2025年7月24日(木)

新商材やコト売りで未来拓く 【特集:商社トップインタビュー】

人手不足などによって製造業のニーズが多様化する中、卸商社の取り組みが変化している。ソフトウェアやBCP対策商品、ロボットなど新商材の開拓をはじめ、モノ売り単独からエンジニアリングなどを付加した「モノ×コト」売りなど、未来を見据えた戦略を進める。また、新たなデジタルツールの活用や組織の改革など戦略は多岐にわたる。こうした独自の取り組みによって、新たな価値提供を急ぐ。

独自戦略で新たな価値提供

人手不足によって自動化ニーズが加速したり、脱炭素への要求が強まったりするなど製造業のニーズが多様化している。卸商社もこうした時代の変化をにらみ、大きく変わろうとしている。新たな商材開拓やモノ売りだけにとどまらない「モノ×コト売り」、デジタルツールの活用、社内体制の変革など各社は独自の取り組みに力を入れ始めている。

その一つが「新たな商材の開拓」だ。日伝は業務効率改善やサイバー攻撃対策のソフトウェアの販売に力を入れる。FA機器販売で培ったノウハウや経験を生かし、ユーザーニーズにマッチするソフトウェアを提案する。

在庫を強みとするトラスコ中山は自然災害への支援を強化するべく、専門部隊を立ち上げた。災害時と復興時で必要な商品が異なることから、対象商品を広げる。鳥羽洋行は自動化ニーズを見据え、独自性の強いAMR(自律搬送ロボット)を発売する。

新商材開拓の一方、モノだけを売るのではなく、エンジニアリングなど「コト」を掛け合わせた提案を強化する商社も多い。ユアサ商事は「材工同時供給」を掲げる。材は「商品」、工は「工事」を意味し、商品供給だけでなく工事まで請け負うことで提案の幅を広げる。切削工具に強みを持つCominixは、ユーザーが造りたいワークの数や時間、コストを実現する工作機械や搬送装置を組み合せた生産ラインをトータルで提供する。

フルサト・マルカホールディングスは積極的な人材投資も含め、エンジニアリング機能を抜本的に強化。構想から図面設計、機器・部品の製造、据付け、保守までをワンストップで完結できる体制を整えた。

さまざまな機能強化のためにデジタルツールを積極的に活用する動きも進む。エバオンは社内の一体化を目的にメタバース(仮想空間)を活用し、コミュニケーションを活性化させる。コノエは将来的な人手不足や発注の効率化などを目的に、ねじ業界でのウェブ取引の拡大を狙う。

将来の変化に対応できる組織を目指し、体制改革を図る企業も多い。テヅカは5年間の中期計画を策定し、新たな挑戦ができる組織づくりを急ぐ。NaITOは営業本部を4つの本部に分けた。業務の担当を明確化し、将来の幹部育成にもつなげる。

日本産機新聞 2025年7月20日号

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