2018年1月21日(日)

【座談会】販売店4社が語る2018 テーマ「未来を拓く戦略」
第1部 -各社の課題と取り組み-

求めるのは適応能力とハングリー精神

 製造業の海外展開やネット商社の台頭など機械工具業界を取り巻く環境は変化し続けている。それに対応するため、機械工具販売店も変化を始めている。こうした背景により本紙では2016年から機械工具販売店の今後を模索する新春座談会を開き、時代の変化を乗り切る戦略や経営するうえで重要な要素を語ってもらっている。今回は「未来を拓く戦略」をテーマに、愛知県名古屋市に本社を置く販売店4社の経営者を招いて、各社の課題や取り組みを聞くことができた。そこでみえてきたものは、「差別化」、「人材」、「社員との関係性」という経営の普遍的な要素であった。

座談会出席者

広島商事 林正人社長

広島商事
林正人社長

  1948年に創業。名古屋市昭和区に本社を構え、北陸出張所(石川県)や中国現地法人(上海)を持つ。従業員は40人。研削砥石の販売からスタートし、機械工具の販売及び部品調達、加工工程用の専用機の設計・製作ほか、広商エンジニアリングというエンジニアリング会社があり、板金加工品の製作や取り付け、電気・配線工事などを請け負う。近々社名を変更予定。

朝日 幡野裕幸社長

朝日
幡野裕幸社長

  名古屋市中区に本社を構える。1941年創業の切削工具の専門商社。従業員数は約10人。卸と直需の両方を持つ。取扱商品は主力の切削工具を中心に、工作機械や周辺機器まで幅広い。「あくが屋」という会員制ネットショッピングサイトを3年前に立ち上げ、豊富な在庫を活かして全国に切削工具を販売する。掲載商品の多くは即納可能。

三和商事 和久田修志社長

三和商事
和久田修志社長

  本社は名古屋市瑞穂区。機械工具販売は卸と直需の両方を持つ。従業員は45人(パート22人)。取扱商品は切削工具、荷役運搬機器、油空圧機器、作業工具、工作機械など全般。特に切削工具が強く、売上の8割を占める。M&Aも積極的で関連会社にエンドミル・ドリルの製造及び再研磨やオリジナル工具を販売するビーティーティー社など3社を持つ。

こうら 小浦正喜社長

こうら
小浦正喜社長

  1959年に創業し名古屋市熱田区に本社を構える。従業員数は12人。工作機械や切削工具、伝導機器、油空圧機器など幅広い商品を取り扱うほか、エンジニアリング事業として工場を持ち、専用機や治工具の設計・製造、安全柵などの工事施工、穴あけや溝加工などの追加工なども請け負う。売上構成比では切削工具が4割、産業機械が4割。


座談会のテーマである「未来を拓く戦略」について話を聞いていきたいと思います。製造業の海外展開や人材育成、ネット環境など業界のみならず、様々な分野で変化が起こっていると思います。まずは、各社が考える課題とその取り組みについてお聞きします。広島商事さんは海外展開もされていますが、どのような課題を持っていますか。

 林  最近は製造業の国内回帰という傾向もありますが、海外展開でいうと当社の中国法人では様々な問題が起こっています。ひとつは人材問題、ほかに商習慣、資金負担などで、我々中小企業がどこまでついていけるかが問われています。一時期メキシコに海外進出するユーザーも多く、メキシコに出してくれと依頼されましたが、それはお断りしました。我々の資金や人材面など体力からみて、海外進出なら中国やインドネシアなど東南アジアが精いっぱい。グローバルに展開するにはリスクが大きく、ひとつを少しずつ立ち上げていく方が良いと思います。これは私の考えですが、現地法人で利益が出たら、配当をもらわず、利益で運営できるようにしないと厳しいと思います。2000~3000万円の投資を短・中期で回収するのは難しいです。ただし、海外進出するとシナジー効果を出せるメリットもあります。

