2026年10月16日(金)

社員の「やりたい」を事業の力に 北出金作商店、ものづくりの魅力をカフェから発信

機械工具販売店の北出金作商店(京都市中京区、075・311・3141)は本社そばに「Cafe ギアデ」をオープン。きっかけは、社員の「やってみたい」という声で、工場を眺めながら過ごせる空間には、会社のこれからと、ものづくりへの想いが込められていた。

「社員の人生を豊かにすることが、経営の本質だと思う」。そう話すのは北出幸裕社長。7年前の事業承継を機に、会社の未来について考え始めた。製造業を取り巻く環境が変化する中で、商社として生き残るだけでなく、同社ならではの価値を生み出したい。そんな想いから、多角化への挑戦が始まった。

舞台となったのは物置として使われていた昭和57年築の倉庫。5区画のテナントスペースへとリノベーションする中で、社員から「カフェをやってみたい」という声が上がり、社内アンケートでも、機械加工や農業など様々な声が寄せられた。そこで2区画を自社で活用し、機械加工の工場とカフェを併設。約2年の構想を経て、2025年5月末に「Cafe ギアデ」をオープンした。

Caféギアデの店長を務める若林咲希さん(左)

大きな特長は、機械加工の現場を眺められる『工場が見えるカフェ』。顧客であるユーザーの自社製品であるオリジナル囲碁(金銀色)の販売から、高さ調整用のアジャスターに歯車を備えたカウンターチェアなど、所々でものづくりらしさを醸し出すインテリアの店内デザインにこだわり、製造業に馴染みのない人でもコーヒーやサンドウィッチ、ケーキなど楽しく食事しながら、普段は見る機会のない製造現場を身近に感じてもらうのが狙いだ。

店長を務めているのは営業事務を担当していた若林咲希さん。カフェをやってみたいという夢を持ちつつ、製造業を盛り上げたいとの想いを抱き、カフェのコンセプトが生まれる。ギアデは『誰かのギア(歯車)になれる場所』を意味し、小さな歯車がそれぞれの得意分野を活かし、噛み合うことで大きな原動力となる。「私にはない発想を持っていたので、思い切ってチャレンジしてもらった」と北出社長は振り返る。

実際、商社やメーカーの担当者が工場を見学したり、カフェでコーヒーを飲みながら打ち合わせをしたりと、思いがけない交流も生まれている。「点と点だったものが、意外と線でつながっている」。カフェ以外にも農業に挑戦し、育てた米をカフェのランチに使う計画もその一つ。カフェ、工場、農業。各々の挑戦が少しずつ重なり、会社の新しい形を作り始めた。根底にあるのは、「ものづくりを支え、発信する集団になりたい」という想い。オーダーを受けてから一つひとつ手作りする若林さんの姿にも、ネジ1個から丁寧に仕分けて届ける、同社の『ひと手間を惜しまない』文化が息づいている。

日本産機新聞2026年10月5日号

[ 機械工具業界の出来事 ] カテゴリの関連記事

ネジの魅力を発信して10年 コノエ「にじいろのネジ」キーパーソンの二人がこれまでを振り返る

ネジ商社のコノエ(大阪府東大阪市、06・6746・1903)は、2016年から手掛ける「にじいろのネジ」プロジェクトが10年の節目を迎えた。「ネジ」を単なる締結部品だけではなく、子どもたちが楽しみながらモノづくりに触れる […]

AIロボットをもっと身近に 大阪で垣根を超えて技術を磨く勉強会

誰でもAIとロボットに触れ、語り合える場をつくろう——。8月20日、グランフロント大阪北館(大阪市北区)の関西電力エナレッジで「AIロボット持ち込み勉強会」が開かれた。会場にはロボットエンジニアから、ロボットを自作する個 […]

山久が創業95周年、100周年も見据え「最高に安心できる企業」へ

昭和6年(1931年)に創業した機械工具商社の山久(滋賀県長浜市、0749・63・6611)は6月6日に創業95周年を迎え、記念式典を開催した。取引先や仕入先、金融機関など関係者が多数出席し、95年の歩みを振り返るととも […]

記事ジャンル

関連サイト