2024年4月16日(火)

【特集】微細精密切削加工PART3:現場を訪ね  ーワークス (福岡県)

ガラス両面MLA金型を開発

超硬製マイクロレンズアレイ金型

独自のマイクロボール工具で加工

レンズ金型を手掛けるワークスはガラス製両面マイクロレンズアレイ(MLA)の金型を開発した。独自の微細なナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)工具による加工技術によって実現した。従来工法と比べてMLAの生産効率を高め、適用する製品の小型化にもつなげることができるという。

開発した金型は超硬製で、円柱状の上面の縦13×横13㎜のスペースに直径0.1㎜、深さ4μmの凹んだ球面が1万個並ぶ。球面の表面粗さは±0.2μm。この金型を向かい合わせにしてガラスの素材を挟み、両面MLAを成形する。

ガラスレンズの金型は成形時に300℃に熱する。高温に耐えるため金型にも超硬が用いられる。そのためダイヤモンド砥石で研削加工する。しかし加工の過程で砥石が摩耗するため微細な球面を加工できず、直径0.5㎜が限界だった。

直径0.1㎜の球面は、粗加工した後、独自開発したNPDマイクロボール工具で仕上げた。CVDラッピング技術によって先端の表面を凹凸がない真球面にした工具で転写する。これにより1万個の球面を同じ精度で加工することに成功した。

今まで微細なガラス製MLAは金型で加工できないため、石英ガラスをドライエッチング法で加工していた。そのため片面ずつしかできず、片面を背中合わせに組み立てると10~20㎜の厚みが出る。屈折率は1.46のみ。生産は月2520個で、1個当たりのコストは5万円だった。

しかし開発した金型は両面MLAを成形でき、その厚さは2~3㎜。様々なガラスを成形でき、屈折率は1.8まで対応できる。月に5万4百個を生産でき、1個当たりのコストは5千円に抑えることができるという。

半導体レーザー製品に需要、レンズの量産も

MLAはプロジェクタや自動車のヘッドライトなど半導体レーザー応用機器に用いられる。この金型で両面MLAを生産すれば、これまでの片面MLAと比べて製品を小型化し、生産コストも下げることができる。

半導体レーザー応用機器市場は2030年に50兆円に拡大するともいわれる。ワークスはMLA金型の研究を重ね、25年にも実用化を目指す。金型だけでなくレンズの量産も手掛け、30年に年間売上高25~30億円にする計画だ。

会社概要

  • 本社:福岡県遠賀町虫生津1445
  • 電話:093-291-1778
  • 代表者:三重野計滋社長
  • 創業:1991年
  • 従業員:60人
  • 事業内容:光学レンズ金型や精密特殊ノズル、精密微細部品などの製造。

日本産機新聞 2022年7月5日

[ 日本産機新聞 ][ 特集 ] カテゴリの関連記事

【連載企画:イノフィス、次なる戦略②】折原  大吾社長インタビュー
作業や業界に特化した製品開発

イノフィス(東京都新宿区)は今年8月、腰補助用装着型アシストスーツ「マッスルスーツ」の新しいモデル「GS-BACK」を発売した。既存モデルの「Every」に比べ、軽量で動きやすく、これまで以上に幅広い現場での活用が期待さ […]

TONE 本社を河内長野工場に移転

TONEは、本社を同社最大拠点である河内長野工場に統合、移転した。9月26日から業務を開始した。 今回の統合により、開発、製造、営業企画、品質保証、管理の各部門と経営を一体化。部門間のコミュニケーション向上を図り、一層綿 […]

エヌティーツール 福岡県筑紫野市に九州事務所を開設

ツーリングメーカーのエヌティーツール(愛知県高浜市、0566-54-0101)は福岡県筑紫野市に九州事務所を開設し、九州地域での迅速かつ細やかなサービスを提供することで顧客の課題解決に応えていく。住所は福岡県筑紫野市原田 […]

トピックス

関連サイト