2021年7月28日(水)

【新春リモート座談会】第2部「機械工具商社における新ビジネス」①

 機械工具商社のこれからのビジネスの在り方について探るために、新しいビジネスに挑戦する機械工具商社4社による座談会を開催した。前号では、各社が進める新ビジネスの内容や取り組み始めた経緯や理由などを語ってもらった。後編となる今号では、新しいビジネスに挑戦する上での課題や対策、目指す姿などを語ってもらった。

第1部「機械工具商における新ビジネス」① / 出席者詳細はこちらから

第1部「機械工具商における新ビジネス」②はこちらから

課題は「人材」

風土や制度づくりがカギ

司会 新しいビジネスに挑戦する上で、どんな課題がありますか。また、その課題に対して、どんな対策を取られているのでしょうか。それぞれの取り組みをお聞かせください。まずは伊東社長お願いします。

伊東 大きな課題は社内の風土でした。もともと当社は、開拓心が薄い会社で、良いお客様に恵まれていたこともあって、きちんとやれば、それなりに利益が確保できていました。私が入社した頃は、ルートセールスがメインで、新しいことはしていなかったと思います。ただ、そうした会社の状態に疑問を感じておりました。時代とともにお客様もニーズも変わるはずなのに、このままで大丈夫だろうかと。そこで、勝手に自分で新規開拓を始めました。最初は先輩や上司から冷たい目で見られていたと思います。既存の得意先を置いて、新しいところばかり行っている訳ですし、売上も上がらないですから。それでもしつこく通っていると、売上につながるようになりました。最初はこうした活動を一人でやっていましたが、今は会社全体が「新しいことをやろう」という雰囲気になっています。風土はだいぶ改善したと思っています。

司会 社長自らが行動することで、社内の風土を変えていったということですね。その他にどんな課題がありますか。

伊東 他の皆さんもそうだと思いますが、やはり人の問題が大きいですね。人材をいかに配置するかであるとか、どう育成するかであるとか、どんな人材を採用するかであるとか。

司会 例えば、どんなことに取り組んでいますか。

伊東 評価の仕組みや社内制度の改革に取り組んでいます。先ほどの私の例もそうですが、新しいことをやるとなると、成果が出るまでにそれなりに時間がかかる。そこをどう評価されるのか不安に思う社員は多いはずです。それではいけないので、評価の方法を成果ありきではなくて、プロセスやアイデアを評価する仕組みに変えました。

司会 社内制度はどのように変えたのですか。

伊東 良い人材を確保するには、時代に合わせた制度が不可欠です。私たちの時代は朝早くから夜遅くまで働くのが当たり前でしたが、今は違います。ワークライフバランスを大事にした考え方に変わっています。なので、フレックス制度を導入したり、育児や介護をしながらでも働けるように就業規則を改めたりしています。また、募集も内勤のみといったように職種を限定したり、転勤がないように地域を限定したりするなど、色々な働き方を認めています。良い人材がいるのに、条件が合わなくて、雇用できないというのはもったいないですからね。

司会 壷阪社長はいかがでしょうか。

壷阪 伊東社長がおっしゃるように、人が一番の課題です。何をやるのも大事なのは人ですから、まずは辞めずに頑張ってもらうためにはどうすれば良いかというのを考えることが大事です。そのために、当社は分社化しているのですが、ゆくゆくは全ての会社の代表を従業員に任せたいと考えています。また、ホールディングス制ということも考えています。そうすることで、従業員一人ひとりが考えるようになり、またさらに新しいビジネスにも挑戦できようになると思います。自分たちで考えてやることですから、これまでみたいに言われてやらされていた時とは違い、失敗すれば自分たちのせいになる。その分、責任感も強くなると思います。自分も山ほど失敗してきていますので、従業員には「失敗しても良いから思い切ってやりなさい」ということを伝えています。

司会 とはいえ、そう簡単に自分たちで考えるというのは難しいのではないでしょうか。

壷阪 そうですね。なので、日々働く上での心構えであるとか、考え方であるとか、仕事への情熱であるとか、そういったことをよく従業員には話をしています。「心のトレーニング」とでも言うのでしょうか。いくら情熱があっても考え方が間違っていれば、違う方向に行ってしまいます。それを正しい方向に導くことも私の役割だと考えています。

