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【新春リモート座談会】第1部 「機械工具商における新ビジネス」①
人口減少や生産の海外移管などによって、市場規模の縮小が叫ばれて久しい国内市場。様々な業種、分野で新たなビジネスの創出が不可欠となっている。さらに昨年は、新型コロナウイルスの影響によって、日本経済のみならず世界全体が大きな打撃を受け、これまで以上に新たなビジネスの創出やビジネスモデルの変革に向けた取り組みが求められるようになった。こうした時代に、機械工具商社は何ができるのか。日本産機新聞では、新しいビジネスに挑戦する機械工具商社4社によるリモート座談会を開催し、機械工具商社のこれからのビジネスの在り方について探った。
地域への貢献 付加価値の追求
商社だからできる事業
司会 今回、新しいビジネスに挑戦している機械工具商社4社に集まってもらいました。まずは各社、どんなビジネスに挑戦しているのかをお聞きしたいと思います。始めにノダキの野田社長お願いします。
野田 去年からマーケットのニーズに合わせたものを作る「お客様ファースト」の事業を展開しています。その一つが、今年6月に発売した「現場の相棒 塩ビタミンゼリー」という熱中症予防製品です。全国の工場にマーケティングをしていると、どんな業種、地域でも統一しているのが熱中症の問題でした。様々な国や地域から来ている外国人労働者も倒れてしまうほど、日本の夏は暑い。そこで、当初はファン付き作業服やスポットクーラーなどをPRしていたのですが、話をしていると、「ナトリウム不足」という問題が浮き彫りになりました。対策には塩飴が有効なのですが、夏場の暑い工場に置いておくと溶けて袋が開かなくなるとか、食べながらだと電話を取れないとか、そもそも味が好みでないとか課題が多く、秋口になったらごそっと捨てている会社も結構多かったんです。
司会 そこで、「現場の相棒 塩ビタミンゼリー」を開発されたんですか。
野田 当社の近くには、お菓子問屋街があるのですが、そこの「さくらんぼ餅」という駄菓子などを製造する共親製菓(名古屋市西区)と共同で開発しました。ゼリー状なので、すぐに食べられますし、駄菓子メーカーが作っているので、味もおいしいとのことで、多くの方から好評を頂きました。
司会 冬に向けて、また新しい製品を開発されていると聞きました。
野田 先ほどの夏にヒットした「現場の相棒塩ビタミンゼリー」に続く「現場の相棒 乳酸菌GABA(ギャバ)ゼリー」という製品を共親製菓と開発し、12月から発売を開始しました。森永乳業(東京都港区)の免疫力アップに効果がある「シールド乳酸菌」とストレス軽減につながる「GABA」を配合したゼリーです。今、新型コロナウイルスの感染対策などで、従業員の健康に投資するという話を様々な現場で聞くようになりましたし、ストレスも社会問題となっています。そうした背景から製造現場だけでなく、学校や飲食店、スポーツ団体、一般の方などからも注文を頂いております。
司会 製造業のニーズに合わせて作ったものが、他の業界にも展開できてきているということでしょうか。
野田 そうです。現在、全く異なる業種の企業など数十社から「一緒にコラボしませんか」という依頼が来ています。
司会 それは凄い。これからが楽しみですね。では、続いて三共精機の伊東社長お願いします。
伊東 当社の場合は、新しいビジネスというよりは、野田社長と似た考え方ですが、お客様の現場の課題を解決するためのビジネスを展開しようとしています。現場の困りごと全てが我々のビジネスの種。あとはそれをビジネスとしてどう広げるか。その一つが「ITソリューション」です。
司会 どんなことをされているのでしょうか。
伊東 お客様の現場で起こる様々な課題に対して、色々なソフトウェアやプログラムと機材を掛け合わせて、解決策を提案しています。もともとは大口顧客から来る大量の見積もり依頼や受発注作業をスピーディに処理できる社内の仕組みを外注して構築したのですが、その外注先のSE(システムエンジニア)が当社に入社してくれたことで、ITシステムの内製が可能になりました。社内の販売管理システムなどを開発し、デジタルインフラがどんどん整っていきました。そのうちに社内だけでなく、お客様にもこうした力を提供しようと、SEがお客様を回るようになったのですが、そうすると現場から様々な課題が出てくるんですよね。
司会 どんな課題があったのでしょうか。
