2026年10月16日(金)

FingerVisionがフィジカルAIの現在地を語る

視触覚センサでロボットの応用範囲を拡大

9月7日、グラングリーン大阪(大阪市北区)で「次世代テックフォーラム・トータルコーディネート会議『2030年代の技術予測から読み解くビジネスチャンス』」(主催:大阪商工会議所、共催:SBIホールディングス)が開催され、FingerVision(東京都江東区)の濃野友紀社長が登壇。フィジカルAIの高度化やロボットによる物体操作の難しさ、自社が手掛ける「視触覚センサ」の応用例などについて語った。

濃野友紀社長

近年はヒューマノイドロボットなどにもフィジカルAIの実装が進み、視覚や音声など、ロボットの認識能力が高度化している。その中で濃野社長は「何かを操作するというところが一番難しい」と強調する。人間は物を扱う時に力だけでなく、表面のざらつきや滑り、触れた際の微妙な変化を感じ取り、その情報を指の動きに反映させている。これらの情報がロボットによる物体操作でも重要になると説明した。

同社が開発するのは、ロボットハンドの内部にカメラを組み込んだ「視触覚センサ」。カメラで撮影した画像を処理することで、物体にかかる力や滑りなど複数の触覚情報を同時に取得する。触覚の種類ごとにセンサを用意するのではなく、1台のカメラから得られる画像をソースとして、そこからさまざまな情報を処理する。濃野社長は、ハンド内部にカメラを搭載することで「非常にコンタクトリッチな情報」が得られると説明。物体に触れる直前から接触した後までの情報を取得できるため、これをAIモデルの入力データとして活用することで、物体の状態に応じた細かな動作の学習につなげられるとした。

その一方で、濃野社長はフィジカルAIについて、現状ではデモンストレーションの完成度と実用への道筋の乖離も指摘する。ネットでは高度なロボット動作の動画が出回るが、実際の現場で活用するには成功率や制御に必要なデータ量、条件が変わった場合の対応力などを検証する必要があるとした上で、「AIの世界はデータを貯めて試行錯誤をやった企業が勝つ」と結んだ。

FingerVisionはこの8月からファナック、安川電機、川崎重工業などと連携し、新たなAIモデルの開発プロジェクトへ参画している。製造現場のデータを収集し、VTLA(Vision-Tacticle-Language-Action)基盤モデルのデータセット構築を目指す。視覚に加えて触覚を組み合わせることで、これまで自動化が難しく、依然として人手が残る領域への活用を進めていく構想も今回のカンファレンスで披露された。

日本産機新聞2026年10月5日号

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