2024年11月23日(土)

各地で建設の“槌音”響く

都市型の建設需要増

前年度比1.8%増

2兆1557億円(2016年度)

 日本各地で建設の“槌音”が響く。ショベル、ブルドーザーが土を掘り起し整地し、林立する杭打機やクレーンが基盤を造り構造物を運ぶ。1950年から60年代の頃のような土地を開墾・整地し、工場を建て、周辺に街づくりを起こす大規模工事こそ少なくなったが、築50年を超し、老朽化・陳腐化が進むビルの解体や再開発、市営・UR住宅の全面建て替え・集約があちこちで始まっている。一方で、ビッグプロジェクトが動く。2020年開催の東京オリンピック、パラリンピックを筆頭に、2017年開業予定の品川‐名古屋間のリニア中央新幹線工事は待ったなし。本特集は、建機の2016年度需要予測とケーススタディでは躍進著しいコベルコ建機(本社:東京)を取り上げる。日本製建機の“製造優位”を実証する同社五日市工場に注目した。(コベルコ建機五日市工場の現場報告インタビュー記事に続く)。

吹田市南千里の建設現場
吹田市南千里の建設現場
建設機械出荷額と輸出比率
建設機械出荷額と輸出比率

建設機械需要見通し(建機工)

 建設機械の2015年度と16年度の需要予測(グラフ参照)が8月28日発表された。
 日本建設機械工業会(建機工。会長:コベルコ建機社長藤岡純氏、正会員67社、7月時点のアンケート調査)によると、15年度の需要予測(国内・輸出)は前年度比0.1%減の2兆1181億円、16年度は15年度(予測)比1.8%増の2兆1557億円とした。16年度の予測は、リーマンショック以降で最高の14年度を1.7%上回るもので、建機生産に再び明るさが戻る。
 16年度の国内、海外予測を見ると、国内は同0.8%減の8536億円、輸出は同3.5%増の1兆3021億円としている。背景について建機工藤岡会長は「建機業界は、成熟して安定している」と解いた。また、「国内は、引き続き堅調な公共・民間投資、震災復興による需要が予測される一方で、小型エンジンを積んだ一部機種で反動減が予想される。また、輸出は、北米向けの堅調、アジア向けの回復が予測され、2年連続増が期待される」とした。
 機種別出荷額(16年度)は、構成比で4割弱を占める油圧ショベルの国内は前年度予測の4.5%増の2537億円、輸出は同8.0%増の5988億円、合計は6.9%増の8525億円としている。2月時点の15年度予測に対し、0.7%増の微増にある。
 伸びが著しいのは、トンネル機械。特に国内は同38.3%増の83億円、輸出は18.2%増の110億円、合計で同26.1%増の193億円と見ている。リニア中央新幹線が見込まれる。その他の道路機械、コンクリート機械、基礎機械などは前年度並み。
 うち金額の大きいトラクタ(14%)の国内は、同6.6%減の1099億円、海外が1.0%減の1974億円、計3.1%減の3073億円と予測され、ミニショベル(13%)の国内は、7.2%増の968億円、海外は同3.5%増の1801億円の計0.5%減の2769億円。

ビッグプロ目白押し
 明るい背景は、ビッグプロジェクトとスクラップ&ビルド需要。ビッグプロは、オリンピック、パラリンピック特需やリニア中央新幹線が目玉。オリンピックは、メイン会場のデザイン問題で足踏みをしたが、2018年に掛けて工事は進められ、関連する首都圏のインフラ整備に連動し、急ピッチで進められる。
 リニア中央新幹線は、全ルート約500km、うちトンネルが約60%を占め、東京圏、名古屋圏、大阪圏の約100km区間は大深度地下工事になる。全体の建設コストは約7兆7000億円から9兆2000億円にのぼると言うから巨大。
 また、日本建設業連合会の「建設業の長期ビジョン」によると、ベースプロジェクトが幾つも計画され、国土強靭化基本計画(住宅・構造物の耐震化など)はじめ鉄道、都心開発、オリンピック関連など試算している。
 例えば、海外からの観光客の急増に対応し羽田空港アクセス新線、都心直結線(成田―都心―羽田)、整備新幹線3線(北海道、北陸、九州)の延伸、羽田空港の第5(E)滑走路の増設など。これに対し、国土交通省の首都圏空港機能強化技術検討小委員会は、「2020年代前半には国際線関連施設の混雑が予測され、新滑走路は出来るだけ早期の着工が望ましい」と提言している。

見渡せば建設ラッシュ
 日本各地で大小の建設需要が起きている。大阪北部の吹田市でも街のあちこちで、ショベルやブルドーザーが稼働し、土を運びトラックが列をなし、建設用クレーンが構造物を運ぶのに忙しい。
 日本初のニュータウンとして1962年に建てられた大阪・千里ニュータウンは、多くの団地が建て替えられ、南千里の吹田市市営住宅の建て替え現場はショベルが稼働し、整地を急いでいる。いずれもスクラップ&ビルドの好例。
 吹田操車場跡地は、まさにこれから造成・整地が行われようとしている。吹田市と摂津市にまたがる約49.6haの広大な土地には、梅田の貨物駅がここに移転し、「健都」の名称が付けられた地域には国立循環器病緩急センター、吹田市民病院の移転、駅前商業施設、住宅エリアが集積する。その基盤づくりが始まろうとしている。
 日本は再びビッグプロと新しい建設需要の“都市型建設需要による街づくりが行われている。

日本産機新聞 平成27年(2015年)9月25日号

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