2025年12月27日(土)

BCP策定を提案

 自社でのBCP(事業継続計画)策定に加え、ユーザーにBCPを提案する動きが広がりつつある。BCPへのニーズの高まりや、市場拡大が期待できるためだ。山善やユアサ商事ではBCP策定をサポートする仕組みを構築。それらを活用し、自社のBCP策定やユーザーに提案する販売店も出てきた。一方で、BCP関連商品は継続的な売上が見込みづらく、収益化に時間が掛かるというのも課題。しかし、工場と違う部署や経営者に提案できたり、物販だけでなくコト売りにつなげたりするなど、BCPを戦略的な施策に位置づける企業も出始めている。

コト売りの手段に

 ある民間企業の調査によると、2018年にBCP対策をしている企業は16%程度に留まるという。一方で、19年度のBCPを含む危機管理に関する市場は1兆円を超えるという試算もある。今後取り組む企業が増えていく可能性は高く、BCP関連は成長市場といえる。機械工具業界でも自社のBCP策定に加え、需要を喚起しようとする動きが広がっている。

 広商NEXUSではサーバーの二重化を図るなど様々なBCP対策を進めている。受発注業務がシステム化されている今、システムがダウンすると事業継続に支障をきたすのは明らかだ。林龍一常務も「ITインフラの強化は最重要課題だ」という。さらに「デジタル強化は販売店にとって大きな競争力。業務の効率化とスピード対応が可能になる」とも話す。

 BCP策定をユーザーに提案する動きも出始めている。数年前から山善ユアサ商事では、コンサルティング企業と提携し、BCPに関する相談から策定、備蓄品の機器選定などトータルでのサポートできる仕組みを構築。セミナーを開催したり、BCPに長けた人材を育成したりしている。

販売店も社内で策定

 新潟県の淵本工機では、山善の仕組みを活用し、自社のBCPに関する診断を受けるとともに、ユーザーにBCP策定の提案を始めている。「現状はBCPの重要性を認知してもらう段階」(淵本友隆社長)。

 このように自社のBCPや、需要喚起する動きが広まりつつある。しかし、事業として確立するまでには難しさも伴う。収益化が難しく、時間も掛かるからだ。ある商社幹部は「BCPに関連する商材は備蓄品などが多く、消耗品は少ない。そのため、継続的な売上にはつながりづらい」と話す。淵本社長も「策定に関する相談などが先なので、物販はまだ先になりそう」と同意する。

 では、BCP提案に取り組むメリットは何か。淵本社長は「経営者と経営的な課題を話すことができ、深い関係を築くことができる」という。さらに、コンサルティング的な要素も含むため「物売りからコト売りへの意識の変革を促す契機にしたい」とも話す。

 機械工具業界でも、単なる物売りからコト売りへの変化を訴える声も少なくない。そのために、ロボットを活用した自動化やシステム提案、物件モノの受注を狙う販売店も多いが、BCPの提案もこれらと同じく、コト売りに変化していくためのツールとして活用できそうだ。

 

日本産機新聞 2019年10月5日

[ 日本産機新聞 ][ 業界分析 ][ 特集 ] カテゴリの関連記事

工作機械・切削工具メーカーが各地でプラショーやカンファレンスを開催

オークマ「オークマ・マシンフェア2025」 オークマは11月12日から14日までの3日間、愛知本社で「オークマ・マシンフェア2025」を開催した。 人手不足や熟練作業者不足などの課題を解決する同社の最新技術を披露した。5 […]

日立産機システム CO2削減量をクレジット化する新サービスを始動

日立産機システム(東京都千代田区)は既存機から新型コンプレッサへの置き換えで削減できた二酸化炭素(CO2)の排出量をクレジット化するサービスを2026年度に開始する。クレジットは市場で売却し、得た収益はユーザーに還元する […]

経済産業省  航空機武器産業課 航空機部品・素材産業室  西山  正室長に聞く【特集:航空機産業-アジアの需要を掴む-】

供給網の強靭化、重要性高まる 経済産業省は2024年4月に「航空機産業戦略」を策定し、今後の方向性を打ち出した。成長のカギの一つとして挙げるのが、サプライチェーン(供給網)の強靭化。安定供給を実現するため、国内に加え、海 […]

トピックス

関連サイト