司会 ツボサカ機鋼さんでは、ベトナム人やインドネシア人などの外国人材も雇用されていますが、何か気を付けていることはありますか。

壷阪 異国の地で働いているので、困っていることがあれば一番に聞いてあげないといけないと思っています。仕事面なのか、生活面なのか、はたまた金銭面なのか。そうした日々の悩みはきちんと聞くようにしています。あとは、採用するときに必ず故郷を訪問して両親とも会い、「安心して来てください」ということを伝えています。やはり安心して働けることが一番大事だと思います。

司会 では、小原社長お願いします。

小原 私も皆さんと同じように人が課題だと思います。ツボサカ機鋼さんでは、自動機メーカーを2社買収されたとのことですが、当社も同じで、自分のところに無い技術や人を補うために、M&Aという手段を取るのは、有効だと思います。顧客も含めて手に入れることができますし、人材を育成したり、採用したりする時間を短縮することもできますから。実は現在、県外でもう1社検討している会社もあります。

司会 社内で育成したり、確保するのももちろん大事ですが、M&Aも一つの有効な手段ということですね。その他に課題はありますか。

小原 新しいことに挑戦するためには、日々の生産性をいかに向上させるかが大事になってきます。これは当初、商工会議所での取り組みだったのですが、昨年4月からの「働き方改革関連法案」の施行に合わせて、生産性の向上に向けた活動を始めました。その一つとして、RPA(ロボテックプロセスオートメーション)。当社みたいな60人くらいの規模の会社が導入したら、どれほどの効果があるのかチャレンジしてみようということで、今年6月頃から導入しました。現在、専任者がシステムを開発し、すでに4~5つのシステムができいるのですが、それなりに効果はあるように感じています。二度打ちの解消だとか、顧客のネットワークとの接続だとか、色々なことができる見通しが立ってきています。それと今チャレンジしているのは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)です。RPAとの関連もありますが、より幅を広げていきたいと考えています。

あとは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけで、まだまだ人手をかけないでもビジネスができるという可能性も感じています。その一つがネット通販です。当社でも8月頃から取り組み始めたのですが、さきほどのBCP関連商品をアマゾンで販売しています。人手がかからないので、今後は独自の製品を開発して、ネット通販経由で販売していくというのも、人という課題を解消してビジネスを広げる一つの方法だと考えています。

司会 では、野田社長いかがでしょうか。

野田 私も皆さんと同じで、課題は人ですね。特にこれから時代が急速に進んでいく中、若い世代が頑張らないといけないなと思っています。そこで、当社では40歳以下の従業員を中心にチームを組み、風土改革や業務改善のための委員会活動を行っています。例えば、「人間力を向上させよう」とか、「次世代教育をやってみよう」とか、SDGsに関連した取り組みとか。基本的には社会問題の解決につながるようなことを考えて、取り組んでいます。やはり社会問題を解決する仕事は残りますからね。先ほどのBCPもそうですし、ダイバーシティ(多様性)に対応するのもそう。その他にも少子高齢化だとか、地方創生、ジェンダーフリーなどもあります。そうした数多くの課題の中から、商社の立ち位置はデリバリーではなく、「お客様ファースト」で動ける力があるプラットフォームだということを発信していくことが全ての解決方法につながると思っています。そういったことを一つひとつ色々なチームで若い人たちが作り上げていこうとしています。

司会 この委員会の活動というのはいつ頃から始めたのでしょうか。

野田 委員会自体はもう20年ほど前から取り組んでいました。ただ、今のような形になったのは最近です。それまでは「3S(整理・整頓・清掃)活動」といった活動だけでした。それを先ほどのような活動コンセプトに変え、活動への参画も評価に加えたことによって、従業員のやる気も上がり、「社長、こういうことをやった方が良いですよ」という提案もどんどん出るようになりました。私個人的にもかなり楽しんでいます。

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日本産機新聞 2021年1月20日

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