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〜ものづくりの現場を訪ねて〜
タービン特集 川本重工
加工熟知した技術集団
材料開発で新規分野に
兵庫県高砂市―。三菱日立パワーシステムズ(MHPS)高砂工場のすぐ西隣に位置するのが、川本重工の本社工場(高砂新工場)だ。主に、発電用タービンの大型部品の機械加工を手掛ける。高砂市内には本社工場のほかに、機械加工を手掛ける第1工場と、組立工場の第2工場を持つ。また、神奈川県横須賀市にも機械加工を中心とした工場を構える。
創業は1948年。戦後の復興の中、神戸市中央区東雲通の高架下で、列車の車輪や軍需関連の部品加工から始まった。その後、日本が経済成長していくとともに、受注の幅を広げ、53年に灘区(現在の摩耶インターチェンジの近く)に工場を移転。大型機械加工にシフトし、発電関連の部品を手掛けるようになった。
圧縮機車室 2009年に現在の場所に本社工場を移し、圧力や流量を調節する各種バルブをはじめ、タービンの心臓部とも言えるローター(ディスク)からタービンのケーシングなどを手掛けており、加工している部品はどれも大型。ボーリング加工では、最大で幅15m、高さ5m、ターニング加工では最大径7mまでの加工が可能。
高さ10m超す設備群
こうした加工を可能にするのが、超大型の設備群。高砂新工場には、高さ10mクラスの大型横中ぐり盤が2台、ターニングはテーブル径7m、5mなど6台が並ぶ。揚重設備としては、天井走行クレーン50tが2台、相吊りで100tまで可能。さらに30tが2台で対応し、「ここまでできる企業は国内でも少ない」という。こうした設備は全てオーダー品になるため、機械を所有すること自体が強みの一つ。ただ、機械購入までに3年かかるものや、設置するための基礎工事だけで約1億円かかるものもあるなど期間、金額ともに桁違い。川本忠博社長は、「5年先を見通しておかないと機械は買えない。ただ、なかなか先のことは分からないので、半分は読み」という。
だからこそ、設備への思い入れも強い。60年以上前、最初に設備したターニング(現・オーエム製作所製)は、未だに現役で稼働している。「この機械があったからこそ、今の川本重工がある。修理しながらでも、一生使い続けていく」(川本社長)。
狙う加工精度は1/100㎜
バルブボディ 設備に加え、それらを使いこなす人材も重要。幅15mなどの大型加工でも求められる精度は0.01㎜と超精密。「材料特性や加工手順、加工方法を熟知していないと、加工による製品変形、歪みが発生してしまう」(川本社長)。こうしたノウハウを持つ技術者なくして同社の高精度加工は成立しない。中には、「他社で加工したが、歪みが出てしまい、対策のしようがなくなった製品をなんとかしてほしい」という依頼があるほど。
川本社長は、「ここは切り込み量を増やして加工した方が良いとか、逆に高速回転で加工した方が良いとか、攻め方は様々。これは、組立や溶接でも同じ。機械があればできるというものではなく、やはり『現場の力』というのが大事」。
この「現場の力」は、工具を自作するまでに及ぶ。組立に使う作業工具や、独自のチップやドリルなどの加工工具なども自分たちで製作してしまう。例えば、下穴なしで一度に大口径の穴加工ができる「スーパードリル」は、市場に出回る前から自社で製作して使っていたという。
現在のタービン業界では、材料調達から加工、溶接、塗装、梱包までを手掛ける一括発注というのが主流になりつつある。川本社長は「パートナー企業と協力すれば、大型はもちろん、小さいものも可能。当社でできないものはない」。将来的には、「最終製品まで手掛けていきたい」と、事業領域をさらに拡大しようと構想を練っている。
そのため、高砂新工場は、あえてスペースに余裕を持たせ、床には簡単にレイアウト変更や設備導入できるようにと、剥がしやすいアスファルトを敷いている。川本社長は「この工場はまだ発展途上。今後、加工以外に、組立や溶接、そのほかにも様々な仕事を手掛けられるようにする予定」。さらに、横須賀も第2工場の新設を検討している。
また、2012年からは、大学と共同で材料開発にも取り組んでいる。レアメタルを使わずに鉄と同等の強度を持つマグネシウム合金や、高強度の純チタンなど、航空機や、自動車、医療、一般向け商材など、用途は幅広い。こうした既存分野以外の新たな柱となる事業にも挑戦していく。
会社メモ
川本 忠博社長本 社:兵庫県高砂市荒井町新浜2-11-77
創 業:1948年5月
資本金:4800万円
代表者:川本忠博氏
従業員数:100人
工 場:高砂新工場(本社と同じ)、高砂第1工場(高砂市曽根町899)、高砂第2工場(高砂市松陽3-888)、横須賀工場(横須賀市内川1-4-27)
事業内容:機械加工、組立作業、現地工事、材料調達
日本産機新聞 平成29年(2017年)3月25日号
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