ネットについてはいかがですか。

 林  ネットで売れる物を人間が売っても採算が合わないと思います。ですからネットで売れない物を探して売ることが必要です。インターネット販売と競争していく一番良い方法は競争しないこと。大手通販会社は品ぞろえ、資金、ノウハウも桁違い。競争しないこと、ありきたりいえば、すみ分けが必要です。そのために我々は人間に依存します。人材をどう採用・育成し、活用していくかがすべてだと思います。結局「人」ですよ。

どのような人材を求めていますか。

 林  頭の良い人はいらないですね。それに募集しても業界に来ないです。それよりも地頭が良い人がほしいです。

それは適応能力が高い人という意味ですか。

 林  そうですね。ひとつは精神面、打たれ強い人でなければいけない。中小企業は将来の答えがないし、何が起こるか分かりません。適応能力やハングリー精神が高くないと、この業界ではやっていけないでしょう。ただ、そういうタイプの人材が減っていると感じています。それでも、お金とエネルギーを使って人材を採用していかなければ未来はありません。中小企業のボトルネックは人材。解決するのは難しいです。おそらく海外進出するより難しい。

幡野社長と小浦社長
みんな、それぞれの意見に聞き入る

育てる仕組みは。

 林  育てる仕組みというより環境だと思います。私の考えでは、社員を信用し、また社員からも信用されなければいけません。社員が会社を信用しないと、まじめに働くわけがない。だから、社員に信用される会社をつくっていくことが大切です。それをやれば、人はついてくるという気持ちが必要です。

朝日さんは切削工具専門商社で卸と直需の両方をやっているということですが。

 幡野  当社はリーマンショックが大きな転機となりました。それまで卸を順調にやってきましたが、私が社長に就任したリーマンショック前後に、会社の財務面を含む見直しを図る必要に迫られました。直面する課題といえるかは分かりませんが、その後取り組んできたのは社内的な改革です。その間、製造業の海外移転に伴い、同業者も海外進出が日常茶飯事のように話がでていました。
 そこで決めたのが社長の考えをリセットすることです。例えば、売上数億円の会社だと、経常利益で考えても何億も残りません。売上が10億円あれば、海外進出する可能はあるかもしれませんが。

海外進出は選択肢になかったと。

 幡野  そうです。売上数億円の会社が海外進出して成功したかどうかは疑問です。中国だと経費も、常にレクサス1台分ぐらいかかります。同業者で売上高5~6億で経常利益2000~3000万円取れる会社は少ない。いくら機械工具商社は底堅いとはいえ、当社ほどの規模で海外進出は選択肢に入らないと思います。そこでネットに注力したわけです。

 司会  なるほど。

 幡野  少し話がずれましたが、社内の取り組みのなかでは、経営者と社員がいかにつながりを強めていくかが大きな課題です。例えば、当社は経営計画をきちっとつくり、社員に決算報告し、次の戦略を説明しています。私が4時間ほど戦略や財務面の改善、利益率の向上について社員に協力をお願いし、社員にはそれで利益がでたら、どれくらい還元するかなど話します。それが肝心だと思います。人材育成とは違うかもしれませんが、いずれにしても会社が利益をだしてから、営業所展開や海外進出、ネットへの投資などができると思います。機械工具商社の多くは当社と同じ規模だと思いますが、同じ経営者という立場で物事をみると、私は社長の考え方が一番の課題だと思います。特に2代目、3代目は創業者と全く考え方を変えないといけない。何をいっているんだと言われるかもしれませんが、よりシビアに物事をみないといけません。売上を右肩上がりにしたくてもできないですから。色々な方法を社内で試し、社員に理解してもらって、利益を出し事業展開するのが良いと思います。

リーマン前は決算などオープンではなかったんですね。

 幡野  全くオープンではありませんでした。今はオープンにして、どれくらいの利益で、どれくらいの賞与になるかなど伝えています。そうすると目標も設定しやすい。社内だけでなく取引先にも求められれば決算書を開示しています。それぐらいしないと信用は生まれません。当社ぐらいの会社だと1人の社員が減ると戦力上では1人以上のマイナスです。これから病気や看病、有休、時短などで財務的に難しくなります。従業員とどこまで信頼関係を築けるかは社長の取り組み次第ではないでしょうか。

