2024年12月11日(水)

JIMTOF2016総集編
Iotは次のステージへ

 「IoT(モノのインターネット化)」が主役となった今回のJIMTOF2016。あらゆるものがつながりあう、IoT時代の未来のものづくりを感じさせた一方で、金属3Dプリンタを中心とするAM(付加製造)技術、自動化や効率化、加工しづらい新素材向けの加工技術なども進化した。自動化では、協調ロボットの活用が始まり、3Dプリンタもレーザー技術が多様化し、実用レベルの提案が増加。航空機や自動車業界で、多様な素材を活用する「マルチマテリアル化」も進んでいることから、切削を中心に新素材向けの工具や加工提案も目立った。本特集では「IoT」「3Dプリンタを中心としたAM技術」「自動化・効率化」「難削・新素材加工」をキーワードにJIMTOF2016を振り返る。

IoT

見える化で課題解決

情報収集から分析へ

ファナックが提唱したIoTプラットフォーム
ファナックが提唱したIoTプラットフォーム
 今回のJIMTOF最大のテーマとなった「IoT(モノのインターネット化)」。カメラやセンサなどを使い、機械や機器、工具、検査装置に至るまであらゆる機器を「つなぐ」提案がなされた。さらに、そこで得られたデータを「見える化」し、予防保全や稼働管理に生かす展示が多かった。今後は保全などにとどまらず、得たデータをどう生かすか。データ分析とそのアプリ開発が進んでいきそうだ。

 ファナックが提唱したのはプラットフォーム「FIELDsystem」。80社250台(ファナックのCNC装置以外も含む)と接続し、稼働状況をファナックと各社のブース双方で見ることができるようにした。

 ヤマザキマザックはシスコシステムズと共同開発したネットワーク機器「MAZAKSMARTBOX」を紹介した。JIMTOFでは展示機と本社工場をつなぎ、稼働状況を見える化。来春には分析アプリケーションも発売し、工具使用頻度などをデータ収集し、改善につなげる。

 ジェイテクトは独自開発したPLC「TOYOPUC–Plus」で工場内の設備をつなぐ。さらに、解析モジュールを活用し、見つけにくい研削加工での研削焼けを解析する。現場で正常データと異常を識別し、検知することで迅速な対応を可能にした。

 オークマも出展機と本社展示場をネットワークでつなぎ、稼働状況を見える化。稼働状況や測定したデータ、全ワークの主軸負荷を蓄積し、不具合の原因調査や分析に活用する。

 DMG森精機はセンサを搭載した工作機械をネットワークにつなぐことで、稼働監視や予知保全などの実例を紹介。

 測定でもIoT化は進む。ミツトヨは測定データを管理するソフトを展示。ミツトヨの測定機からデータを集め、管理、分析に活用する。カールツァイスの測定データ管理システムは、グローバルで全ての測定機器のデータをリアルタイムで一括管理できる。

 マーポスは、機器ごと別々のコンピュータやケーブルを使っていたのを、一つの制御機器に集約できるようにした。

 サンドビックはコロプラス・プラットフォームを紹介。切削工具の国際規格ISO13399に基づくツールライブラリの「アドヴェオン」や、切削速度などの情報を提供する「ツールガイドプラス」など様々なソリューションを展示した。

 三菱マテリアルもISO13399に準拠した3次元切削工具データの活用を紹介。「マシニングクラウド」というアプリに工具情報を載せて、工具選定を簡素化できるなど、工具のIoTも進んでいる。

 IoT一色のJIMTOFだったが、現状は稼働管理や予防保全に留まっているところが多い。新旧の設備をどうつなげるか、セキュリティ上の不安などもあるが、「つなぐ」という意味で、インフラとしてのIoTは整いつつある。今後は、収集したビッグデータをAI(人工知能)など使い、どのような問題をどう解決していくのか。アプリケーションの開発やデータ分析が進んでいきそうだ。
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AM技術

3Dプリンタ用途拡大

積層と切削の複合化進む

AMと切削の複合加工機
AMと切削の複合加工機
 前回のJIMTOFで注目を集めた3Dプリンタに代表されるAM(付加製造)技術。レーザー積層技術の多様化や、切削などを組み合わせたハイブリッド機が多く展示されるなど大きく進化した。金型や自動車保守備品などターゲットを明確にする展示も見られた。

 ヤマザキマザックは複数の金属3Dプリンタを展示。2年前に発表した金属積層造形に加え、マルチレーザー方式とアーク式を追加。金属3Dプリンタとは異なるが、摩擦拡散接合と切削を組み合わせたハイブリッド機も進化させ、高精度、高速など用途に応じて選択できるようにした。

 オークマは切削から研削、レーザーによる金属積層造形、焼き入れまで1台でできるハイブリッド機を披露した。DMG森精機は、従来マシンよりも大型部品への対応を図った。

 三井精機工業も5軸加工機にレーザーによる金属積層造形を付加し、紹介。

 この他、レーザーを活用した金属加工システム(切断以外)が前回展よりも増加。三菱重工工作機械は、金属積層造形装置の他に、短パルスレーザーで微細な穴をあけるくし歯加工や、ヘリカルミーリング加工ができる微細レーザー加工機、レーザーでワイヤを溶かして造形・溶接・切断ができる装置を出展した。

 3Dプリンタ市場も明確になってきている。ソディックは金属3Dプリンタの活用を金型に見出す。今回は金属積層造形した「OPM金型」と成形機をセットで提案、冷却時間の短縮化や面品位の向上など、より具体的な活用方法を提示した。

