2025年5月4日(日)

タンガロイの挑戦-TUNGFORCEの本質-
若手技術者に聞く③

挑戦に終わりなく

技術本部材料開発部 CVD開発グループ 佐藤 博之氏

 形状の進化もさることながら、切削工具のイノベーションは素材やコーティングなど材料技術による部分も少なくない。1000点超のTUNGFORCEでも、多くの新材種や新たなコーティングが採用されている。3回目のインタビューはCVDコーティングの開発技術者の佐藤博之氏に取り組みや、こだわりを聞いた。

「使える被膜」にこだわる

佐藤博之氏
 2003年タンガロイに入社し、CVD開発に取り組む。09年~12年にイスラエル本社に出向。37歳。
 佐藤氏が開発を担当したのは、鋳鉄の高速加工に特化したCVDコーティング材種「T515」。こだわった一つが「使える加工」だ。鋳鉄は調達先によって材料特性にバラつきが多いため、切削条件を厳しくする必要がある。「ありえないような加工テストや、実加工に近い条件でテストし『使える』加工にこだわった」。

 もちろんTUNGFORCEのコンセプト「倍速加工」も突き詰めた。「鋳鉄は削りやすいから、逆に加工速度を上げるのは難しい。アルミナ層を従来の1・7倍にするなど徹底した倍速を追求した」。もうひとつ気を付けたのはバランスだ。「『倍速加工』=摩耗しないイメージがあるかもしれないが、使い勝手も重要」という。だから「耐摩耗性に加え、耐欠損性を両立させる工具としてのバランスを重視した」。

 これだけこだわった「T515」もすでに次のステージに移る。今回の技術を応用し、ミーリング工具へも採用される予定だという。自身も「新たな開発に挑戦したい」と未来に目を向ける。

 佐藤氏はタンガロイがIMCグループに参画してイスラエル本社に出向した初めての技術者。当初は「外国人技術者の発想の違いに驚いた」。それでも、3年後の帰国前には様々な部署から引き留められていたそう。今後については「製品もCVDも進化し続けている。それに負けないように、エンドレスに新しいことにトライする技術者でいたい」。

日本産機新聞 平成28年(2016年)9月5日号

[ インタビュー ][ メーカー ][ 日本産機新聞 ] カテゴリの関連記事

暑気対策につながる注目6社の製品【特集:広がる、変わる暑気対策】

労働環境の改善を重視するユーザーが増えていることから、暑気対策へのニーズも高まっている。こうした要求に応えるように、暑気対策関連商品も多様化している。定着しつつあるファン付き作業服や冷感ウェア、水冷服などの「個を冷やす」 […]

山善産業ソリューション事業部  奥山  真吾 戦略企画部長に聞く【特集:広がる、変わる暑気対策】

山善産業ソリューション事業部  奥山  真吾 戦略企画部長に聞く【特集:広がる、変わる暑気対策】

毎年のように酷暑が続く中、暑気対策関連商品は多様化し、提案方法も変化している。予算化するユーザーが増えるなど、ユーザーの購買動向も変わりつつある。山善の産業ソリューション事業部の奥山真吾戦略企画部長も「暑気対策商品は、単 […]

monolyst AIで転記作業を無くす商品情報管理システム

monolyst AIで転記作業を無くす商品情報管理システム

カタログデータをAIが解析し自動で商品マスタを作成 従来、1商品ごとにマスタデータを作成するには、手作業での入力が必要で時間と手間を要した。特に機械工具の場合、SKU(在庫管理単位)の数が非常に多く、情報の整理や管理に膨 […]

トピックス

関連サイト