこちら

日本産機新聞 2022年11月20日

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