2024年4月24日(水)

【特集】メーカーインタビュー ~切削工具~

「今年取り組む3つのこと」

新型コロナウイルスは変異種のデルタ株が流行し、再び感染者数が全国的に広がっているが、メーカー各社はすでにコロナ収束後の世界を見据えた取り組みを始めている。それは自動車産業におけるEV化や5Gなど半導体産業の隆盛といった外部環境だけでなく、10年後に経営や技術面で牽引する若者を視野に入れた取り組みで、働き方や営業活動など抜本的改革を進めている。各社のトップは共通して『危機感』を募らせている。それは従来方法では通用しない未来が来ることを予見しているのかもしれない。

目次

PART01:イスカルジャパン 岡田 一成社長
PART02:イワタツール 岩田 昌尚社長
PART03:オーエスジー 大沢 伸朗社長
PART04:サンドビック 髙宮 真一カンパニーバイスプレジデント
PART05:タンガロイ 木下 聡社長
PART06:日本特殊陶業 太田 雅和カンパニープレジデント
PART07:三菱マテリアル 金子 善昭 営業本部長
PART08:BIG DAISHOWA Japan 西野 秀哉社長
PART09:日研工作所 長濱 明治社長
PART10:ユキワ精工 酒巻  弘和社長

PART01

イスカルジャパン 岡田 一成社長

工具+αの付加価値提供

限りなくイノベーティブな工具開発を追求するイスカルのDNAは不変だ。そうした製品に加え、+αの付加価値の提供を追求する。

なぜ+αが必要かというと、様々な技術が進化し、メーカー立場の「戦略」だけでは、差別化できる領域が少なくなっているからだ。流通やユーザーに近い「川下」での競争力強化が重要になる。今や新製品を開発、供給するだけでは、付加価値の提供にならず、「生産性アップ」を最終目標とした多種多様な提案をしなければならない。こうした考え方やその手法が、イスカルの新コンセプト「テクノロジック」だ。

付加価値は技術的な部分だけではない。製品の安定供給、顧客にとって有用な各種情報提供など、メーカーが提供するサービス全般において+αの価値を追求することで、顧客満足を得たい。

デジタルソリューションの強化

デジタルソリューションは、「付加価値」提案のため、顧客との接点を増やす手段だ。情報集約アプリ「イスカルワールド」では、工具選定プログラム「NEO ITA」をはじめ、現場をサポートする20種のコンテンツを搭載。また、工具管理ツール「MATRIX」は、発注の自動化をはじめ、デジタルな在庫管理を可能とする。

代理店向けのウェブ発注システム「LOGIQ-eCOMM」の導入を進め、販売ネットワークでの業務効率化を進めている。これも流通のパートナーへの付加価値提供だ。SNSを通じ、動画などを使った分かりやすいメーカー発信の情報を拡散する。

顧客からみたデジタルの価値の一つはメーカーの最新情報を効率的に入手できること。メーカーとしても顧客との接点を増やせるのだから、デジタル強化は不可欠だ。

安全地帯からの脱却を

3つ目は取り組みというより考え方に近いが、「混沌、安全地帯からの脱却」、「ニューノーマルの創造」が必要だ。今や機械加工部品の競争に国境はない。イスカルがグローバルで得た情報、知見をお客様と共有することで、日本の機械加工の競争力アップに貢献したい。製造現場には生産性向上の余地が多くある。革新的な刃具と「テクノロジック」な提案で大幅な加工効率アップを実現したい。

イスカルの刃具製品開発は常に常識を塗り替えてきた。最新のロジック工具シリーズも加工現場での常識を多く変えるだろう。例えば、最新の突切工具「ロジックFグリップ」は従来工具比4倍の送りを可能にする。こうした高い生産性により、現状脱却、ニューノーマルの創造を提案する。

PART02

イワタツール 岩田 昌尚社長

単機能に特化したエンドミル

前期からのコロナ禍で工程の見直しなど生産体制や品質管理を強化し、生産性が15%向上した。今期は市場回復も期待しており、センタードリルのSPセンターZEROや新製品を投入していく。

