2025年12月3日(水)

【Innovation!】バリレス工具

精度と時短、無バリで両立

製造現場で人手不足対策やコスト削減、安全性などのニーズが高まる中、それに伴いバリが出にくい切削工具の普及も進む。加工後のバリ取りを無くすことで熟練技術者に依存しない体制や工程短縮を実現するほか、バリが出ないため寸法精度の安定にもつながる。ケガのリスクを軽減し安全性を高める効果もある。人手不足や生産性向上などものづくりの現場の課題を解消する次世代のバリレス工具を紹介する。

大見工業「バリクリアーMドリル」

独自形状で貫通時の応力分散

炭素鋼から難削材まで貫通穴あけ時に発生する抜けバリをなくしたいというユーザーの声に応え2021年から開発した。

主な特長は独自に開発したM刃型に3D溝形状と独自のショルダー形状(特許出願中)を組み合わせ、究極の切削性能とドリル貫通時に発生する応力を分散することで抜けバリ発生を大幅に抑制、曲面やクロス穴にも最適。

抜けバリの高さは平均0.03㎜程度に収まるため、裏バリ取りを行うツールへの負担が最小限となり、ツールの破損防止になるほか、製品規格によってバリ取り工程を削減することが可能だ。

用途は一般鋼から難削材まで貫通穴あけに対応。炭素鋼はもちろん、ステンレスやインコネルなど難削材でも効果を発揮し、再研磨時は刃先の切断不要でコスト低減に貢献。

ギケン「ゼロバリドリル『XVシリーズ』」

貫通穴のバリを極限まで抑制

ゼロバリドリルは刃の切れ味を維持しながら折れにくい形状を採用している。エンドミルに近い構造で、これ1本でセンタリング、穴あけ、バリ取り、リーマの加工工程を完結できる。

XVシリーズは従来と比べ約7倍能率を高め、裏バリ抑制能力を兼ね備えた新型。ステンレスXVはステンレスや耐熱合金、アルミXVはアルミや銅などに対応する。

貫通穴に発生するバリを極限まで抑制することができ、クロス穴内部のバリを抑えることができる。ほかにもパイプなどの円筒状のワークの内側のバリ対策、量産加工のバリ処理工程削減に有効。

ゼロバリドリルはCFRPの貫通バリ対策などのために福井県と共同開発した。様々な材質や用途に対応する16種類を展開。ニーズに応じオーダーメイドもしている。

サンドビック・コロマント「アルミ合金専用正面フライスカッター『M5シリーズ』」

ステップテクノロジー採用

自動車産業はEVの急拡大、ハイブリッド車の堅調な伸びにより、アルミ加工部品の需要が高まっており、同社はアルミ合金加工に特化した製品を開発・ラインアップ。

「M5シリーズ」はアルミ加工の課題である高送りによる生産性向上とバリ抑制を両立。径方向・軸方向のチップ位置を切込み量と送り量に合わせて1枚ずつ異なる位置に最適配列したステップテクノロジーを採用。

これにより、バリ発生を抑制し、切れ刃への負担も軽減できるため、工具の長寿命化も実現。

また、少ない刃数で従来通りの送り速度を実現でき、仕上げ加工面に触れるのはワイパー刃のみで、他の刃の干渉もなく、刃振れ調整不要、チップ交換もトルクレンチ1本で完了できるなど、作業者の負担も少なく使いやすい。

ジーベックテクノロジー「バリレス面取りカッター」

難削材でも2次バリレス

「面取り加工後に発生する微細な2次バリを発生させない」ことを目的に開発した面取りカッター。独自の刃形状などにより、難削材や高硬度材でもバリレス加工を実現。航空機、半導体など高精度が求められる分野の仕上げ工程の自動化に貢献する。

独自のV字型切れ刃により、2次バリを発生させない構造とした。また、切削抵抗を最小化し、安定した高速加工を実現した。ステンレスやチタンなど難削材でも安定してバリレス化を実現できるため、航空機エンジンや半導体装置、医療部品などの精密加工分野での実績も多い。

