2025年8月29日(金)

パル・ミートと日新電機 労働安全に取り組む製造現場【特集:提案広がる労働安全】 

今回の特集は「提案広がる労働安全」。労働災害はすべての現場で発生する可能性があり、ほんのわずかなきっかけが死亡事故や休業災害につながることもある。そこで本特集では実際の製造現場に焦点を当て、精肉加工を手がけるパルミート(千葉県)と、変電設備などを製造する日新電機(京都府)での安全対策の取り組みを取材した。さらに、ユアサ商事機電本部の碓井利宏本部長に、労働安全に関する商材の市場動向を語ってもらい、労働安全に貢献する各社の製品も紹介する。

パル・ミート「水濡れによる転倒リスク対策/加工機での巻き込まれ事故防止」

パル・ミートは会員制宅配サービスを展開する生活協同組合パルシステムのグループ会社で、千葉県の習志野事業所では牛・豚の精肉加工から出荷までを一貫して手がけている。加工現場ではスライサーやミートチョッパー(挽肉加工機)などの大型機械が使用され、わずかな不具合が重大事故につながるリスクを抱える。

こうした背景から同事業所では、工場内で巻き込まれの危険性がある機械にはセンサー式の近接スイッチを特注で装備。稼働中に人が近づき、肉の投入口の手すりに触れると自動的に機械が停止する仕組みを導入し、巻き込まれ事故の未然防止に努めている。

生肉の大型加工機にはセンサー式の近接スイッチを備え、稼働中の巻き込み事故を防ぐ

安全衛生委員会を統括する上島智昭課長は「当社のような精肉工場では機械による事故のほか、包丁での切り傷や転倒といった人的ミスも労災の要因になり得る。加工エリアは水気が多く、特に転倒リスクは高い」と指摘。実際に同社ではパート従業員が多く、高齢化も進む中で転倒防止は課題だ。

これに対し、加工現場では滑りにくい床材の導入、床面にグレーチング(金属製の排水格子)を設置するなどの物理的対策を実施。加えて、滑り止め付きのほか、コルセットや切創手袋も従業員に支給する。低温の作業エリアでの作業に対応するため、キルティングベストの貸出しも行い、装備面からの安全性向上にも力を入れている。

水気による転倒災害は滑りにくい床材と滑り止め付の長靴を着用して対策する

しかし、冷蔵室内では低温による結露などが原因で、依然として滑りやすい環境が残っており、上島課長は「転倒対策は継続的な課題」として、改善を重ねていく構えだ。

現場で働く従業員の安全意識の醸成は、スライド資料を活用した研修を定期的に行う。

今後は、実際の作業風景を取り入れた動画マニュアルの導入も検討しており、視覚的な理解を促すことで、より実践的な安全意識の浸透を目指す。

安心・安全な食材は、製造現場の環境が整ってこそ消費者に届けられる。同社はこの原点に立ち返り、日々の安全管理と継続的な改善活動を通じて、信頼される食の提供に取り組んでいる。

パル・ミート 習志野事業所 

住  所: 千葉県習志野市実籾2‐36‐10

電  話: 047・403・2232

設  立: 1979年

従業員数:300人

日新電機「人と設備の両輪で安全体制を強化/感電・落下・重量物の事故ゼロを継続」

住友電気工業のグループ会社である日新電機は、設備投資と人材育成の両輪による安全対策を長年にわたって推進している。過去に発生した死亡災害や残存事故、1972年の労働安全衛生法の施行を契機に、危険予知活動を積極的に行い、安全対策に取り組む。

大型の変電設備や配電盤の製造を手掛ける同社では、「感電」・「重量物の運搬時の事故」・「高所からの転落」を「三悪災害」と位置付け、これらを重点的に防止している。

主な取り組みとしては、高所作業時にリフト式台車と安全帯の併用ほか、危険物を扱うエリアはエリアセンサーを設置して人の出入りを検知。全ての生産設備に危険度別に色分けステッカーを貼付し、視覚的な注意喚起でヒューマンエラーの抑制につなげている。

生産設備には危険度別に色分けステッカーを貼付して危険を喚起

設備投資と並んで安全教育にも力を入れる。本社工場に隣接する「日新アカデミー研修センター」には、模擬装置を用いた「安全実感自習室」があり、挟まれや転落といった危険を実体験により認識し、現場での危険予知能力を高める。過去の災害事例をパネル展示する「安全の部屋」の設置や、事故経験者が語り部として当事の背景を受講者に伝承するなど安全教育の体制を敷く。

過去の災害事例を展示する「安全の部屋」には、他企業からの見学者も訪れる

生産技術本部・安全環境部の持田保成部長は「設備の安全性はある程度の投資で確保できるが、事故の多くは人の思い込みや油断が原因。災害を身近に感じて『自分ごと化』することが大事で、それが安全意識の徹底につながる」と強調する。これらの取組みが奏功し、三悪災害は4年間でゼロを維持している。

親会社の住友電工や地域企業と連携した合同研修と情報共有にも積極的に取り組み、安全文化の底上げを図る。導入した安全機器や効果的な事例は、日新電機グループ内のプラットフォームで共有し、相互に学び合う仕組みを構築した。

持田部長はユーザーの立場から、機械工具商社に2人3脚の姿勢を求める。「工具商の方には用事がなくてもフラッと工場に足を運んでほしい。日頃から現場の従業員と話をすることで実用的な提案が可能になる。そうすればお互いが納得できる設備導入につながるはず」。

日新電機 本社工場

住  所: 京都府京都市右京区梅津高畝町47

電  話: 075・864・9024

設  立: 1917年

従業員数:1902人

日本産機新聞2025年8月20日号

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