従来のエンドミルでは溝加工、側面加工、穴加工など複数の加工機能を持つが、当社は単機能に特化し、従来の1・5倍~2倍の加工スピードで生産性向上につながる新しいエンドミルを複数種類開発し、メカトロテックジャパンで披露する。剛性の低いロボット切削の経験を活かし、切削抵抗の少ない特殊な形状を開発した。ターゲットは従来40番機械で加工していたワークを30番でも可能にし、さらに、ワークの一部で高精度加工が要求されるものなど、ワンランク上の加工を求めるユーザーに訴求する。また、複数種類を同時に披露することで業界にインパクトを残せる。加えて、当社が総輸入元であるtte社(伊)のエンドミルも併せて見てもらえる機会にしたい。

2次元バーコードを活用

また、数年前より始めた工具パッケージに2次元バーコードを記載し、工具情報(仕様や推奨の加工条件など)が読み取れる。これを全ラインアップに展開した。現在は当社HPの製品ページにアクセスされるが、今後は専用ページの開発に力を入れ、3次元データ取得やCAMの連携で干渉チェックができるなど、新たな価値を提供したい。バーコードのシステムは関連会社のツールディスカバリーが担っており、無償提供も視野に入れ、様々なメーカーとの連携も模索している。

販売店の技術レベル強化

昨今、ユーザーの若手技術者の動向を注視していると、技術情報の収集や購買がネットに移行され始めている。彼らがいずれキーマンとなり、ネットで完結する慣習になれば、当社にとっても、工具商社にとっても大きな課題となりえる。そういった意味で将来的な危機感があり、工具商社がさらに技術レベルを上げ、ユーザーの加工相談に乗れるようにしなければならない。当社としても、販売店の技術レベル向上に向け、今まで以上に技術セミナーなど支援する。さらに、営業支援の形で製品情報やWeb会議システムを搭載したタブレット端末の活用も進める。当社はイノベーションを起こす工具開発に力を入れている。そうしたメーカーには、販売店に工具のスペシャリストが増えれば、ユーザーの加工に関する相談窓口となり、当社工具を推奨してもらえる機会も増える。今後も販売店のレベル向上に貢献したい。

PART03

オーエスジー 大沢 伸朗社長

タップシェア40%へ

第2四半期のタップ売上は、過去最高となった。当社の試算では、世界シェア34%にアップした。自動車産業が停滞している中でタップの売上が伸びたということは、自動車関連以外の産業でもニーズがしっかりと存在するということ。傘下のBASS社は、ドイツ3位のタップメーカーだが、建機や造船、風力発電など多岐にわたっている。

つまり、自動車のEV化は必ずしもネガティブ要素ではなく、自動車以外のタップの市場の裾野は広い。我々が見えていないだけ。タップは当社の創業製品であり、一番の強みの製品。タップの世界シェアに拘り、40%に向けて取り組んでいく。これはAブランドの一層の強化にも繋がる。タップを伸ばせば、下穴を開けるドリル関係も強化することになる。

ジョブコーティングに参入

 タップやドリルの世界シェアが上がれば、コーティングサービスも重要になる。Aブランド製品を中心に表面処理を施した製品が増え、結果としてコーティング需要が増加する。超硬工具メーカーは無数と言っていいくらいある上、他の工具や金型部品など表面処理を必要とするジョブコーティング市場は非常に大きい。自社でコーティングの炉を設計開発するパフォームコートグループを傘下に収めており、自社製の炉を活用して優位性のあるコーティングと製品の開発に注力していく。また、4か月ほど前からベトナムで金型部品などのコーティング受託を始めたが、順調に受注は拡大しており、高い技術とリーズナブルな価格でジョブコーティングを世界的に順次拡大していきたい。

小径工具にも注力

超硬小径エンドミル・ドリルにも注力する。最近投入した新製品「ADOマイクロドリル」は非常に好評で、NEO新城工場の小径ラインを強化しているところ。今後、IT部品・医療部品や金型などの小型化・軽量化が増えるだろう。素材の変化もある。微細加工・高硬度加工・難削材加工が増えることは間違いないと見ている。幸い日本には強力なメーカーが揃っていて厳しい市場。そんな日本市場で鍛えられれば、世界で戦う実力を磨くことができる。世界という市場で見た時、当社は世界各地に自前の営業組織を持っている。これは圧倒的な強みであり、海外展開しているユーザー様にとって心強いサプライヤーになれると思う。

