ある工具メーカーの工場長は手腕を認められ招き入れられた。大手メーカーで海外拠点の責任者を務め、商品開発にも関わった。経営者が期待するのは生産性改善やニーズに応える新商品開発だ。 まず部下の心の垣根を無くそうと考えた。工場 […]
他分野との交流増やして知の探索を【現場考】
ある展示会で、デッサンやワークなどを撮影するだけで、AIが3次元モデルを作成してくれるというソフトを見つけた。同製品を扱う代理店の担当者は「デジタル上で形状を見ながら話ができるので、商談や打ち合わせの効率化に使える」と製造業や機械工具商向けにPRしていた。
消費財向け商品をデザインする知人に、このソフトを紹介したところ「顧客とのイメージ共有にすぐに使いたい」という。代理店の担当者に伝えると「全く気付かなかった市場。消費財の業界にもアピールしたい」。このように、ある商品やサービスが想定外の分野で採用され、市場が広がることは時々ある。
「両利きの経営」で知られる早稲田大学の入山章栄教授の講演を聞く機会があった。同氏がいう両利きとは、既存事業と新規事業を両手にたとえ、両立させる経営のこと。
肝は「知の探索」と「知の深化」だという。「探索」は自社の認知の範囲を超え、遠くに認知を広げる行為。「深化」は自社の持つ特定分野の知を深掘りし、磨き込む行為だ。
自分の熟知する領域を深掘りする「深化」は得意だが「探索」が苦手な日本企業は多いという。自身の全く知らない何かを探す「探索」は遠くにあることが多く、時間も手間もかかるし、失敗することが多いからだ。しかし、新規事業を拡大するには、探索が重要だと入山教授は指摘する。
自身もそうだが、管理職になる人材は業界に長く、経験もあるため「深化」に傾倒しがちだ。むしろ、業界に長いが故に「深化」にとらわれてしまい「探索」にかける時間は少ないように思う。
新たな市場開拓は管理職の重要な業務の一つだ。だが、国内市場が大きくならない中で、既存の市場やビジネスの「深化」だけで拡大は難しい。全く異なる業界の人との交流を通じて「知を探索」することは、視野を広げると同時に、アイデアを生み出すヒントになる。
日本産機新聞2026年6月20日号
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