伊東 例えば、棚卸に膨大な時間がかかっているので、作業時間を短縮したいだとか、工具や装置を誰がいつ使って、どこに置いたのかを分かるようにしたいだとか様々です。棚卸の課題であれば、無線自動識別(RFID)を活用し、商品にICチップを張り付けることによって、スキャンするだけで瞬時に数が分かるシステムを構築しました。こうした仕組みは、使いこなせなければ意味が無いので、なるべくオーバースペックにならないよう、お客様に合った簡単な仕組みを提供しています。
司会 こうした「ITソリューション」はITベンダーなども提供していますが、機械工具商社が手掛ける長所はどんなところにありますか。
伊東 現場をよく知っているということです。当社がこうしたシステムを提案すると、よく「安い」と言われます。一般的なソフト屋さんだと、製造現場の言っている意味がよく分からない。例えば、デジタルノギスの測定データを飛ばして管理したい、あるいは三次元測定機のデータを一元管理したいという要望は、我々はよく理解できますが、ソフト屋さんにはすぐに理解できない。そうすると、システム構築に時間がかかったり、色々と余分な機能を付加したり、開発コストがかさんでしまう。その点、当社は現場をよく知っているので、「ここはこれくらいの機能で良いですよね」といった提案ができ、開発コストの低減につなげられます。また、こうしたITソリューションを展開することで、現場の困りごとの相談を頂く機会が増え、信頼向上にもつながっています。
司会 その他にも様々なソリューションビジネスに挑戦されていますね。
伊東 「測定ソリューション」もその一つです。「測定のオペレータがいなくて困っている」という声が非常に多かったので、オペレータを派遣したり、当社に設備した画像測定機でお客様と一緒に測定手順を確認したり、相談を受け付けたりしています。その他にも手書きによる測定データの転記ミスや測定誤差といった課題に対して、先ほどの「ITソリューション」と組み合わせて、測定データを一元管理できる仕組みの構築なども手掛けています。
司会 お客様の課題に対して向き合ってきたことで、どんどんビジネスが広がっていったということですね。では、次にツボサカ機鋼の壷阪社長お願いします。
壷阪 流行っていること、お客様のニーズや時代の流れをいち早く掴み、それに合わせて新しいビジネスを展開していくというのが、私のスタイルです。これまでに、ドローンの活用や太陽光発電事業など様々な新しいビジネスに挑戦してきましたが、現在特に力を入れているのが、ロボットを中心としたものづくりへの提案です。2008年と2020年に買収した自動機メーカー2社で、治具設計や電気設計を手掛け、製造ラインの自動化を提案しています。もともとはグローリー(兵庫県姫路市)の双腕型産業用ロボット「NEXTAGE」を販売していこうという狙いで立ち上げたのですが、現在は他メーカーのロボットも扱い、多くの受注を頂いております。特に、柔らかいものをロボットで扱えるようにするということに取り組んでいます。
司会 柔らかいものというのは。
壷阪 例えば、イチゴであったり、シュークリームであったり。これまで柔らかいものをロボットで掴むのは、非常に難しいとされていたのですが、こうしたものを掴むのに適したロボットハンドを見つけたので、当社の治具や電気設計のノウハウを組み合わせて、提案しようと考えています。ある種ニッチな部分に特化して、ロボットを売っていこうと取り組みを進めているところです。
司会 自動機メーカー2社はどういう経緯で買収されたのでしょうか。
壷阪 もともと2社とも当社の協力会社でした。どちらも会社を畳もうとしていたところを一緒にやろうということで買収しました。ただ、もともと儲かっていない会社だったので、黒字化するのには苦労しました。と言っても、それが醍醐味でもあるんですけどね(笑)。黒字化するために、先ほど話したように特定分野に特化したり、万全なサービスを提供するために、近場(車で1時間半以内)に顧客を限定したりして、他社との差別化を図っています。
司会 他にはどんなビジネスに挑戦していますか。
壷阪 飲食店事業にも挑戦しています。今年、焼き鳥屋を開店しました。もともとインドネシアに進出した時に、工業団地で日系企業向けの居酒屋を開いたのですが、上手くいかず、1年で閉店してしまいました。その経験を活かして、日本で再度挑んでみようと、定款にも「飲食店の経営」という一行を加えました。
司会 機械工具商社が飲食業というのは珍しいですが、どんなメリットがありますか。
壷阪 飲食業をやっていると、色々なネットワークが広がっていきますので、思いがけないような人との出会いもあります。そうしたネットワークの広がりを期待して、飲食業に挑戦しています。