足元は、半導体不足などで自動車生産は調整段階だが、中期的には回復すると見ており、世界的な全体最適を図りながら事業展開していく。

PART04

サンドビック 髙宮 真一カンパニーバイスプレジデント

デジタル強化へ一直線

今期は「デジタル元年」と捉え、様々なアプリケーションやサービスを日本市場に投入し、スピード感を持って認知を図る。今年6月、機械や工具の稼働率、機械の停止原因やアラーム情報をリアルタイムで可視化する「CoroPlusマシニングインサイト」を発売した。設備の見える化は顧客ニーズも高く、データ化することで課題の顕在化になる。

そうなれば、当社推奨のPIP(生産性向上プログラム)など顧客と一緒に改善でき、そこから工具販売につなげたい。

また、販促活動では当社工場とつなぎ、実際にデータを見て、その効果を体感してもらうことも可能だ。オプションも用意し、詳細なデータ取得を希望するユーザーにも対応できる。

デジタルツールの発表は今後も続く。現在はマシニングインサイト、プロセスコントロール(加工中の状態監視)、ツールサプライ(在庫管理の適正化)に加え、Ifind(多数のアプリや工具・加工情報を集約)、テーラーメイドウェブ(ウェブ上で特注品を発注)といったデジタルセルフサービスを用意した。ユーザーもデジタル提案には関心を持っており、今期後半は積極的に取り組む。

販売店へのトレーニング強化を実施

これだけデジタルツールが多様化すれば、ユーザー、代理店、販売店のトレーニング強化は必須。コロナ禍もあり、教育の形式を増やす必要があり、対面式、常時閲覧可能なオンデマンド形式、オンライン形式を設け、販売店に展開している。教育コースも初級と中級に、デジタルコースを追加し、月1回のウェビナーも昨年から15回ほど開催するなど、デジタル活用で教育できなかった領域まで幅広く展開している。

また、被削材や工具選定、推奨加工条件などが選定できるCoroPlusツールガイドなど、販売店が活用するとメーカー営業に近づけるようなデジタルツールの活用方法も周知させたい。

営業サポート体制を刷新

従来の支店分割から代理店や販売店、ユーザーへ営業を展開するアカウントマネージャーと技術を主とするアプリケーションスペシャリストを創設した。役割分担し、代理店ルートの幅広い市場と、自動車や航空機(エネルギー関連も)の専任とを分け、ユーザーに合わせた活動を重視する。そうすると、ニーズの変化や営業活動での迅速対応が可能になる。成功事例も増えており、注力している自動車市場も販売が増えた。これを継続し、アルミ加工やソリッドツールなどフォーカス製品の拡販に努めていく。

PART05

タンガロイ 木下 聡社長

新ブランドキャンペーン

4月に発表した新ブランド「ADDFORCE」キャンペーンを実施する。新製品が30以上あるので、10月からと1月から、2回に分けて、プロモーションを行う予定だ。生産性の向上が可能な新しい製品をいち早く、お客様に届けるとともに、市場に浸透させていきたい。

ADDFORCEキャンペーンでは、高生産性を実現するというコンセプトのもと、加工のトレンドを反映させた製品を拡充した。近年増加している小型旋盤向けの工具や、刃先交換式のドリル・エンドミルやインサートなどのインデクサブル工具を増やしているが特長だ。

小型化と二酸化炭素削減への対応

近年あらゆる部品が精密、小型化しているので、小型・低切込みの工具も強化する。φ6㎜以下の刃先交換式のドリルや、低切込み高送り工具でも超小型のインデクサブル工具を増やす。

こうした工具を増やすのは、製造業ではこれから避けて通れなくなる、二酸化炭素削減への効果が比較的高いためだ。まず製造プロセスにおいては、インサートはソリッド工具に比べ、効率的に生産できるので、二酸化炭素の排出が少なくて済む。小径や小型となればなおさらだ。また、超硬工具のリサイクルは、電力使用量が大きいので、インデクサブル工具のほうが効果的な面もある。

もちろん、高い生産性を実現することが最も電力使用量を減らせるので、それはADDFORCEを通じ、しっかり提案していく。

情報伝達速度と質の向上

SNSでつながって情報を発信する時代。それへの対応は欠かせないし、今後より重要になる。情報発信はLINEだったり、ツイッターだったり、ファイスブックだったり、様々なツールを駆使していく。中でも、ユーチューブによる動画発信を強化する。

