2024年12月11日(水)

特集:販売店のWEB活用 〜新たな営業手段の確立〜

 新型コロナウイルスの影響は長引いており、今なお対面での商談や、人が大勢集まる展示会などを行うのは難しい状況が続いている。しかしそんな状況であっても、新製品発表の場や商談の場を望む声、製造現場の課題がなくなることは無い。そういった声に応えるべく、機械工具業界でもWEB上で行う展示会やアプリを使った課題解決など、様々なツールが新たに生まれ始めている。未だ収束が見えないコロナ禍の中では、これらのツールを使いこなすことが重要になるだろう。

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ウェブ活用した展示会 〜WEB展示会、セミナー〜

ユアサ商事の「YUASA Growing フェア」

 新型コロナウイルスの影響で、社会が大きく変化する中、人々には新しい暮らしや働き方などが求められている。展示会もその一つ。大型展示会や機械工具メーカー・商社は、ウェブを活用し、時代に適応した新しい形の展示会を開催している。国内最大の工作機械見本市「JIMTOF(日本国際工作機械見本市)」は11月16日から27日までの12日間、史上初めてオンラインで開催された。特設サイト「JIMTOF2020 Online」を開設し、工作機械や周辺機器、工具メーカー各社によって最新の製品や技術が披露された。

上手く活用し、新たな商機に

三菱マテリアルのWEB展示会

 「JIMTOF2020 Online」は、会期中はチャット機能なども備え、出展者と商談や技術相談などがリアルタイムで行えたほか、オンラインセミナーなども開催し、よりリアル展に近い形で開かれた。会期は終了したが、12月11日まではアーカイブ期間として出展者のブースページを閲覧することが可能。

 機械工具メーカー自体も独自の特設サイトを立ち上げ、オンラインを活用した製品や技術のPRに力を入れる。切削工具メーカーの三菱マテリアル(東京都千代田区)は、「JIMTOF」と同時期に、ウェブ上で「DIAEDGE WEB展示会2020」を開催。新製品のほか、CAEを使った加工診断など同社が提供するソリューションなどを紹介した。また、研削盤や測定装置などを手掛ける黒田精工(川崎市幸区)は、12月1日から加工と計測の課題解決サイト「KURODA Smart Solution」を開設。平面研削や丸モノワークのクランプなど現場の課題を解決する新製品や新機能の情報を掲載する。

 一方、オンラインだけでなく、リアル展と組み合わせた新しい形の展示会も開かれている。ユアサ商事(東京都千代田区)は11月13、14日の2日間、幕張メッセ(千葉市美浜区)で、リアル展示とVR(バーチャルリアリティ)展示を合わせた「YUASA Growing フェア」を開催。リアル展示でAIやIoTの活用事例や関連商材などを展示する一方、VR展示では会場のパソコン上に「仮想展示場」を設け、機械工具メーカー各社の製品情報が閲覧できるようにした。12月11、12日には、インテックス大阪(大阪市住之江区)で同様の展示会の開催を予定している。

 こうしたウェブを活用した展示会を閲覧した機械工具販売店は、「“コロナ禍”で情報収集が難しい中、新しい情報が得られて良かった」と話す。一方で、別の販売店は「緒に就いたばかりで、見る側も見られる側もどう活用すべきか考える必要がある」と指摘する。機械工具販売店は今後、こうした新しい形の展示会を上手く活用しながら、ビジネスチャンスを見つけていきたい。

非対面でも手厚いサポート 〜アプリ・コミュニケーションツール〜

フェイスフォン(トラスコ中山)

 機械工具販売店と商社が、テレビ会議システムを活用して簡単に打ち合わせができるコミュニケーションサービスを開始したり、工具の選定や加工条件の算出などをしてくれるアプリなどが登場したりしている。オンラインでのサービスは対面の必要がなく、アプリであれば必要な時にすぐに活用することができる。長引くコロナ禍で、オンラインサービスをいかに使いこなすかが重要なポイントとなりそうだ。

いかに使いこなせるか

 トラスコ中山の「TRUSCOいつでもつながるフェイスフォン」は、同社の営業担当者と販売店がオンライン上で簡単にテレビ会議ができるサービス。同社が昨年末に始めた、チャットや配送確認ができるアプリ「T‐Rate(トレイト)」と、ZoomやSkypeなどのオンラインテレビ会議システムを組み合わせたもの。パソコンやスマートフォンにダウンロードし、予め商談や打合せ日時を設定しておけば、トラスコ中山から案内のメールが届き、そこにアクセスするとオンラインでの面談が可能。対面せず打ち合わせが円滑にできる。これにより、営業担当者の移動時間を減らし、打ち合わせや勉強会などの業務に割ける時間をより増やす考えだ。

 自社のオリジナルアプリやソフトを提供することで、タイムラグなくユーザーをサポートする企業も増えてきている。

 イスカルジャパンがリリースしたスマートフォン用の情報集約アプリ「イスカルワールド」は、「工具選定」や「チップ摩耗改善」など、20種以上の機能を備えている。製品そのものの性能による生産性の向上だけでなく、工具の選定や加工条件の算出などまですることで、加工周辺にかかる手間を削減し、ユーザーを支援する。

 オーエスジーは、スレッドミル用ねじ切り加工プログラム作成ソフト「ThredPro(スレッドプロ)」を配信。パソコンの無い外出先でも、スマートフォンやタブレットPCで利用できるようにした。また、用途に合わせて複数のアプリを配信しているケースもある。サンドビックは、最適な加工条件設定を計算する加工計算アプリ「MachiningCalculators(マシニングカリキュレーターズ)」と、同社が提供するデジタルツール各種に素早くアクセスできるアプリ「Ifind(アイファインド)」を配信している。

 これらのツールは、対面のための移動時間の削減や、ユーザーが自らで課題解決を図るための支援をするもの。使いこなすことで、たとえ非対面であってもユーザーに手厚くサポートをすることができる。いかにツールを活用できるかが、コロナ禍を勝ち抜く重要なポイントとなる。

 

日本産機新聞 2020年12月20日

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