2019年3月20日(水)

【自動車産業特集】
丸順 齊藤 浩 社長に聞く 超ハイテンに力

冷間プレス技術活かし

 岐阜県に本社を構える自動車部品メーカーの丸順は祖業のプレス金型技術を活かし、スーパーハイテン材(超高張力鋼板)を冷間プレス成形できる加工技術などが強みだ。最近では、ホンダの大ヒット軽自動車「N―BOX」のセンターピラーなどの生産を担う。日本、中国、タイの三極で自動車づくりを支えるほか、2017年には東プレと資本業務提携を行うなど業容の幅を広げている。同社の齊藤浩社長に、自動車部品づくりの変化や、今後の方向性などを聞いた。

齋藤社長略歴 1984年丸順入社。2007年タイ・マルジュン社長、09年取締役生産副本部長、13年常務取締役、16年代表取締役専務、17年代表取締役社長。24歳の時に、シリンダ技術を活かした製品を開発し、科学技術庁長官賞を受賞するなど、根っからの技術者。北米、アジア、中国など海外経験も豊富。1964年生まれの54歳。

ー電動化を中心に自動車づくりが変化しています。部品メーカーとして今後の方向性を教えてください。
 当社はプレス金型が祖業で、冷間プレス加工技術を活かして、自動車部品の生産を手掛けるようになった流れがある。こうした歴史から、これまで自動車部品を全般的に手掛けてきたが、今後は超ハイテン材が多く使われる骨格部の冷間プレス部品にフォーカスする。

ーなぜでしょうか。
 電動化がどれほどのペースで進んでも、自動車が生産され続ける限り、向こう数十年は骨格部が必要なことは変わらない。むしろ、軽量化や安全面が重要になっているので、超ハイテンがより重要になってくる。その時に当社でしかできない冷間プレス技術があれば強みになる。

ー昨年は超ハイテン材の量産にも成功しました。
 1180Mpaの冷間プレスによる量産化に世界で初めて成功し、ホンダの「N―BOX」のセンターピラーの外板に採用された。今後はより固い1500Mpa級の超ハイテン材に対応できる技術開発を進めているところだ。

ー一方で、トランスミッション系の部品なども手掛けていますが、こちらは電動化で減少が懸念されています。
 現在、こうした部品は売上高に占める割合は10%程度と決して高くないが、利益貢献は大きい。当面はなくなるわけではないが、将来的に減少の可能性があるので、それを補うべく、電動化で増える部品の開拓に注力している。

ーどんな部品ですか。
 バッテリーケースやパワーコントロールユニット(PCU)のカバーケースなどだ。こちらも現在は、ハイテン材が使用されており、強みの技術が生かせる。実際にすでにいくつかの受注も頂いている。こうした電動化で増える部品は我々にとっても新規分野だし、成長市場でもある。ただ一方で、技術革新の速度は早いため、技術開発も強化する必要がある。そのための予算は積み増した。

ーどんな分野の開発を強化しますか。
 長期と短期に分けて考える必要があると思う。例えば長期的な分野ではバッテリーケースが一例だ。現在そうしたケースでは、780Mpaクラスのハイテン材を使用することが多いが、個人的には早い段階でアルミや非鉄に置き換わる可能性もあると思う。こうした変化への対応は常に必要だ。近く投資を決めた3000tの大型プレス機は、一台で鉄だけでなくアルミも成形できるようなハイブリッドな仕様にした。また、ドローンを工場内に飛ばして生産管理するなどといったことも考えている。一方で、短期的にみれば、人手不足の影響もあり、ロボットを活用した自動化など足元の生産技術を高める開発も必要だ。

ーちなみに一昨年東プレと資本業務提携をしました。シナジーなどはどう考えていますか。
 今年2月には東プレと当社でホンダ向けの生産や物流効率を最大化するために、鈴鹿工場を立ち上げるなど協業は深めている。当社の強みでもある超ハイテン加工の領域を中心に、東プレとの提携に関する事業の売上高を5年後に現在10倍となる100億円にまで引き上げる計画だ。

ー超ハイテンに注力する一方、電動化部品への対応も同時に強化し、さらには、東プレとのシナジーも追求していくわけですね。
 そう。しかしこれらの根底にあるのは祖業でもあるプレス金型技術があるからだ。今後も日本でも有数の金型メーカーとなるための設備投資はもちろん、M&Aによる生産能力や調達能力の拡大も検討していく。

ー方向性はかなり明確ですが、課題はありますか。
 技術者の安定的な確保と育成だ。本当に技術者が集まらない。それを打開するための一つとして、中国、タイの海外人材活用も進めている。海外から日本へのグループ内転勤を進めたりしているほか、女性活躍や現地スタッフの幹部登用の目標なども設けている。いずれにせよ、これから進めていく方針に技術者は不可欠で、全社的に人材を「人財化」していく。

日本産機新聞 平成30年(2018年)7月5日号

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