コロナ禍で営業や情報伝達が難しいこともあって、ユーチューブのチャンネル登録者数は1・6万人を超えた。それだけ動画を求める人が多いということ。用途に合わせて必要な動画コンテンツを増やす。

また、情報の内容や質も重要だ。その一つとして、タンガロイの社内で共有していた加工の成功事例を整理して近く公開する。カテゴリーごとに事例をまとめ、販売店の営業担当者が、顧客に最適な工具を提案する際に参考にしてもらいやすいようにする。

情報伝達で重要なのは、タンガロイが持つ膨大な情報を必要な人に適切な方法で届けること。あらゆるツールを駆使してその仕組みを強化したい。

PART06

日本特殊陶業 太田 雅和カンパニープレジデント

カンパニー制がスタート 組織の基盤強化へ

今年4月、社内カンパニー制に移行し、従来の機械工具事業部はマシニングテクノロジーカンパニーとして、営業、技術、企画、品質管理を担い、製造は関連会社のNTKカッティングツールズが行う。自動車産業やコロナ禍など外部環境が大きく変化することを踏まえ、独立採算で早い意思決定を図ることが狙いだ。経営陣だけでなく、全社員が危機感を持ち、「変わろう」という意識で改革を進めている。

カンパニー制で最初に取り組むのは基盤強化だ。製造は自動化・省人化など合理化を図り、営業はWEBを活用した新たな営業スタイルを組み合わせて、生産性を高める。

当社の強みはセラミック工具や自動旋盤向けSSツールなどを中心とした製品を顧客密着型で営業展開してきたことだが、コロナ禍では対面営業が難しい。そこで、ウェビナーやリモートの立ち会いテストといった従来の方法と異なる取り組みで効率性も高まっている。今後もニーズに合わせた柔軟な対応ができる体制を整えていきたい。

また、営業プロセスの可視化・標準化を目指している。属人性の高い営業活動を標準化し、役割分担を明確化することで、インサイドセールスの強化を行い、顧客満足度の向上を図っていく。

ユーザーに新価値を提供

力を入れているのが新材種の開発。従来、超硬工具を使っている鋼の荒加工をカーバイドとセラミックを併せた複合材の新材種「バイデミックス」で切削速度1000m/分で削る挑戦を行っている。実現できれば、ユーザーにこれまでにない生産性向上や環境性など新しい価値を提供できる。同じく、耐熱合金用JX1は航空機市場向けで従来の倍以上の加工効率と長寿命で大変好評だ。こうした新材種から未知の領域を切り拓きたい。

さらに、昨年スタートした小型自動旋盤向けホルダのサブスクリプションサービス「SUISUI SWISS」も随時サービス拡充や刷新を行い、コトビジネスとして新たな価値を創出する。

多様な働き方を推奨

今後、コロナ前の世界に戻ることはないだろう。コロナ禍は大きな転機。テレワークは一時的な対処法ではなく、新たな働き方として、また、男性の育児休暇など多様な働き方を推奨する組織を作っていく。

そのためには人事評価制度の抜本的な見直しが重要だ。個人の挑戦を促し、失敗で評価を下げるのではなく、挑戦を評価する。こうした改革を進め、誰もが「この会社で働いて幸せ」と思える会社を作りたい。

PART07

三菱マテリアル 金子 善昭 営業本部長

供給体制の強化

2020年度の売上高は、19年度から続く米中貿易摩擦の影響に加え、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気後退によって落ち込んだ。特に航空宇宙産業向けや国内向けの需要減少が目立った。

一方で、昨年下期からは自動車の需要回復や中国市場の好況などを背景に急激に回復が進んだ。インサートでは、ここ数年は18年下期をピークに受注が減少していたが、20年下期からは受注が生産を上回るほど回復している。

今年度はこうした需要の回復に対応するために設備や人員の見直しを図り、供給体制の強化に取り組む。具体的には、インサートを製造する筑波製作所(茨城県常総市)で検査工程など生産ラインの自動化や人的補充などを行っていく。

デジタル活用の推進

デジタル化を進め、経営スピードの向上と顧客接点の強化に取り組む。経営スピードの向上では、人に依存していたリアルタイムデータをデジタル化し、迅速な意思決定と実行につなげる。

