2017年11月24日(金)

アルミの 自動車部品
軽量化で適用広がる

課題は溶着、切屑処理

 自動車の燃費性能を高めるため、車体を軽量化できるアルミ部品の適用範囲が広がっている。エンジンや足回り部品をはじめ、近年はボディやフレームにも使われている。アルミは軽く、耐食性や熱伝導性に優れるが、切削加工で工具に溶着したり熱変異しやすいのが難点。工具メーカーは加工精度や生産性を高める新型を相次いで開発し、需要を開拓している。

自動車の生産台数

アルミの種類

 工場に100台を超すマシニングセンタがずらりと並ぶ。ロボットがアルミダイカストのワークを供給すると、穴をあけ、フライス加工をしていく。

 自動車産業が集積する愛知県西尾市の部品メーカー、榊原精器。自動車のオルタネータをはじめ、全事業の85%がアルミ部品の加工だ。

 1941年に創業し、早くからアルミ部品を手掛けてきた。5年ほど前からは試作から量産までの一貫生産対応に取り組み、新規取引先からの受注も増やして2015年には過去最高の売上高(89億円)となった。

 榊原利夫社長は、「自動車業界の発展、そしてアルミ部品の進化とともに当社の事業は成長してきた」と話す。

 重さが鉄の約3分の1と軽量なアルミは、古くから自動車部品に用いられてきた。

 1950年頃にはシリンダヘッドやトランスミッションケースなどに採用され、その後はインテークマニホールドやホイール、シフトフォークなどへと応用範囲が大きく広がった。

 日本アルミニウム協会によると2016年の日本のアルミ需要量は約412万トンで、このうち約38%が自動車向け(約159万トン)。車1台あたりの使用量は右肩上がりで伸び続けており、ある調査会社は2025年には16年比で15%増えると予測する。

 その背景にあるのは燃費性能の高い自動車開発だ。地球環境保全のため欧州や北米など世界各国で燃費規制強化の動きが広がるなか、自動車メーカー各社は鉄より大幅に軽量化でき燃費性能の向上に期待できるアルミに注目している。

 大手自動車メーカーの生産技術部長は、「エンジンやステアリングなどに加え今後はボディパネルやフレームなどでの採用を進めていく」と話す。

 ただ、アルミは溶ける温度が低く(660度)伸びやすい性質のため、切削加工をすると仕上げ面や工具に溶着しやすく、切屑が切れにくい。またシリコンを含む6000系などのアルミ合金は硬く加工しにくい。このため、切削工具には溶着や切屑のかみ込みを抑える機能が求められる。

精度向上する工具続々

アルミを加工する多機能工具
アルミを加工する多機能工具
(提供:住友電気工業)
 住友電気工業は昨年、アルミ加工用の多機能工具「SGW型」を発売した。シャープな切れ味のダイヤチップに独自の三次元形状のブレーカをつけたのが特長で、溝入れや横送り加工で摩擦抵抗を抑え、切屑を細かく分断できる。

 デザイン開発部の金田泰幸部長は、「自動車のバルブボディのスプールなど数万を超す大量生産品でも、その性能を長期間維持し加工品質を保ち続けることができる」という。

 同社はスミダイヤのブランドでダイヤ工具を幅広く展開しておりアルミ加工工具は得意分野。工具を製造する住友電工ハードメタルの佐橋稔之社長は、「アルミ加工の市場は今後も伸びていく。新たな工具を開発し需要を開拓していきたい」と話す。

 ある切削工具商社はこうした標準品に加え、ドリルやリーマの機能を持つ刃が多段の工具を工具メーカーに特別に製作依頼し販売している。シリンダブロックやミッションケースなど穴が複雑に交錯する形状の加工工程を集約したいというユーザーニーズに応えるためだ。

 求めるのは主に自動車部品大手で、一度に数百万円もの受注があるという。営業部長は「アルミ加工の特殊工具はユーザーにとって設備に近い感覚。採用されれば海外拠点でも導入される。ビジネスチャンスを広げるため今後も力を入れていく」。

日本産機新聞 平成29年(2017年)4月25日号

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