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【特集】どうなる、日本の半導体
経済産業省は6月4日、半導体産業の基盤強化に向けた国家戦略を取りまとめた。国内のサプライチェーン(供給網)を強化するために、海外企業との共同開発・生産の推進や、国内の半導体工場の刷新などを支援する内容を盛り込んだ。IT化、デジタル化が進み、あらゆる工業製品に欠かせない部品となった半導体は、今後もさらに需要が増加していくことが見込まれる。そうした中、かつて世界を席巻した日本の半導体産業の競争力を再び強化し、拡大・変化する半導体市場の動きに対応していく。
目次
PART1:日本の半導体産業の動き
PART2:産業総合研究所ルポ
PART3:大羽精研ルポ
PART1
国家戦略を策定、国内供給網の強靭化へ
経済産業省が6月4日に発表した「半導体・デジタル産業戦略」の最大のポイントは、一般的な民間事業支援の枠を超えた国家事業として産業基盤の確保・強化に取り組むという点だ。特に半導体における国内のサプライチェーンを強化するために、より強固な製造基盤の構築に向けて取り組みを進める。
その一つが海外企業との連携。国内の製造装置産業や産業技術総合研究所などが海外の先端ファウンドリ企業と共同開発を進め、日本の強みである製造装置や素材をさらに磨く。その他、先端ロジック半導体(線幅40mm未満)の量産化に向けて海外ファウンドリ企業との合弁工場を設立するなど、量産工場の国内立地を目指す。
また、国内の既存工場の刷新にも取り組む。現在、日本の半導体工場数は世界トップだが、その多くが陳腐化・老朽化している。そうした工場の改修や増設などを行い、メモリやセンサ、パワーなどといった半導体の安定供給の確保を狙う。
その他、「半導体・デジタル産業戦略」では半導体産業の基盤強化に向けた今後の対応策として、「グリーンイノベーション促進」を掲げる。デジタル化の拡大によって、データの処理量が増加し、そのデータ処理にかかる消費電力も大幅に増加することが見込まれており、半導体の省エネ化や低消費電力化が求められている。こうした技術開発への支援などに注力する。
また、5GやAI、IoTなどのデジタル技術基盤の発展によって、自動車の自動運転や工場の自動化などに必要なロジック半導体の設計開発の推進も対応策の一つに挙げる。ユーザー企業などと一体となってエッジ向けの半導体設計技術の開発などに取り組む。
日本の半導体はかつて圧倒的な世界シェアを誇っていたが、1990年代以降は徐々に失速し、現在の世界シェアは10%ほどにとどまっている。一方で、半導体の需要は、自動車の電動化、5Gの普及、IoT化などによって今後もさらに増加することが見込まれ、これまで以上の生産・開発能力の確保が必要になっている。
世界各国ではすでに政府による支援が進んでおり、アメリカでは520億ドル(約5.7兆円)の半導体産業投資を決めた他、中国では合計兆円超の投資を行うなど各国が大規模な産業施策を展開している。日本もこうした世界の動きや市場の変化に対応していくためにも国を挙げた取り組みが重要だ。
どうなる、日本の半導体
半導体産業の強化に向けて国を挙げた取り組みが進む中、研究機関や部品加工メーカーでも技術開発や設備投資が活発化している。産総研では、民間企業と共同で大規模なプロジェクトを発足し、次世代型パワー半導体用の炭化ケイ素(SiC)ウエハーの量産化技術の確立を目指している。一方、半導体を電子基板に実装するチップマウンターの部品を手掛ける大羽精研では、半導体の微細化に合わせて微細加工技術の追求や計測技術の強化に挑む。それぞれの取り組みを紹介する。
PART2
SiCウエハー拡大前夜
エネルギー損失が少ない、次世代型のパワー半導体用の炭化ケイ素(SiC)ウエハーの量産化に向けた動きがオールジャパンで加速している。今春には産業技術総合研究所(産総研)が、民間企業と共同で、大型プロジェクトを発足。SiCウエハーの低価格化の量産技術確立を目指す。現在でも、半導体のサプライチェーンの中でも、日本企業は装置や材料に強みを持つ。今後もその競争力を維持するには、拡大前夜であるSiCウエハーの量産化技術が重要になる。
量産化に向け、オールジャパンで開発進む
産総研でプロジェクト
エネルギー損失が少ない、次世代型のパワー半導体用の炭化ケイ素(SiC)ウエハーの量産化に向けた動きがオールジャパンで加速している。今春には産業技術総合研究所(産総研)が、民間企業と共同で、大型プロジェクトを発足。SiCウエハーの低価格化の量産技術確立を目指す。現在でも、半導体のサプライチェーンの中でも、日本企業は装置や材料に強みを持つ。今後もその競争力を維持するには、拡大前夜であるSiCウエハーの量産化技術が重要になる。
SiCは炭素(C)とケイ素(Si)から成る化合物半導体。単結晶シリコン(Si)に比べ、電気を通した際のエネルギー損失が非常に少ない。このため、SiCは、高電圧の電圧変換や、直流/交流への変換時に必要なパワエレ半導体向けのウエハーとして期待されている。
市場拡大は確実
既に、SiCウエハーの社会実装は少しずつ始まっている。東海道新幹線の新型車両では、高電圧を制御する高性能SiCフルインバータが搭載されており、山手線などの一部の車両での採用も進む。
「今後はカーボンニュートラルの観点から、発電送電システムはもとより、EVやデータセンターでの採用や、工場全体の省エネには欠かせなくなる」(産総研の加藤智久研究チーム長)という。
