2024年11月21日(木)

車8社 計5.8兆円
研究開発・設備投資

設備投資、初の3兆円台

 工作機械、切削工具業界最大の需要先である四輪車メーカー8社(連結)の2015年度研究開発費と設備投資計画が出そろった。今年度は、研究開発、設備投資の合計が過去最大の前年度をさらに4.9%上回る計5兆8000億円超しとなる。拡張するグローバル市場への対応と国内市場にはガソリン車、ディーゼル車、HV(ハイブリッド車)、電気自動車の基礎研究・開発をさらに進め、生産現場のマザー工場化を進める。

 内訳は、研究開発費が前年度実績を6.3%上回る2.8兆円弱、設備投資が同3.7%増のついに3兆円強の大台に乗せる。日本の自動車メーカー各社が、さらなる現場力のしなやかさと知能化投資を強化する。

乗用車8社の研究開発費
乗用車8社の研究開発費
 
乗用車8社の設備投資
乗用車8社の設備投資

トヨタ、日本に5800億円(設備)

 研究開発費と設備投資の8社総額(連結)は、過去最大の前年同期を4.9%上回る5兆8140億円とした。うち研究開発費は、同6.3%増の2兆7740億円で、8社がそろって過去最大を計画している。また、設備投資も同様に過去最大の前年度を3.7%上回る3兆400億円を計上している。3兆円台は初めて。低燃費、知能化の新車投入をはじめ、国内外で展開するクルマの心臓部ユニット関連の開発投資、プラットフォームの共有化、基礎技術の深掘りなどを計画している。研究開発費のように横一線ではないが、各社のそれぞれの事情が出て斑模様となった。

研究開発費
 まず、研究開発費を見ると、8社揃って増額した。

 前年度に対し最も伸び率が高いのは富士で、同社は同16.2%増の970億円を計画する。内訳は、14年度にスタートした新中期経営ビジョン「際立とう2020」を下敷きに「販売台数110万台+α」を計画する。14年度の販売台数が92万台、今年度は95万台を見込み、16年度に大台の100万台にする計画。16年度の生産は、国内(群馬製作所)が63万台、海外(米国、マレーシア)が32万台で、国内の 生産に重きを置いている。また、生産現場では部品の共有化(量産効果)、部品定数の削減(複合化)を行うとしている。

 また、2番目の伸び率のダイハツは、同10.6%増の500億円を当てる。ただし、同社は過去最大を記録した前期に比べ軽自動車市場は、消費増税後の反落や軽自動車増税前の駆け込み需要の影響を見込み「減少する」と見ている。ただし、研究開発費は、パワートレインの進化・車両の進化・エネルギーマネジメントの3分野を前年に引き続き「磨き上げ」、低燃費技術を全車に適用拡大する計画。

 第3位の三菱は、同9.9%増の820億円を計画している。戦略商品の投入、次世代技術(環境対応)の開発、品質改革に取り組むとしており、16年度も「継続・強化投資」として、今年度比3.0%増の845億円を予定している。

 4位はマツダで、同15.3%増の1250億円を計画する。「CX‐5」からスタートしたSKYACTIV技術の開発効率化をさらに30%改善する研究開発を続けるとしている。例えば、SKYACTIV‐6は燃費・トルクの改善を15%、Euro6適合車の開発を予定している。

 金額で断トツは、やはりトヨタ。伸び率は7位だが、同4.5%増の1兆500億円を計画している。
 この5月末、3月期決算で挨拶した豊田章男社長は、「投資の原単位低減や生産性向上、原価改善などの努力を通じ、継続的に改革の資源を生み出していくサイクルをぶれることなく回し、常に進化し続ける強い現場をつくる」とし、各部門の生産技術がブレークダウンし具現化する。

 また、2番目のホンダは、同7.2%増の7100億円を計上している。「良いものを早く、安く、低炭素で」を作り上げる方針。昨年に引き続き、横滑りを抑制するシステム、軽量コンパクトなハイブリッドエンジンの開発し、加速性と低燃費を実現するとしている。

設備投資
 一方、設備投資は、日産、ホンダ、富士、三菱の4社が過去最大とした。

 日産は前年同期比18.8%増の5500億円、ホンダは同1.8%増の6700億円、富士は同17.4増の1300億円、三菱は同54.4%の1050億円とした。

 常に投資額最大のトヨタは、08年以降3番目の規模の同1.9%増の1兆2000億円を計画している。この額は、海外展開を強化した08年(1兆4138億円)、09年(1兆2612億円)に及ばないが1兆円を超す。

うち日本には、48.3%の5800億円を計画する。これは、13年度にスタートしたTNGA(Toyota New Global Architecture)の推進をさらに具現化するもの。つまり「もっといいクルマづくり」に向け、商品力の向上と原価低減を同時に達成するクルマづくりを進める。

 また、Skyactivエンジンの大ヒットで躍進著しいマツダは2番目の規模の同19.9%減の1050億円を、ダイハツは3番目の同22.5%減の1000億円、スズキも同様に3番目の同7.5%減の1800億円と、それぞれ前年度を下回るが1000億円台を準備する。

 今年度の研究開発費と設備投資は各社各様の内容となるものの生産設備の充実、合理化及び更新などは変わらない。さらに、FCV(燃料電池車)及びEV(電気自動車)の本格生産、新プラットフォームの開発、異なる車種間の部品・ユニットの共通化(コストと工数の削減)、部品生産及び組立ラインの合理化、ものづくりのムダなどを、設計・生産技術・製造・調達が一体になって取り組む姿勢が浮き彫りにされている。(社名の略称。2015年度アニュアルレポートないし有価証券報告書から)

日本産機新聞 平成27年(2015年)6月25日号

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