バリレスと同時に、工具寿命と面品質の両立を実現。これにより、面取り後の手仕上げ・検査工数を大幅削減できるだけでなく、難削材加工ラインの自動化や、高速加工によるサイクルタイム短縮に貢献する。

住友電気工業「ワイパーブレード『WS型』」

バリレス・光沢仕上げ

アルミ合金加工用高能率カッタ「アルネックスANX型」のCVD単結晶ダイヤモンドSCV10ワイパーブレード「WS型」は、独自の気相合成技術による高強度CVD単結晶ダイヤモンド「SUMICRYSTAL V SCV10」を採用した。

切れ刃をシャープにすることでアルミ合金や銅合金など非鉄金属のフライス加工で、抜群の光沢仕上げやバリを抑制した加工を実現する。耐摩耗性・耐欠損性に優れ、シャープな切れ味を長時間維持し、トータル工具費を低減することができる。

自動車などで燃費向上のため部品軽量化に伴いアルミ合金など非鉄金属の使用割合が増加。それらの切削加工における高能率化や工具の長寿命化、面品位向上のニーズに応えるために開発した。

タンガロイ「平面加工用フライスカッタ『TFE12形』」

PCDインサートでバリ抑制

切れ刃交換式の平面加工用フライスカッタ。独自のバリ取りさらい刃形状を持つPCDインサートにより、アルミ部品のエッジ部分のバリ低減を実現した。用途に合わせ2つの仕様をそろえた。

「刃先高さ調整機構付きタイプ」は、インサート切れ刃の正面方向への高さを微調整でき、加工面粗さの向上に貢献。「軽量ボディタイプ」は鋼製ボディながら軽量化を実現し、φ125㎜のカッタでもBT30マシニングセンタで使用できる。

両タイプとも内部給油機構で、切れ刃に直接切削油を供給でき、長寿命化、加工面品位の向上にもつながる。CBNや、PVDコーティング材種などのインサートもラインアップ。同じカッタボディで、インサートを入れ換えるだけで、アルミだけでなく、鋳鉄や鋼、ステンレス鋼の平面加工にも対応できる。

日進工具「RSE325LH」

樹脂切削のバリ抑制に有効な独自形状を採用

樹脂材は鋼材に比べて柔らかく切削しやすい一方、延性が高く、加工時にバリが発生しやすいという課題を抱えている。特に従来の右ねじれタイプのエンドミルでは、上端部にバリが残るケースが多く、後工程での除去作業が必要となっていた。

こうした問題を解決するため、日進工具はスクエアエンドミル「RSE325LH」を開発し、12月15日より販売を開始する。同製品は右刃・左ねじれという独自形状を採用し、切りくずを下方へ排出することで、上端部のバリ発生を効果的に抑制する。さらに、3枚刃構成による高い加工能率と、鋭利な刃先設計により高い切削能力も誇る。サイズはφ1~6㎜の6種類をラインアップ。

バリ低減と高能率加工を同時に実現。樹脂製品の品質安定化はもちろん、仕上げ工程の省力化や生産性向上にも貢献する。

不二越「バリレスシリーズ」

2次加工の廃止や低減に

「バリが出るのは当たり前」という常識を覆し、バリによる2次加工の廃止や低減ができるバリレス工具。ドリル、エンドミル、タップをシリーズ化した。

バリレスドリルは独自形状と刃先にシャープエッジのコーナーRを採用。通り穴の抜けバリを低減し、陣笠残りゼロで、2次加工レスを実現した。

バリレスエンドミルは右/左ねじれのダブルヘリカル形状を採用し、側面加工の上面バリを抑制。加工面を高精度に仕上げることができる。

バリレスタップは下穴とタップ谷底の隙間を無くし、内径も切削することでバリゼロを実現。刃欠けを抑制するタップ形状により、安定加工を実現した。

全シリーズとも加工条件や工具寿命も汎用品と同等で、能率や工具交換サイクルを変えずに、バリレスを実現できる。

日本産機新聞2025年11月20日号

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