専門企業20社が参画
いかに安く作るか
一方で、SiCウエハーの普及へ課題となっているのが、Siに比べて高い価格だ。産総研が立ち上げたプロジェクトの狙いはまさにそこで、低コストで量産できる生産技術の確立を目指す。今春には、産総研の「民活型オープンイノベーション共同体つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEG)」内に、材料分科会を新設。材料、装置、プロセス、評価の専門企業など約20社が集まり、オールジャパンで量産に向けて挑んでいる。
課題は大きく2つ
SiCウエハーを安く作るうえで課題は大きく2つ。一つはSiに比べて結晶の成長が遅いこと。1時間でSiは20~30㎜程度成長するが、SiCは500μm程度で、Siに比べ、非常に時間がかかる。
もう一つが、ウエハーの加工技術だ。SiCはこれまで研磨材料として用いられるほど高硬度で、加工に手間がかかる。単結晶の切断から研磨工程まで、ダイヤモンド砥粒の消費も大きく、コストアップ要因になっている。
産総研では、この大きな2つの課題に対し「次世代SiC結晶成長技術開発」と「次世代ウエハー加工技術」の2つプロジェクトを立ち上げて、研究を進めている。
加藤研究チーム長は「現在は約20社が参画して頂いているが、全く異なる生産技術から知見やノウハウから得られることもある。新たに希望する企業や研究機関など参画して欲しい」とし、オールジャパンでの量産技術確立を急ぐ。
産業総合研究所
2200人以上の研究職員を抱える、日本最大級の公的研究機関。産業や社会に役立つ技術の創出とその実用化や、革新的な技術シーズを事業化に繋げるための「橋渡し」を行う。「エネルギー・環境」「生命工学」「情報・人間工学」「材料・化学」「エレクトロニクス・製造」「地質調査」「計量標準」の7つが研究領域。
PART3
ミクロン台の加工精度
半導体や電子部品などをプリント基板に実装する装置(チップマウンター)の吸着ノズルとノズルを作動させるための高機能ユニットを手掛ける大羽精研。世界トップクラスの市場シェアを誇る同社の強みは、ミクロン単位の加工精度が必要な高精度部品を安定して作り続ける量産技術だ。豊富な生産設備や高いノウハウがそれを支える。今後、半導体需要のさらなる増加が見込まれる中、微細加工技術の追求や計測技術の向上などに取り組み、半導体産業の成長に対応していく。
高精度実現する最新鋭の設備
大羽精研は1973年に、機械工具の研磨加工で創業した。その後、強みである研削加工技術を生かし、トランスミッションやサスペンション関連の自動車部品を手掛けるなど、加工難度の高い加工に挑戦し、事業を拡大していった。チップマウンターの部品を手掛け始めたのは89 年。現在では、同社の売上の多くを占める事業にまで成長した。
同社が製造するのは、チップマウンターの「ヘッド」と呼ばれる部品。半導体や電子部品を吸着し運ぶ部分で、特に重要な部品の一つとされている。一つひとつの部品にはミクロン台の加工精度が要求され、それらの部品を組み立てるのにも精密な技術が求められる。
生産工場にはサブミクロンの形状精度で加工可能な研削盤や、72 時間の連続加工が可能かつ工具を320本搭載できる55軸マシニングセンタなど、高精度、高速加工を実現する最新鋭の設備などが並ぶ。
その他にも、高い精度で継続して作り続けるための工程設計や治工具・検具などでも独自のノウハウを持つ。「工程設計から加工、治工具・検査治具の製作まで全て自社で行うことができることによって、高精度部品の量産を可能にしている」( 営業部嶋田淳一本部長)。
X線CTなど計測技術に力
現在特に注力しているのが、微細加工技術だ。「半導体の微細化が進み、それに対応する部品を小型化しないといけない」(嶋田本部長)。加工設備に加え、工具にもこだわり、微細加工技術を追求している。祖業で培った工具研削技術を生かして特殊工具を内製化しており、メーカー製の工具と使い分けることで、高品質な加工を実現している。
また、もう一つ力を入れているのが計測技術だ。同社の計測部門には、全従業員の約1割を占める人数が所属している。「自分たちが加工したものを正しく評価できるということも高精度加工に欠かせない」(嶋田本部長)。三次元測定機や表面粗さ測定機など高スペックな測定設備を揃え、ほぼ測れないものは無いという。
今年の初めにはX線CT三次元測定機を導入した。内部観察だけでなく形状測定も可能なX線CTで、これまでは計測が困難もしくは不可能だった複雑形状や組立部品などの形状や寸法を、ミクロンオーダーで測ることができる。また、破壊する必要がないため、全数検査などにも対応することができ、これまで以上の品質保証を提供できるようになった。
導体は今後、5Gや自動車などで用途が拡大し、今後も需要が増加することが予測される。同社では今後、この拡大する需要を取り込むために、国内だけでなく海外市場への展開も検討している。「米国をはじめとする海外の市場規模は国内に比べ圧倒的に大きい市場である。現状は国内向けがほとんどだが、今後も成長を続けるためには海外にも目を向けていきたい」(嶋田本部長)。
- 本 社:愛知県豊橋市寺沢町字深沢170
- 創 業:1973年
- 代表者:藤井拓己社長
- 従業員:276人
- 事業内容: チップマウンター部品製造、自動車部品製造、産業機械部品。
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