2024年11月21日(木)

テクニカルセンター開設 −三和製作所–

高精度MCや測定機 実験重ね、加工課題解決

 三和製作所(大阪府貝塚市、072-426-0564)は、本社工場に切削工具の加工実験ができるテクニカルセンターを開設した。高性能の工作機械や測定機を用い、自動車部品メーカーなどが抱える加工課題を解決する工具を開発する。加工技術の研究拠点と位置づけ、新商品開発サイクルを早め、変化する市場のニーズに柔軟に応える。

新商品の開発サイクル早く ウェブ会議で技術提案も

高精度マシニングセンタ「V56i」

 テクニカルセンターは、本社工場の一部をリニューアルして新設した。高精度マシニングセンタ「V56i」(牧野フライス製作所)や小型CNC3次元座標測定機「DuraMax」(カールツァイス)を加工実験用の設備として導入。室内を恒温に保つ空調設備も完備した。総投資額は約1億円。センター長にはPCD事業部の越智直哉課長が就任した。

 テクニカルセンターでは、自動車部品や農業機械メーカーなどから依頼を受けて試作したPCDドリルや超硬ドリルで加工の実証実験をする。実験と改良を重ねて性能を高め、ユーザーそれぞれのニーズに応えるスペックに仕上げる。

ウェブ会議システムで加工状況を伝えることもできる

 自動車や農業機械は新機種開発のたびに被加工物(ワーク)の材質や形状、加工コストや品質、時間で新たな課題が浮上する。千地克典社長は「ニーズは多種多様で、開発時間も限られている。しかし社内に研究施設を持つことで、柔軟に、より早く、性能の優れた工具をユーザーに提供することができる」と話す。

 テクニカルセンターには、カメラやモニターも設置。加工実験中の様子を撮影し、その実況をウェブ会議システムで伝えることができる。千地社長は「遠方や海外のユーザーと距離や時間の壁を越えてリアルタイムで意見を交わし、商談できる。新型コロナの感染対策としても最大限に生かしていく」。

CNC3次元座標測定機「DuraMax」

 三和製作所は1931年に創業。ロウ付バイトや完成バイトを手掛け、その国内市場で高いシェアを誇る。しかし製造業の海外移転や加工の高速化を背景に市場が成熟しつつあった。

 そこでバイトに次ぐ新たな商品として2014年頃から、PCDドリルなど新たな分野の工具開発に取り組み始めた。PCDドリルは開発・生産体制を確立し、今では年間1億5千万円を販売する。

切削工具がものづくりの技術革新を支えていることを感じてもらうため展示するランボルギーニ「ウラカン」

  テクニカルセンターではPCDドリルをはじめ、センター穴工具や面取り工具の特殊品を開発するほか、そのノウハウを活かし標準品のラインナップも増やしていく。さらに来年1月にはNC旋盤も導入しバイトの研究開発もできるようにする。

千地社長は「ミーリングとターニングのニーズに応える工具を開発できる体制にし、ものづくりの生産効率改善や品質向上に貢献していきたい」。 

3氏に聞く、テクニカルセンターで取り組むこと

左から CD事業部課長 越智 直哉氏 営業部課長 東 智子氏 製造部 永野 晃太氏

商品開発のスピードを早く 製造部  永野  晃太氏

 商品開発では、いかに早く、ユーザーニーズに応える工具を開発するかが課題です。ニーズをフィードバックし、加工テストを重ねて改良していく。そのPDCAのサイクルを早め、技術課題を解決する工具を次々と生み出していきたい。新商品開発の目標は年間10アイテム。常に変化するニーズに柔軟に対応し、新商品を開発していきたい。

遠方・海外とウェブで技術交流 営業部 課長    智子氏

 ユーザーとの技術的な打ち合わせにウェブを活用していきたいと考えています。加工実験を撮影しながら、その様子をウェブ会議システム「Teams」で共有し、課題を見つけ、改良の糸口を探っていく。遠方や海外のユーザーも、距離や時間の制約を受けず、技術的な交流ができます。ウェブを最大限に活かし商品開発へとつなげていきたい。

ものづくりの魅力発信 PCD事業部 課長  越智  直哉氏

 三和製作所は毎年、工業高校の学生の職場体験を受け入れています。テクニカルセンターでは新たな工具を創る魅力を伝えたいと思っています。設計図を描き、最新の機械を操作し、加工実験も体験してもらいます。新たな工具を創造する楽しさやプロセス、そしてその工具がものづくりの技術革新を支えていることを知ってもらいたいと思っています。

日本産機新聞 2020年11月20日

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