顧客接点の強化では、昨年オンライン上で開催した「DIAEDGE WEB展示会」の他、リモートでの切削試験サービスや加工データ分析などソリューションビジネスの展開を進め、より顧客価値を高めていく。昨年からは「切削加工モニタリングシステム(MICS)」の提供を開始した。既存の設備で切削加工データの収集、分析を行うことができ、工具寿命の予測や加工条件の最適化などにつなげられる。

こうしたデジタルを活用したソリューションビジネスを提供することで、ユーザーの困りごとを解決していきたい。

高効率工具の開発

 ユーザーの労働生産性を高める高効率工具の開発に取り組む。昨年は鋼旋削加工用インサート材種「MC6100シリーズ」を発売したが、今年は鋳鉄旋削加工用インサート材種のリリースを予定している。その他、鋳鉄加工用カッタ「WSF406W」、高硬度鋼加工用インサート材種「BC8200シリーズ」、汎用ソリッドドリル「DVAS」、自動旋盤用ソリッドドリル「DWAE」なども発売した。

また、「高効率」は工具の性能だけでなく、生産についても言える。これまで以上にコストを意識した製造技術の確立や工具設計などに取り組み、より生産効率の高い工具を開発していく。当社がこうした工具づくりを実現できれば、リードタイムや納期の短縮、安定供給につながり、機械工具商の方々のビジネスにも大きく貢献できると考えている。

PART08

BIG DAISHOWA Japan 西野 秀哉社長

小物部品用を拡充

電子部品や光学関連など精密小物部品の加工が増える中、超高精度で難しい加工に対応する製品を拡充する。

まず、高速微細加工機用ツーリング。最高6万回転まで対応するメガマイクロチャックやハイドロチャック、最高9万回転まで対応する焼きばめチャック、12万回転まで対応するエアタービンスピンドル等があったが、HSK‐E25/E32/E40のサイズをさらに充実させた。特にハイドロチャックUPは精度を極め、4D先端で1μm以下という驚異の振れ精度を実現している。

CNC自動旋盤用にハイドロチャックレースタイプもラインナップを拡充し、今年5月に投入した。「機械内での工具の脱着がしにくい」というユーザーの要望に応えた「Fタイプ」と「Rタイプ」がそれだ。「Fタイプ」は、刃具と反対の方向からレンチ一本で締め付けでき、正面側での使用に最適。「Rタイプ」は、隣接工具やクーラント配管を回避してレンチ一本で刃具の脱着ができる。いずれも繰り返し脱着精度が4D先端で±1μm以下と極めて安定した再現性を実現している。

見える化・自動化提案

製造情報管理ソフトウェア「ファクトリーマネージャー」は、工作機械やツールプリセッタと連携、ICコードを使った工具管理など、現場の要望や必要性に応じて様々なソリューションを提供する。段取りの効率化・ミス防止・機械の稼働状況管理など、生産性向上・安定加工の実現に威力を発揮する。初心者でもボタンを押すだけで熟練作業者と同等の生産性を実現する。新発売の工具収納棚「ツールセラー ジェネシス」との連携で、工具の払い出しや補充ミスを防止し、工具ごとの寿命管理も継続的に行える。今秋には、機上で動的精度を計測し、振れをゼロにセットできる「ダイナゼロシステム」も発表予定だ。

ショールームで体感

コロナ禍によってリアル展示会が無くなり、活動が制限された。そんな中、東京本社を東京都豊島区に移転し、ショールームも拡大した。昨年10月には大阪本社が東大阪市西石切町に竣工し、ショールームを開設した。全拠点にショールームを用意しており、ご来場をお待ちしている。動画配信による製品紹介をご覧頂くと共に、やはり実物を見て触ることで製品の特長・実力を体感して頂ける。是非ショールームも活用して頂きたい。多品種少量生産・少品種多量生産における高精度加工・生産性向上など、加工に関する課題解決をフルサポートする。