 松浦機械製作所は旧車パーツも金属3Dプリンタの市場の一つとみる。今回は象徴的なワークとしてエンジンブロックの積層造形を展示。大型化した積層造形と5軸MCによる金属部品の製作時間を短縮した。金型を作り直したりする手間とコストが要らなくなるため、欧州では、実際にこの工法を採用しているという。

 実用には至っていないが、三菱マテリアルが工具の軽量化やクーラント流路の最適化を図るために、3Dプリンタで製造した工具を展示した。

 2年前は「ブーム」だったが、GE社が航空機部品で採用を始めたように、金型や少量部品や補修など様々な分野でAM技術は広がり始めている。変わったものでは、三井精機工業が低電圧・大電流による高効率荒加工を動画で紹介した。
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自動化

ロボット活用本格化

搬送、測定、バリ取り

ロボットを組み合わせた自動化
ロボットを組み合わせた自動化
 今回目立ったのはロボットの活用による自動化提案だ。それを後押しした一つの要素が協働ロボット。機械の周辺に防護柵なくロボットセルがおけるようになったことで、会場のあちこち協働ロボが展示されていた。

 なかでも多かったのがロボットによるワーク搬送。特徴的なのは切削工程でも測定工程でも紹介されたこと。切削では、オークマ、牧野フライス、ヤマザキマザックなどはじめ多くの機械メーカーがロボットによるワーク搬送による自動化を展示。

 DMG森精機ではツールチェンジまでをロボットで行う自動化モジュールを紹介した。

 測定分野では全数検査のニーズが高まっていることから、人の手では難しい全数検査をロボットで代替えする動きがみられた。測定機の高度化も進み、機械のそばに3次元測定機などが設置できるようになったことも、今後測定でのロボット活用も後押ししそうだ。

 もう一つ多かったのが、ロボットによるバリ取りなどの機械加工だ。ジーベックテクノロジーはファナックのロボットで研磨の自動化を提案をしたほか、双和化成や柳瀬など砥石メーカーもインテグレーターと組んでロボットでのバリ取りを紹介。カトウ工機はロボット用のバリ取りユニットを紹介した。シーメンスやジェイテクト、イワタツールなどは、ロボットによる切削加工を紹介した。

 また自動化をするための治工具も充実。北川鉄工所はチャック、円テーブル、ローダを組み合わせた自動化を披露した。ナベヤは、1つの動作で多数個のワークを保持できるマルチオートクランプも実演し、自動化対応を前面に押し出した。MSTコーポレーションも、ワークの自動交換を精密位置決めができるスマートグリップを使ってロボットで実演した。

 研削加工での自動化も進む。岡本工作機械製作所は操作盤がない全自動の平面研削システム「MUJIN」を発表。仕上げ精度と切り込み量を設定してボタンを押すと、自動で送り速度を調整できる。ナガセインテグレックスの適削も、切り込みを設定すると、加工負荷に応じて自動的に送り速度を適応させる。
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切削工具

高まる難削材へのニーズ

底面が平らな工具

 航空宇宙、エネルギー、自動車などあらゆる産業、分野で活用が広がっている耐熱合金や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの難削材。軽量化や耐熱性、強度の向上を図るために、こうした素材へのニーズは高い。今回のJIMTOFでも切削工具メーカー各社は、こうした難削材を加工できる様々な新製品や、対応工具を出品した。

 今年10月に航空宇宙部を新設した三菱マテリアルは、航空宇宙産業向けとして、セラミック製工具を使ったチタン合金加工や、ラジアスカッタ「ARPシリーズ」での耐熱合金加工の実演を披露。また、CFRP加工用のドリルやエンドミルの新製品も出品した。

 セラミック製の工具では、三菱日立ツールや日本特殊陶業もソリッドエンドミルを展示。従来の耐熱合金向け超硬エンドミルに比べ、高速加工が可能となり、加工時間の短縮を提案した。

 そのほかに三菱日立ツールでは、ステンレス鋼やチタン合金などの高速加工に適した新CVDコーティング「AX2040」を発表。長寿命化を実現し、高い生産性を発揮する。

 また、航空機産業に力を入れるオーエスジーは、チタン合金の高能率、高精度加工を実現するエンドミル「UVX‐TI」などを展示した。

 切削工具メーカーでは、こうした難削材加工に対応する動きの一方で、それ以外の材料をより高精度に効率良く加工するという提案も多く見られた。とくに顕著だったのが、底面が平らな「フラットドリル」と呼ばれる工具だ。

 「フラットドリル」は、傾斜面や曲面の穴加工、薄板加工など様々な加工用途に対応できるほか、バリの発生を抑制するため仕上げ工程を減らすことができるなど、利点が多い。この工具で先行しているオーエスジーや不二越に加え、住友電気工業は「フラットマルチドリルMDF型」、ダイジェット工業では刃先交換式の「TAタイラードリルTLZD形」やソリッドタイプの「タイラードリルTLDM形」を展示。三菱マテリアルも新製品を発表した。

 また、加工効率を向上するために、工具だけでなく、加工方法を含めた提案も目立った。イスカルジャパンは「賢い機械加工」として高能率加工工具「IQシリーズ」を展示、タンガロイは「TUNGFORCE(タングフォース)」というブランドのもと「倍速加工」を提案した。また、三菱日立ツールは荒加工から高精度加工を追求する「Hi‐Pre2(ハイプレツー)」を紹介した。

 そのほか、金型など特定分野向けでは、日進工具やユニオンツールなどが、CBN、PCD工具を使った切削加工での鏡面仕上げを提案した。
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日本産機新聞 平成28年(2016年)12月5日号

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