特集：HACCP制度化　−変わる食品工場と関連設備–

2020年12月23日

　今年6月、改正食品衛生法によって「HACCP（ハサップ）」の導入が全ての食品関連事業者に求められるようになった。食品工場や飲食店などの事業者は、1年後の21年6月までに「HACCPに沿った衛生管理」を取り入れなければならず、各社対応に迫られている。「HACCP」の制度化に合わせて、食品工場に導入される設備や機器メーカーも対応商品の開発や提案に力を入れる。機械工具業界としては、食品関連事業者の課題に合わせた提案で、変化する食品製造現場のニーズに対応したい。

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　「HACCP」は、原料の搬入から製造、梱包、出荷までの一連の工程の中で、食中毒などの健康被害を引き起こす可能性のあるリスク要因を把握し、除外もしくは低減させるための衛生管理手法。従来の手法が最終製品の抜取検査に対し、「HACCP」は重要な工程を連続して監視することによって、食品の安全性を高めることができる。

　19年6月に公布された改正食品衛生法で、全ての食品関連事業者に「HACCPに沿った衛生管理」の導入が義務付けられた。今年6月から施行され、1年の準備期間が設けられ、来年6月以降も導入しなかった事業者には、各自治体による行政指導が入る。即座に罰則とはならないが、改善されない場合は営業禁止・停止などの処分を受ける可能性もあり、各社対応が求められている。

　「HACCP」の導入は、「7原則12手順」（※表参照）と呼ばれるガイドラインに沿って行われる。前半の5つの手順で危害要因分析のための準備を行い、後半の7つ手順で実際の分析、管理手法の設定・運営を行う。

　この「HACCP」の導入に際し、厚生労働省では「『HACCP』はソフトの基準であり、必ずしも設備などのハード面の整備を求めるものではない」とするが、設備の導入、改修によって、より管理しやすくすることもできる。菓子メーカーの共親製菓（名古屋市西区）は、金属異物の混入を防ぐために、カメラ検査機や金属探知機を導入し、チェック体制を強化しているという。

　設備で特に求められるのが、掃除・洗浄がしやすい構造の機器や、温度や時間管理を行うための記録機器。食品機械メーカーのレオン自動機では、清掃・洗浄しやすいように機器の軽量化などを図っている。また、アマノ（横浜市港北区）では、防錆効果の高いステンレスを採用した集塵機の提案に注力する。

　その他にも食品工場に導入される設備や機器メーカーの多くが対応商品の開発や提案を強化している。三井精機工業（埼玉県比企郡）は今年11月、オイルフリー式のスクロールインバータコンプレッサを発売。「オイルフリー式に置き換えることで、廃油処理が不要になり、衛生管理が容易になる」と食品産業を中心に売り込んでいく考えだ。また、キトー（山梨県中巨摩郡）は、今年設立したシステム提案を行う専門部隊で、食品グレード（H1）のオイルを使用した機器や食品工場に対応した運搬システムなど、食品製造現場のニーズに合わせた提案を強化している。

　今年6月に発表された農林水産省の調査によると、導入状況は事業規模別で大きな開きがあり、売上100億円以上の事業者の9割が「HACCP」を導入しているのに対し、1億円未満事業者では1割程度。事業規模が小さくなるほど、導入の割合は低いのが現状だ。食品産業センター（東京都港区）は「中小零細の食品事業者が対応に頭を悩ませている」と話す。今後は、こうした事業者への対応も需要取り込みのカギとなるだろう。

日本産機新聞　2020年12月20日