2021年3月2日(火)

【新春リモート座談会】第1部 「機械工具商における新ビジネス」②

 人口減少や生産の海外移管などによって、市場規模の縮小が叫ばれて久しい国内市場。様々な業種、分野で新たなビジネスの創出が不可欠となっている。さらに昨年は、新型コロナウイルスの影響によって、日本経済のみならず世界全体が大きな打撃を受け、これまで以上に新たなビジネスの創出やビジネスモデルの変革に向けた取り組みが求められるようになった。こうした時代に、機械工具商社は何ができるのか。日本産機新聞では、新しいビジネスに挑戦する機械工具商社4社によるリモート座談会を開催し、機械工具商社のこれからのビジネスの在り方について探った。

「機械工具商における新ビジネス」① / 出席者詳細はこちらから

地域への貢献 付加価値の追求

現場の課題がビジネスの種

司会 では、次の議題に移ります。各社、様々な新しいビジネスに挑戦しておりますが、なぜそうしたビジネスに挑むことになったのか。またどうして取り組むことができたのか。それぞれにお聞きしたいと思います。まずは壷阪社長お願いします。

壷阪 全国の機械工具商社は同じ理由で悩んでいると思うのですが、とにかく儲からない。切削チップ1個売っても大した儲けになりませんし、ボリュームを売ってバックマージンをもらったとしても、マージン率はそこまで高くありません。では、単価の高い工作機械を売れば良いのかというと、そうでもありません。当社は工作機械が多いのですが、マシニングセンタや旋盤も工具と同様。機械工具商社が工作機械を売っても利益は少ない。そこで、周辺機器を組み合わせて販売すると、多少の付加価値が付く。この付加価値を付けるために自動機やロボットなどに注力しています。そうしなければ、必要とされるところがないとも思っています。

司会 ただ単に「モノ売り」だけでは、存在価値が無いのではないかということですね。

壷阪 そう思います。ただ、手離れが悪いので、後が大変です。例えば単純に旋盤を一台ポーンと売ればスッとお金ももらえるし、文句も言われない。一方で、自動機やロボットだとトラブルは必ず発生します。この処置をどう経費としてみるか。だからこそ、対応しやすい近場の顧客をターゲットにしています。

司会 それが「1時間半以内の顧客がターゲット」ということにつながるのですね。では、小原社長お願いします。

小原 当社は、とにかく地元である静岡県に特化して、地域貢献するという方針で事業を展開してきました。そうした中、2006年にお客様からの要望で、環境マネジメントに関する国際規格ISO14001を取得したのを機に、環境に対するニーズの高さに気が付き、環境配慮製品を販売、提供していくという方針を定めました。

また、2019年に焼津商工会議所の会頭になったことも大きな契機になりました。就任時に「焼津という町を日本一の美食の町、日本一の防災の町にする」という目標を掲げました。焼津は海と山の幸に恵まれ、おいしい料理が豊富で、温泉もあります。ぜひ多くの方に観光に来てもらい、焼津を堪能してもらいたい。ただ、それを実現するには、焼津という町が安心・安全であるというのが大前提となります。そこで「日本一の防災の町」となるわけです。ただ、町の防災を強化すると言っても行政と民間ではできることが異なります。

司会 どういうことでしょうか。

小原 例えば、海岸線の盛土や港の胸壁(きょうへき)、水門など膨大な投資を必要とするものは行政でなければできません。一方、民間企業ができるものというのが、先ほどの「太陽光直流給電システム」を焼津市内の主要な施設や事業所に提案するといったことです。その他にも防災設備やグッズはたくさんあります。そうした背景から現在取り組んでいる新しいビジネスにつながっています。

司会 ありがとうございます。では、野田社長はいかがでしょうか。

野田 私は入社した当時から「商社の立ち位置とは何だろう」ということをずっと考えてきました。海外では地場の商社があまり存在せず、メーカーが直接お客様のところに行くことが多い。今の時代、デリバリーや利益の問題などで、商社の立ち位置が明確でないとまずいと考え、商社でないとできないことをやろうと考えて取り組んだのが、さきほどの独自商品の開発でした。

司会 そもそもゼリーを作るというアイデアまでたどり着いたのはなぜでしょうか。

野田 当社は以前から工業用内視鏡の販売に注力していました。当初はある海外メーカーだけを取り扱っていたのですが、幅広く取り扱ってノウハウを持っていないと、なかなか信頼を得られないと考え、「内視鏡.com」というサイトを立ち上げたり、特定のメーカーだけでなく、あらゆるメーカーの製品を扱うことによって、「ノダキ=内視鏡」というブランディングを進めていきました。機械工具商社が突然食品を販売すると、どれだけ良いものを創っても品質の心配をされることもあるとは思いますが、有名メーカーとコラボし、エビデンスを持つことで、そうした不安を払拭するようにブランディングを進めてきました。

司会 なるほど。では最後に伊東社長お願いします。

伊東 ネット通販企業が台頭していますが、ビジネスモデル上、競合とは考えていません。ただ、我々がこれまで扱ってきた商材を販売しており、大幅な売上減になっているのも事実です。差別化を図っていくには、先ほどの話と重複してしまいますが、事業定義を「ものづくりの課題解決業」と位置付け、商材を単に販売するというよりもお客様の課題を解決するというビジネスにシフトする必要があると判断し、現在の「現場にある課題がすべて自分たちの仕事」という考え方になりました。

司会 顧客の課題は変化していますか。

伊東 変化していると思います。グローバル化や人材獲得の難しさ、働き方改革など、そうした新しい課題を解決するには、新たな知識や技能が必要となり、そこに新たなビジネスの可能性も存在すると考えています。そうやって取り組んできたのが、「ITソリューション」であったり、「測定ソリューション」であったりするのです。

第2部は1月29日に更新予定

日本産機新聞 2021年1月5日

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