オープン化を図った成果は。

 幡野  3年ほど経つと、利益率が改善するなど、はっきり数字として形に表れています。

林社長と和久田社長
熱い議論はまだまだ続く

三和商事さんはM&Aも行っていると聞きますが、それぞれの会社で人材の育成法は異なるのですか。

 和久田  近年3年ほどをメドにM&Aを行っています。M&Aを行うと、会社ごとのカラーの違いが課題となります。結論から言いますと、会社のカラーを変えずに、少し三和商事カラーを入れてあげるだけで良いのです。ゴロっと変えると、M&Aの失敗につながると思います。それは人材育成も同じで、よく管理すると言いますよね。でも、私は社員の管理は絶対にせず、規律だけ守ろうと言います。規律とは何かと問われると、意識の統一です。

具体的には。

 和久田  新人なら入社3カ月の試用期間中に見るところが決まっていて、「挨拶」と「電話応対」のみ観察しています。当社は1コールで電話に出るというルールを10年以上続けていて、1コールで躊躇なく電話に出られるか、誰かに任せず率先して応対するかを見ています。なぜなら、電話応対というのは結構難しいと思います。相手がどんな人か分からないから。それを電話にでて対応するので、見ているだけで伸びる人、伸びない人が分かってきます。電話件数も調べていて、毎日1コールで応対するのが全体の6~7割ほどです。最近良い傾向と思うのが、お客様が5コール位鳴らすと、休みだと思って切ってしまう人がいると知りました。1コールで出ることが当たり前の会社と認識してもらっています。それも他社との差別化ですよね。それができるのは社員教育です。

かなり徹底されていますね。

 和久田  「凡事徹底」という言葉が好きで、「小さな事を大事にしようよ」と説いています。小さなことを徹底して継続する。中小企業ではこういうことをやっていかないと勝てません。これをずっと社員にやってもらっていると、社員の基礎力がつくというか、いつの間にか鍛えられます。1コールで電話にでるには商品知識も増やさないといけないので自然に勉強を始めます。当社はあまり研修会や勉強会などやりません。電話に応対しお客様から質問されて、すぐ答えられるかどうかです。失敗すると自分への恥にもなる。やっているのはそれだけです。

ほかに何か指導されていることはありますか。

 和久田  良く社員に工夫してほしいと言います。社員から何を工夫したら良いかと問われるので「スピードだよ」って答えています。お客様が求めているものを、いかに早いスピードで答えるかが工夫だと思います。社内のコミュニケーションも取れているので迅速に対応することを心掛けています。

どのように社内のコミュニケーションを取っているのですか。

 和久田  うちは飲みニケーションです。京セラの稲盛会長様も行っていた社員との親睦を図るコミュニケーションを3カ月に1回開いています。

コミュニケーションの場ってことですね。

 和久田  それを行うと、社員がその場でいろいろな不満を私や誰かに話すことで風通しの良い会社になっていきます。良く仕組みをつくりましょうって言いますが、飲み会が当社の仕組みや組織力の強化につながっています。プライベートな部分などいろいろな話ができており、おかげで当社はパートさんも含め10年に1人位しか辞めません。みんな定年まで頑張ってくれています。逆に辞めないことで、慣れ合いみたいなところがときどきあるのを感じることもあります。

 林  そこが直面する課題?(笑)

 和久田  そうです(笑)。社員は小さなことをコツコツとこなせば良いと思っています。だから急成長はしないと思います。ただ、M&Aは継続的に行っていきます。この業界はまとまる力が必要だと思いますし、会社の規模がある程度大きくなることはメリットだと思います。

【座談会】販売店4社が語る2018 テーマ「未来を拓く戦略」第1部 -各社の課題と取り組み2- に続く

日本産機新聞 平成30年(2018年)1月5日号

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