また、飲食店事業は、ベトナム人に担当させています。このベトナム人は日本語検定1級を持っていて、文系の大学を出ているなど非常に優秀な人材で、仕事も一生懸命やってくれる。日本で上手くいったら、彼にベトナムで飲食店を経営させたり、他の国への展開なども考えています。
司会 面白いですね。では、最後にコハラの小原社長お願いします。
小原 2015年に国連で採択されたSDGs(エスディージーズ)をもとにしたビジネスに力を入れています。SDGsというのは、環境や経済、社会など世界全体が抱える課題を解決するための国際目標のことで、17のゴールが定められています。私は、その中でも7番目の「クリーンエネルギーの推進」と13番目の「気候変動とCO2の削減」に注目しました。具体的には、「太陽光直流給電システム」という商品の販売に注力しています。このシステムは、太陽光パネルで発電した直流電流を交流に変換せず蓄電するシステムで、LED照明や空調の電源として使用できるほか、災害時に電力がブラックアウトしても自立運転が可能で、非常電源としても活用できます。
昨年、「BCM(事業継続マネジメント)事業」を立ち上げて、様々な事業所にこのシステムを提供し、省エネ化に加えて、災害時に緊急避難所として活用することを提案しています。2020年度から環境省が開始した補助金事業(2024年度まで)の補助対象設備にも認定され、3分の2の補助率(上限10億円)と即時償却が可能となりました。導入へのハードルが引き下げられたので、追い風だと感じています。
司会 グループ会社のナカジマテック(静岡県牧之原市)にこのシステムを設備していると聞きました。
小原 2017年にモデル工場として設備しました。LED照明や空調設備の電源として使用し、全電気量に対して20~30%ほどの省エネ効果が出ています。将来的には100%賄うことも可能です。直流給電は現状、LED照明と空調設備の電源という用途がほとんどなのですが、これから活用がさらに進んでいくとみています。物流では、直流で動くコンベアなども存在しており、色々な産業機械に応用できると考えています。
司会 コハラさんは、ツボサカ機鋼さんと同じようにロボット事業にも注力されています。
小原 昨年、ロボット事業部を立ち上げ、グループ会社のナカジマテックでロボットの設計製作を手掛けています。まだまだこれからですが、今年に入って、FAやロボットシステムなどを構築するシステムインテグレータ(SIer)の業界団体「FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)」に入会したほか、11月からは「ロボット事業部」と先ほどの「BCM事業部」を統合し、「システム開発部」という新しい部署を作りました。今後、さらに事業を強化していく考えです。
伊東 当社もBCMやBCP(事業継続計画)に取り組もうとしていて、興味があるのですが、どのように提案しているのでしょうか。
小原 営業担当者が収集してきた情報をもとに「システム開発部」がまとめていきます。当社は、建設業法を取得し、建物の工事なども請け負うことができます。例えば、昨年の台風19号で、甚大な被害を受けた缶詰工場から相談を受けて、建物工事から全て含めた水害対策を手掛けました。その他にも、日時だけ決めて、自宅や職場などそれぞれの場所から誰でも参加できる「シェイクアウト訓練」という簡単な防災訓練も焼津市長に提案し、市の行事として4年間実施しています。
司会 三共精機さんでは、どんな取り組みをされているのですか。
伊東 まだ動き出したばかりで、まずは社内でBCPとはどういうものなのかを理解している段階です。将来的にはお客様にお勧めしたり、相談窓口になったりできたらと考えています。
司会 ノダキさんはいかがですか。
野田 まずはノダキ自体がBCPの意識が高い企業というイメージを打ち出しているところです。名古屋市のホームページに策定企業の事例紹介として掲載してもらっていたり、私自身がBCPの講演をさせていただく機会もあるのですが、まだ準備の段階です。ユーザーの環境や業種、業態によっても取るべき対策は異なりますし、ある程度体制を整えてから、打ち出していきたいと考えています。
日本産機新聞 2021年1月5日
TONEは、本社を同社最大拠点である河内長野工場に統合、移転した。9月26日から業務を開始した。 今回の統合により、開発、製造、営業企画、品質保証、管理の各部門と経営を一体化。部門間のコミュニケーション向上を図り、一層綿 […]
ツーリングメーカーのエヌティーツール(愛知県高浜市、0566-54-0101)は福岡県筑紫野市に九州事務所を開設し、九州地域での迅速かつ細やかなサービスを提供することで顧客の課題解決に応えていく。住所は福岡県筑紫野市原田 […]