PART09

日研工作所 長濱 明治社長

自動化をバックアップ

「深化」と「進化」を今年度のスローガンとし、二刀流の技術開発に取り組んでいる。

「深化」とは、隠れたユーザーニーズを掘り起こし、既存の製品や技術をベストマッチングさせることで、一歩踏み込んだ提案をすること。

今、世界は大きな環境変化の中にいる。パンデミック、カーボンニュートラル、米国と中国の覇権争い、そして人口減少。この中で、特に日本は、熟練技術者の減少や人手不足に対応するために、自動化・省力化が大きな波となっている。そこで、人手不足に喘ぐ製造業の自動化をバックアップする。例えば切粉処理。日研コレットチャックは、切削工具のオイルホールを使う一般的なタイプと、工具のサイドからクーラントを噴射する当社独自のジェットタイプの両方を用意している。どんな自動化も切粉を確実に処理することで初めて可能となる。プルスタッドの引込力を測定する装置も用意した。機械の引込力を維持することが安定した切削加工に必要だからだ。独自の防錆・防蝕処理を施したホルダは、劣化を抑え長寿命。防塵・防水性能を大幅に高めたデジタルボーリングバー「eMAC‐P」は、新人でも簡単に熟練者と同等の加工ができる。当社はツーリング、円テーブル、切削工具という工作機械周辺の3製品を有しており、3方向から加工を止めない提案を行う。

ツールホルダのテーパー部のクリーニングを行うツールクリニックも、ホルダの精度管理からスタートし、今後は使い捨てを無くす、SDGsにつながる展開を模索する。

1ランク上の製品開発

「進化」は、超高速・超高精度・超高トルクなど従来よりも1ランク上の製品開発だ。一昨年にオープンしたテクニカルセンターでは、各種工作機械を導入し、切削加工における様々なデータを収集。機械・ホルダ・切削工具をシステムとして捉え、そのビッグデータを分析することで、新たな発見があり、それが、新製品開発に繋がる。超高圧クーラントに対応するボーリングヘッドや、超高速割り出し、超高精度を実現する円テーブルは今秋、名古屋で開催されるメカトロテックジャパンで披露する予定だ。

生産の効率化・量確保

お客様の生産を止めないためには、安定した生産量を維持する必要がある。当社も人手不足の例外ではない。工程集約はもちろん、あえて工程分割も併用しながら、生産現場の自動化を進める。

足元の需要は回復してきているが、「深化」と「進化」の二刀流でお客様に貢献する。

PART10

ユキワ精工 酒巻  弘和社長

ツールホルダの拡販

当社は大きくドリルチャック、円テーブル、ツールホルダの3製品を事業の柱としている。その中でもツールホルダは、発売から30年以上経っているが、まだまだ認知度が高くない。

当社の製品は、「スーパーG1チャック」や「ニュードリルミルチャック」など、コレットチャックを採用したチャッキング方式が特長だ。使ってもらえれば、「工具寿命が伸びた」「加工面品位が向上した」など多くのユーザーから良い評価をもらえるのだが、なかなか売上が伸びていない。

そこでこれまで以上に周知を徹底し、拡販に注力したい。具体的には、これまでの導入事例を横展開し、様々なユーザーに広げていく。また、拡販には機械工具商社の方々の協力が欠かせない。研修会などを行い、製品の特長や良さをPRしていきたいと考えている。

現状、ツールホルダが全体の売上に占める割合は高くない。今後拡販を進め、この比率を上げていきたい。

工場内の5S活動

生産性を向上させるために5S活動に注力したい。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大による景気低迷の影響を受けて、当社も生産を抑えていた。空いた時間を利用し、5Sグループを作って生産設備や現場内を徹底的に綺麗にした。職場を綺麗にすることで、従業員のモチベーションが向上するなどの効果がみられた。昨年は特定の部門だけだったので、今年は他部門にも展開していく。

また、当社がある新潟県小千谷市では市内の企業同士で工場見学を行っている。互いの工場を見せ合うことで、自社には無い良さや改善点を見つけることができる。昨年は新型コロナウイルスの影響で実施できなかったが、今年は感染対策を行いながら限定的に再開していきたいと考えている。

現場の技能レベルアップ

技術の高いものをつくることができれば、今後も必要とされる企業になれると考えている。そのためには技能者の育成が欠かせない。現場の技能水準の向上は以前から取り組んできたことだが、今後も継続して注力する。

技能検定の取得はその一つだ。当社では現在、のべ15人が一級、のべ50人以上が二級を取得している。小千谷市では10年以上前から「テクノ小千谷名匠塾」という取り組みを進め、国家技能士の育成を支援している。当社もこうしたものを利用しながら、従業員の技能レベルの底上げに取り組んでいきたい。

当社の強みは、「誇れる製品」「誇れる工場」「誇れる人財」。今後もこの3つを磨いていく。

日本産機新聞 2021年8月20日

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