2026年1月1日(木)

構造の変化に挑む年

2026年新年号1面に掲載 柳川重昌氏(Cominix取締役会長)による揮毫

「好きな言葉はいくつかあるが、今回『正々堂々』を掲げたのは私の生き方であるからです。進むべき道に迷ったときこそ、より積極的で、より困難な方を選ぶ。そして、物事を判断する際には、ただ一つの『本質』を見極めることを何より大切にしてきました。上場企業として歩むということは厳しい審査を経て透明性の高い情報開示を続け、社会からの信頼に応えていくということでもあります。私はこれからも『正々堂々』とした姿勢で経営に臨み、まっすぐに挑戦を続けていきます」(柳川重昌氏)。

変わり続ける勇気を

【上】㊧ロボットに動作を習得させるフィジカルデータ生成センター※イメージ(山善がプロジェクトに参画)㊨深物加工に対応したエンドミル(MOLDINO)
【下】㊧AIロボが移動するワークのねじ締めを行う(ファナック)㊨調達を効率化するためニーズが増えている工具管理システム(曽根田工業)

2025年を振り返るとさまざまな変化や出来事があった。まず年明けからのトランプ関税。景気への影響に加え、輸出企業を中心に戦略の変更や対応を余儀なくされた。その後も各国が相互関税を課すなど自国優先主義が加速している。 

自動車業界では電気自動車(EV)化が停滞し、開発の方向性を見直す企業が出始めた。EV化だけでなく、立ち消えとなったが、ホンダと日産自動車の合併のニュースが出るなど、自動車業界の競争は過酷になっている。

人口減少に伴う市場縮小、労働力不足は大きな構造変化だ。小さくなるマーケットを鑑み、ドラッグストアや消費財などの流通業界で再編が加速。機械工具業界でも、合併や提携の動きが活発になっており、こうした流れとは無縁ではいられない。

生成AIの社会実装が加速した。日常生活ではチャットGPTが当たり前に使われるようになっただけでなく、製造業や商売の現場でもAIの実装が進み、従来のビジネスの在り方を大きく変化させようとしている。

こうして列挙してみると、昨年のニュースは構造やルールそのものが変化している事象が多い。スポーツでもそうだが、ルールや構造が変われば自らの在り方や手法を変える必要がある。しかし、機械工具商は長年のやり方で成長してきた経験があるがゆえに、「どう変化していけばいいのか」と悩む経営者が多いのもまた事実だ。

だが、よく指摘されるようにルールや構造の変化期は好機であることが多い。例えば2000年前半のIT勃興期。インターネットが一般に普及したことで、玉石混交ながら、さまざまな産業や企業が生まれた。今も成長を続ける企業は少なくない。やり方次第では、構造やルールの変化の時代は好機なのだ。

機械工具業界でもそれは同じ。ある老舗の大手生産財メーカーの3代目経営者に、今の立場でなければどんな事業をしたいかと問うたことがある。「機械工具商を興したい」という。理由は「成長産業だから」だ。「ユーザーの課題は高度化、複雑化し、メーカー単独では解決策を提供できないことが増えてきた。にもかかわらず、メーカーや技術同士をつなぐ存在が非常に少ない。さまざまな技術や情報をつなぐことができれば、機械工具商のビジネスはブルーオーシャンだ」と断言した。

昨秋に都内で開催された、全日本機械工具商連合会の全国大会でも坂井俊司会長(NaITO社長)は「機械工具業界はこれまで注文を頂き、必要な商品を供給することが当たり前だった。人手不足でその当たり前すらできなくなる可能性がある」と構造の変化を指摘。だが「ユーザーも生産財メーカーも人手不足で悩む。メーカーに近いスキルを持ち、ユーザーの人手不足に対応できる能力があれば、人手不足は危機ではなく好機だ」と説いた。

構造やルールの変化にどう挑むのか。各社の立ち位置や志向によって異なるが、間違いなく言えるのは、自身が「変化し、新たなことに挑むこと」だろう。事業に正解はない。全てが正解であり、ベターを追い続けねばならない。であれば、トライアンドエラーで変化し続けるしかない。先のメーカー経営者が指摘するように、機械工具商の前には、その変化を掴む好機があるのだから。

日本産機新聞2026年1月5日号

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